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先日、ネット上で大きな注目を集めた「人力飛行に成功した動画」を信じ、胸を踊らせた人も数多くいることだろう。結局は、その後間もなく製作者本人によって「イタズラだった」と真相が明かされたので、信じた人たちはまんまと一杯食わされてしまった形だが......。世界中を巻き込んだこの壮大なイタズラ。事のいきさつを以下にまとめてみた。
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(※画像はYouTube動画のキャプチャーです)


【鳥人間プロジェクトがスタート】
オランダ人のヤルノ・スミーツ(Jarno Smeets)氏による「HumanBirdWings」と名付けられたプロジェクトがスタートしたのが昨年8月のこと。最初に公開された『The origins of my flying dream | part 1/14』との動画にて、同氏は「私の夢だった、鳥のように飛ぶ方法を見つけた」とし、そしてそれを実現するための同プロジェクトを立ち上げたことを発表した。

その後、同プロジェクトでは、羽ばたき型飛行を可能にする巨大な翼を製作するメイキング動画を、約5か月の間に着々と公開。WiiのコントローラーやHTCなどを利用して駆動する斬新なパーツの開発や、作業場で翼を組み立てていくスタッフの真剣な様子は、見る者に「もしかしたら、本当に飛べるのかも」と思わせるのに十分な魅力を秘めているようだった。


【人類初の羽ばたき型飛行が実現!?】
そして、今年1月にはテスト飛行を実施。助走しながら背負った翼を羽ばたかせた飛行士の体は、時折、およそ数10センチ浮き上がる程度の、それは一般的には「飛行」と呼べないようなものだったが、近い将来にそれが本当の「飛行」につながることを予感させる映像だった。

それから約2か月が過ぎ、鳥のように空を羽ばたく動画がYouTubeに公開されたのが3月19日のこと。今度はテスト飛行のときとは打って変わり、翼を羽ばたかせた飛行士の体は空中にふわりと浮かび、瞬く間に上空へ。気流に乗り、羽ばたくことをやめた後も、大きく広げた翼でまさに鳥のように滑空し、飛行距離はなんと100メートルを超えたとした。


【動画公開で話題に......フェイクとの指摘も多数】
この動画が公開されるや、ネットニュースサイトなどで報じられ、YouTube動画の再生回数は600万回を超えたほか(26日現在)、世界中で大きな話題となった。ただ、それは「人力飛行に成功した」ことを称賛する声ばかりではなく、「フェイク(偽物)ではないか」と懐疑的な声も多数上がり、それがフェイクであることを検証するユーザーも現れ出した。


【フェイク検証~そして"ネタばらし"へ】
本物か偽物か――大きな議論の的となったが、バタバタと揺れる両翼が「偽物」側に傾いたのは21日のこと。ガジェット情報ブログ『Gizmodo』が、CGIのプロ集団である「インダストリアル・ライト&マジック(ILM)」の技術ディレクターであるライアン・マーティン(Ryan Martin)氏と、Visual PlaygroundのCGIの技術者による所見を掲載。そこでは、技術者らは「翼をバタバタと必死で動かしている割には、頭が微動だにしない」ことや、「翼の動きがおかしい」こと、「翼の布地がCGIっぽい」こと、「映像が不自然なほど不鮮明」であることなどに違和感を覚えると指摘し、また、CGI界の大御所であるマーティン氏も技術者らの見解を支持。「良質なCG。どう見てもCGアーティストの仕事だ」と称賛すると同時に、映像を解析してあぶり出されたいくつかの"粗(あら)"を示し、「100%フェイク、間違いなくデジタル合成だ」と断言した。

そして、Gizmodoの記事が動画を「偽物」であると指摘した直後、同サイトの別記事では、なんとスミーツ氏本人がオランダのテレビ番組に出演して、今回の動画および同プロジェクが、約8か月間に渡る"イタズラ"だったことを明かし、一連の騒動に自ら終止符を打ったことが報じられた。


【実はCGアーティストだった!】
なお、Gizmodoの記事によれば、スミーツと名乗っていた人物の正体は、フロリス・カイクという名でこれまでにもさまざまな映像作品を発表しているオランダ人アーティストとのこと。同氏のブログには、セント・ヨースト・アカデミー(St Joost Academy)でファインアートの修士号を取得し、2011年「アカデミー外国語映画賞」でオランダ代表にノミネートされるなど、今回の動画でCGI界の大御所をもうならせたその"実力"のほどを示す経歴を明らかにしている。
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(※画像はフロリス・カイク氏ブログのキャプチャーです)


さて、本人の告白でオチがついた今回の騒動。ウソだと分かると「まあ、そうだろうな」と強がってしまいたくなるのが妙なものだが、筆者などはガッツリと"釣られた"クチ。「ついに人類の夢が実現した!」と喜びが大きかった人ほど、落胆もあるだろうが、しかしそれ以上に、すっかりダマされたことにすがすがしさすら感じている、という人もいるのではないだろうか。次回作に期待したいものだ。

※参照元:Gizmodoギズモード・ジャパンフロリス・カイク氏のブログ

(文/H14+HEW)

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