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AKB48を初めとして、女性アイドル・グループがずいぶんともてはやされている現在の日本とは事情がちょっと違い、海外のミュージック・シーンでは"インディペンデント"な女性ソロ・アーティストが音楽性はもちろん、その美貌、鋭い感性とともに注目を集めている。
女性アーティストの時代――。現在のミュージック・シーンを、そんなふうに分析するメディアもあるようだ。実際、そういう"インディペンデント"な魅力を持った女性アーティスト達がおもしろいことに、この1、2カ月の間に相次いで新作を発表した。

ビヨンセ、レディー・ガガだけが現代女性アーティストの代表ではない。時代の流れなのか、単なる偶然なのかはさておき、この機会に才色兼備の女性アーティスト達を紹介してみたい。


【スペインのアンニュイ美少女】
まずは"スペインのアンニュイ美少女"、ロシアン・レッド。今年、『フエルテベントゥーラより愛をこめて』で世界デビューを飾った。

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2007年頃から人前で歌いはじめ、翌08年、インディー・レーベルからリリースした1stアルバム『I Love Your Glasses』がスペインで認められ、メジャー・レーベルと契約することに成功した。メジャー第1弾アルバムとなる『フエルテベントゥーラより愛をこめて』は、本国スペインではすでにチャートの2位を記録する大ヒット作になっている。
本名はルルデス・ヘルナンデス。ロシアン・レッドという芸名は、彼女のお気に入りのルージュの色からつけた。内に秘めた情熱を表しているそうだ。
ポップであることには違いないけれど、どこかノスタルジックでアンニュイな歌声とメロディーが大きな魅力。アルバムからのリード・トラックとしてすでにいろいろなところで流れている軽快なネオアコ・ナンバーの「ザ・サン・ザ・トゥリーズ~木漏れ日の下で」ももちろん、いい。しかし、誰もが経験するに違いない恋愛のアンビバレンスを歌ったビタースウィートな「アイ・ヘイト・ユー・バット・アイ・ラヴ・ユー」のような曲こそが彼女本来の魅力を物語っているように思う。

ちなみに週一で、すしを食べるほど和食が大好きだという彼女の大のお気に入りは、ワカメのゴマあえ(笑)。2011年10月に来日したときは、映画『ロスト・イン・トランスーレション』を見て以来、憧れていたというカラオケボックスでアウトキャストやシンディ・ローパーのヒット曲に加え、「コモエスタ赤坂」も歌ったという。アンニュイそうに見えて、実はそんなおちゃめな一面も持っていることを知ってからより親近感が湧いてきた。

サムネイル 『フエルテベントゥーラより愛をこめて』
ソニー SICP-3358 \2,310
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【メキシコの不思議ちゃん】
爽やかな口笛の旋律が印象的だった「ディファレント」が2011年、早耳のリスナーの間で話題になった"メキシコの不思議ちゃん"、ヒメナ・サリニャーナ。現在25歳の彼女は、本国ではすでに11本の映画と3本のテレビドラマ・シリーズに出演した経験を持つ若きスターだ。

サムネイル 女優としてキャリアを積むかたわら、15歳の頃から音楽の教育を受けていたという彼女は2008年、『Mediocre』と題したアルバムをリリースし、シンガーとしてデビュー。『Mediocre』はメキシコでNo.1ヒットになった。
彼女と会った人の話によると、「ちっちゃくてかわいいけど、ちょっとオタッキーな雰囲気」なんだそうだ。
なるほど、ヒメナにとって世界進出の第一歩となる2作目のアルバム『ヒメナ・サリニャーナ』を作るにあたって、彼女はプロデューサーおよび曲作りのパートナーにグレッグ・カースティンとデヴィッド・シーテックを起用した。前者はリリー・アレン、カイリー・ミノーグ他のヒット作を手掛けてきた売れっ子プロデューサー。後者はシーンを1歩リードする音作りが注目されている先鋭派。かつてイギリスの音楽紙、NMEによって「未来を担う音楽人トップ50人」の第1位に選ばれた。

2人の起用がヒメナ本人のアイディアなら、確かにかなりの音楽オタク。どういうアルバムを作ろうとしていたか、彼女の考えがなんとなくうかがえる。実際、『ヒメナ・サリニャーナ』はポップには違いないけれど、クールかつアーティスティックなカラーが濃い作品になっている。パンク・シーンのカリスマ、ランシドのティム・アームストロングとマーズ・ヴォルタの鬼才ギタリスト、オマー・ロドリゲスも彼女をバックアップ。すごい!

