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 現在、世界各国で人気を獲得しているコマ撮りアニメーション(ストップモーション・アニメーション)。『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『ウォレスとグルミット』といった海外の作品のみならず、日本でも『どーもくん』『コマネコ』といったヒット作(と言うか、ヒット・キャラクターと言うか)が生まれている。しかし、昨今のブームを支えているのは、そういういわゆる商業ベースの作品と言うよりもむしろ、動画サイトをにぎわせているアマチュア、あるいはプロの作家による非商業作品というところが興味深い。そんな新進気鋭のコマ撮りアニメ作家の一人、勝山聡子さん。先頃YouTubeにアップした作品『ひきだし犬』(全4話)が、"アマチュアの域を超えた完成度"と国内外で評価されるほどの、いま注目の作家だ。

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※キャプチャー画像は、勝山聡子さんとひきだし犬



「制作裏話や、コマ撮りアニメの魅力」インタビュー前編はこちら>>


今回はインタビュー後編。
クリエイター・勝山さんとはどのような人物なのか、その人となりに迫ってみた。


■どんなきっかけでコマ撮りアニメを作りはじめたんですか?

 もともとは絵本作家になりたかったんです。そういう気持ちで美大に進んだんですけど、1年生の時に受けた映像の授業がきっかけで、映像のほうが動いていて楽しいじゃないかと思うようになって、そこからストーリーを動かすことに興味が移っていったんです。それで実写とか手描きの2Dのアニメを作りはじめたんですけど、大学3年の時、クレイアニメーションの授業があってそこで...何て言うか、私、基本的に細かい作業が大好きなんです。だから、やれば、やったぶんだけクオリティーが上がるコマ撮りアニメが性に合っていたと言うか(笑)。


■ふだんの生活でもそういう細かい作業が好きなんですか?

 そうですね......みじん切りするのが好きです(笑)。ストレスがたまってきたら、野菜をたくさん用意して、きれいにみじん切りして、野菜スープにして食べるんですけど、無心になって何かを最終的に作り上げられるのが好きなんです。考えてみると、子どもの頃からそういう細かい作業が好きでしたね。ひたすら泥の団子をぴかぴかに磨くとか、刺しゅうとか。刺しゅうは今でもたまにやります。4時間ひたすらクッションを縫うとか(笑)。

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※キャプチャー画像は『ひきだし犬』撮影風景


■ところで、絵本作家になりたいと思ったきっかけになった作品って何かあったんですか?

 子ども向けの絵本作家になりたかったわけではないんです。私、ちょっと気持ち悪い感じの絵が好きで(笑)。もともと、油絵を描いていたんですけど、絵を描くときは、その前後の物語もひととおり描きたいという気持ちがあって、それなら絵本がいいんじゃないかって。


■気持ち悪い感じの絵が好きなんですか?(笑)

 ええ、ヤン・シュヴァンクマイエル(チェコスロバキア生まれのアニメーション作家、映像作家、映画監督)とか、ちょっと内臓が見えちゃうような(笑)。私の作風ももともと、そういう感じで、『ひきだし犬』の前の作品は女の子がおばさんに食べられてしまって、体の中に入ると、扉がいっぱいあって、その扉を開けると、これから生える予定の髪の毛がしまってある部屋があるみたいな......。


■......。

 そういう作品だったんですけど、周りからは「気持ち悪い」と散々言われて、多くの人に見てもらうならそういうテイストはオブラートに包んだほうがいいんじゃないかって。それで、とりあえず人から何か出てくるみたいなのはやめて、『ひきだし犬』は犬になったんです。ちょっとかわいらしい感じにしてみました。


■ああ、でも、そういうふうに言われてみると、『ひきだし犬』にもそういうテイストは、ちょっと残っていますよね? 

 ちょっとブラックな要素も含んだもののほうがいいかなと思って、ちょっと残しました。『ひきだし犬』は子ども向けの作品なんですけど、子どもがずっとこれを見ていたらちょっと曲がった感じに育つかもしれないですね(笑)。

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■コマ撮りアニメの細かい作業が性に合っていたということなんですけど、実際、コマ撮りアニメを作ってみて、どんなところにはまったんですか?

 実は一番好きなのはセットを作るところなんです。ミニチュアで、できるだけリアルっていうのとはちょっと違うんですけど、撮った時にできるだけ小さくなく、普通の世界みたいに見えるっていうのが楽しい。セットが完成したところが私の中のピークだと思います。

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■え、でも、そこから撮影が始まるんですよね?

 撮影ももちろん楽しいんですけど、お人形にピンを刺して、固定しないといけなかったり、動かしすぎると、金属疲労を起こして(人形の)骨が折れたりするので悲しいんです。だから撮影中はずっと「ごめんね、ごめんね」って言いながらやっています。完成した時は、「わー、生きている!」ってなるんですけど、撮っている間はちょっとつらい。お人形に申し訳ないんです。


■撮影中は自分だってつらいでしょ?(笑)

 そうですね。撮影中は無理な姿勢になることが多いので、『ひきだし犬』を作っている2年間はずっと腰痛で、ひどい時には床に物が落ちても、それをしゃがんで拾えないぐらい痛かったです。

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■いろいろお話を聞かせていただきましたけど、『ひきだし犬』を作るうえで一番大変だったことって?

腰痛と戦ったことですね(笑)。


■治ったんですか?(笑)

はい、治りました(笑)。


■時間がなくて、CG(コンピューター・グラフィックス)で処理したというお話が出たんですけど、逆にCGを積極的に取り入れてみようとは?

難しい問題ですね。CGでアナログ風に見せるって、いまやほぼ完璧にできるようになっているじゃないですか。そうかと思えば、『ティム・バートンのコープス・ブライド』のようにコマ撮りにもかかわらず、完成度が高すぎて逆にCGに見えてしまう作品もある。そういう意味では、CGもコマ撮りもほとんど差がないと言うか、CGを使っても完成形はほぼ同じに見えるような作品を作れるかもしれないけど、でも、コマ撮りの技術ってすごい。そのアイディアがちゃんと伝えられている。私はそれをそのまま学びたいという気持ちが強い。その過程をちゃんと知っておきたいからできるだけアナログでやっていきたい。だって、昔からのコマ撮りの知恵が。なくなってしまったら悲しいじゃないですか。だから、ちゃんと学んで、しっかりと伝えていきたいんです。


■最後にコマ撮りアニメを自分でも作りたいと思っている人にコマ撮りアニメを根気強く作りつづける秘訣(ひけつ)をアドバイスお願いします。

えー、秘訣ですか。うーん、やっぱり性格だと思います(笑)。向いている人はいくらでもできると思いますよ。

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 勝山さんのような才能あふれる若きクリエイターを続々と輩出しはじめているコマ撮りアニメの分野。日本でも大人向け、子供向けさまざまなコマ撮りアニメの講座が各地で開かれ、人気を集めているという。また、アマチュア向けのコマ撮りアニメ支援ソフトや玩具の部類ではあるものの、コマ撮りアニメ支援カメラも市販されているというから、アマチュア作品が支えるコマ撮りアニメ・ブームはまだまだ盛り上がっていきそうだ。もちろん、作品は玉石混交かもしれない。しかし、そこからびっくりするようなアイディアや新しい作家が生まれるにちがいない。

(インタビュー・文/山口智男@H14+HEW)

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