そんな彼女のあだ名はハモナ(ハム+ヒメナ)。子供の頃、太腿がハムのように太かったからなんだとか。ハモナ...思わず、脱力(笑)。

サムネイル 『ヒメナ・サリニャーナ』
ワーナー WPCR-14289 \1,980
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【カナダの絶対美女】
アップルiPod nanoのCMに使われた「1234」は日本でもヒットしたから、"カナダの絶対美女"、ファイストのことをご存知の方は少なくないと思う。

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ファイストことレスリー・ファイストは、現在35歳のシンガー・ソングライター。ちょっとハスキーな歌声とアンニュイな曲調、そしてどこかミステリアスなところもある美貌が人気を集めている。
キャリアのスタートは、高校時代に組んだパンク・バンドのヴォーカリストだった。その後、多くのミュージシャンとの共演を経て、1999年、ソロ・デビュー。「1234」を含む3作目のアルバム『リマインダー』は250万枚のセールスを記録した大ヒット作になり、彼女はグラミー賞にもノミネートされた。
『リマインダー』の大成功によって、人気と評価を揺らぎないものにした彼女が『リマインダー』から4年ぶりに完成させた最新アルバムが『メタルズ』だ。
アンニュイかつミステリアスという意味では、ファイストらしい作品には違いない。しかし、どろどろとした情念が音楽に形を変えたとも言える作風は、きっと多くのファンを驚かせたに違いない。

「1234」のコケティッシュな魅力を期待していると、思いっきり裏切られる。これまでの作品にあった、おしゃれなんて言葉も使える要素もほとんどない。その振り切れ方は、むしろ痛快だ。アイドル・グループ全盛の今の日本では、こういう存在は、怖がられてしまうのか。

ツンドラを思わせる世界観は、彼女にしか作り得ないという意味で、まさに唯一無二。『メタルズ』はファイストというアーティストが絶対的な存在であることを印象づける。

アルバム・タイトルからの連想なのか、ヘヴィ・メタル・バンドのマストドンとお互いの曲をカヴァーしあうスプリット・シングルを2012年にリリースするというからおもしろい。

サムネイル 『メタルズ』
パチンコ/ユニバーサル UICO-1228 \2,300
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【USインディ界のインテリジェンヌ】
テキサスの大所帯バンド、ポリフォニック・スプリーのライヴを見たとき、そこでギターを弾いていた彼女の存在は確かにクール・ビューティーという言葉がふさわしいルックスとともに際立っていた。

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セイント・ヴィンセントことアニー・クラーク。アメリカのインディ・ロック界のインテリジェンヌと紹介したい、このシンガー・ソングライター/ギタリスト/マルチ・インストゥルメンタリストは、現在、米英のミュージック・シーンでブレイク間近と注目を集めている。
オクラホマ生まれ、テキサス育ちの彼女は12歳の時にギターを弾きはじめた。その後、名門バークリー音楽院に進学したものの、3年でドロップアウト。ポリフォニック・スプリーのギタリストとして、自らの音楽キャリアをスタートした。その後、現代を代表するシンガー・ソングライター、スフィアン・スティーヴンスのバック・バンドのギタリストを経て、2007年、セイント・ヴィンセント名義でリリースした『メリー・ミー』でソロ・デビューを飾った。セイント・ヴィンセントという芸名は、20世紀を代表する詩人、ディラン・トーマスが客死した病院の名前からつけたそうだ。

アヴァンギャルドとオーケストラの出会いとも言える幻惑的なサウンドを、これまでよりもポップに展開した最新アルバム『ストレンジ・マーシー』は前2作を上回る成功を、すでに収めている。あの時、あそこで黙々とギターを弾いていた彼女がここまでの存在になるなんてちょっと感慨深いものがある。
2012年1月10日には初来日公演も果たしたので、その歌声のみならず超個性的なギター・プレイなど圧倒的なステージをすでに堪能された方もいることだろう。なお、余談だが前回の来日はスフィアン・スティーヴンスのバンドの一員として、前々回は叔父叔母であるタック&パティのツアー・マネージャーとしての来日だった。

サムネイル 『ストレンジ・マーシー』
ホステス BGJ-19290 ¥2,490
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【ゲットーで迷子になったロリータ!?】
最後にデビュー・アルバム『ボーン・トゥ・ダイ』のリリースは2012年2月と、まだちょっと先ながら、すでに英米、そして日本の早耳のリスナーの間で話題沸騰中の新人を紹介しておきたい。

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ラナ・デル・レイ。自らの音楽をハリウッド・ポップ/サッドコアと名づけ、自らをギャングスタ界のナンシー・シナトラ、あるいはゲットーで迷子になったロリータと呼ぶ彼女は、ニューヨーク州の外れにある田舎町、レイクプラシッド出身の25歳。18歳の時、ニューヨークに出てきて以来、下積み生活を送りながらデビューのチャンスをつかもうと狙ってきた。
2011年、YouTubeにアップした「Video Games」の自作のビデオの再生回数が200万回を超え、たちまち時の人となった。先頃、発表した新曲「Born To Die」もビタースウィートなバラード風の曲調とは裏腹のショッキングなラストシーンが物議を醸している。

古き良き時代のアメリカがひた隠しにしてきたダークサイドを、美しいオーケストレーションを使い、ビタースウィートなノスタルジーとともに描き出しているとも言えるその世界観は、『ブルーベルベット』や『マルホランド・ドライブ』などデヴィッド・リンチ作品の音楽版なんて印象もある。
また、彼女はヒップホップやオルタナ・ロックからも影響を受けているという。そんなラナ・デル・レイのデビュー・アルバム『ボーン・トゥ・ダイ』は早くも2012年一番の話題作になりそうな予感。3月には1夜限りのプレミア・ショーケース・ライヴも決定している。

サムネイル 『ボーン・トゥ・ダイ』
ユニバーサル UICS-1244 ¥2,200
2012年2月8日発売
>>動画はコチラ

(文/山口智男@H14+HEW)

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