ここから本文です

特定のアーティストのコンサートではなく、多くのアーティストが出演する音楽フェスティバルを楽しむという文化がようやく日本にも定着した感のあるこの数年。それを裏づけるように2大フェスとうたわれる「FUJI ROCK FESTIVAL」や「SUMMERSONIC」といった大規模フェスだけに限らず、規模の大中小はもちろん、出演者の顔ぶれをはじめ、それぞれに趣向を凝らしたさまざまなフェスが1年を通して、日本各地で開催されるようになったが、5月19日(土)、多摩センターで開催される無料の野外フェス、「TAMASONIC 2012」は数あるフェスの中でもチャリティーという目的の下、出演者とお客さんのカンパによって、開催に必要な費用を賄うといういわゆるDIY(Do it yourself)の精神を実践した開催方法が興味深い。

サムネイル

「他にはない、おもしろいことをやりたかったんです」
そう語るのはTAMASONIC実行委員会の小山愛さん。昨年、長年の夢だった野外フェス開催を仲間とともに実現させた。

以前、海外のパンク・バンドを日本に招いたことがある小山さんはその経験を通して、「ショウビジネスとして利益を出すために胃をキリキリさせるのではなく、主催者としても純粋に楽しめるフェスをやりたい」と考えるようになったという。
「もし利益が出たら、私たちは楽しんだのだからそれは要らない。ぽんと寄付してもいいんじゃないか。バンドも演奏して楽しい、お客さんも見て楽しい等身大のフェスをやれるチャンスを伺っていたとき、たまたま多摩センターの三角広場という場所に巡りあったんです」

三角広場は多摩センターの駅から徒歩8分ほどのところにあるその名の通り三角形の広場で、音楽イベントなど、さまざまなイベントに利用されている。「ここだったら自分が考えているフェスができるんじゃないか」と考えた小山さんは早速、三角広場を所有・管理している多摩市に直談判した。音楽イベントは騒音の問題から、市民から苦情が寄せられることが少なくないせいか、最初は渋っていた多摩市も企画書と出演バンドの演奏を収録したサンプルCDを持っていって、カンパで集まったお金から経費を差し引いた全額を寄付するチャリティー・イベントであることを訴えると、イベントの趣旨に賛同して、三角広場の使用を認めてくれた。

「そこを見越して、企画書ではチャリティーであることと地域振興をアピールしたんです」とTAMASONICの立ち上げから参加している実行委員の横山達也さん。
「もちろん、当日は音量に配慮しました。寄付もしたし、『多摩センターってどこ?』と言っていた人たちにも『多摩センターっていい所だね』と言ってもらえたし、つけ加えると、会場の前にあるコンビニもフェス当日、飲み物やアイスクリームがほぼ売り切れた(笑)。そういう意味では、チャリティーと地域振興というミッションはちゃんと果たせたと思います」

サムネイル

※TAMASONIC実行委員会の横山達也さん(左)と小山愛さん


とは言え、フェス当日を迎えるまで、「どれだけの人が来るのか本当にわからなかった。自信はなかった」と振り返る小山さんは市に提出した企画書でも見込みの集客人数を50人と書いた。
「カンパもいくら集まるか見当もつかなかった。カンパなので1円でも1000円でもいいわけですから。だから出演バンドもフェスがコケたとき、『ごめんね』と言って、『いいよいいよ』で許してもらえる仲のいいバンドにしようって(笑)。カンパが集まらなくて、最悪、赤字になった場合はバンドの頭数と実行委員で割り勘になっちゃうかもしれないというひどい条件だったにもかかわらず、『いいよ』ってみんな即答してくれました」

第1回にはCoquettish、Country Yard、Honey Sugar Milk Chocolates、Valve Drive他、インディーズのパンク・シーンで活躍している計12バンドが出演。掛かった経費は音響設備のレンタル料、三角広場の使用料、ポスター代、テントの購入料の雑費など。
「ポスターもコンビニのコピー機で作って、なるべくお金をかけないようにしました。音響設備は地元のパンキースタジオさんにチャリティーであることを理解してもらって、協力していただきました」(横山さん)
「より多くの人にカンパしてもらえるよう工夫もしました。カンパした人にお礼も含め、赤い羽根のノリで何か無料であげることができないかと考え、缶バッジを作ったんです。そうすると、バッジを付けていない人は『あれ? カンパしようかな』って思うじゃないですか(笑)。結局、300個作ったバッジが途中でなくなりました」(小山さん)

つまり、300人以上がイベントを楽しみ、カンパしたことになる。

「思っていたよりも人が来たし、カンパも集まりました。カンパから経費を差し引いた12万7千776円を東日本大震災の被災者の義援金として寄付しました」(横山さん)

もはや大成功と言ってもいいのでは。

「お客さんの中に子どもが多かったのがうれしかった。未就学児童は入場できないフェスもけっこうあって、親になったら行っちゃダメなのかという憤りがあったんですよ。だから、TAMASONICは大人も子どももペットも楽しめる空間にしたかった。そういうフェスが一つぐらいあってもいいと思うんです。今年は子どもが休めるスペースを作ろうと考えています」(小山さん)
「そうですね。ふだんライヴハウスに来ないような人がいっぱい来てくれたのがうれしかったですね。ライヴハウスってやっぱり来る人が限定されてしまうから。TAMASONICでライヴのおもしろさを知った人が今度はライヴハウスに来てくれたらいいですね」(横山さん)

サムネイル
サムネイル
サムネイル


2回目の開催となる今年も「日本一ゆるいフェス」を自認する2人に気負いはない。

「今年やってまた楽しければ、来年もやるけど、赤字になったら来年はやらない。1回やったから続けなきゃいけないという義務感はないです。自分が楽しくない思いまでしてやる必要はない。ただ、去年は終った瞬間、来年またやろうって思いましたけど(笑)」(小山さん)
「これで稼ぎたいわけじゃないんです。自分たちでもできちゃうよねってことですよ。自分もやりたいと思った人がいたら、いろいろな場所でどんどんやってほしい。もう中央の時代じゃない。地方から突き上げていく世の中だと思うんで、こっちから出かけていくのではなく、逆に人を呼んじゃうって形で盛り上げていきたい」(横山さん)

最後にTAMASONICの楽しみ方を尋ねると、誰でも自由に来て、自由に見られる無料のイベントなので、基本、自己責任で「勝手に楽しんでほしい(笑)」と小山さん。
「ただ思っている以上に熱いので、熱中症対策はしっかりしてもらって、ごみさえちゃんと持ち帰ってもらえれば、お弁当を持ってきてもいいし、近所の飲食店でお金を落としていってもらってもいい。そして、楽しんだ分だけカンパしていただければ。自信を持って、みんなに見てもらいたいイベントです。いいものを見せたいという気持ちは、どんなフェスにも負けてません」

サムネイル


(取材・撮影/山口智男@H14+HEW)


<TAMASONIC 2012開催情報>
サムネイル

5月19日(土)
多摩センター三角広場野外ステージ(京王・小田急・多摩モノレール多摩センター駅下車徒歩8分)
開場 10:30 / 開演 11:00 (終演 18:30)
無料(実行委員会、出演バンド、お客さんのカンパで機材費などを賄います。次回以降継続のため当日は積極的にカンパをお願いします)

出演 As Cities Shine / As We Let Go / Coquettish / Dallax / Dr.Downer / Electric Summer / Endzweck / Honey Sugar Milk Chocolates / Secret 7 Line / Square The Circle / Valve Drive

主催 TAMASONIC実行委員会
企画制作 Justrock / BEERHOLE RECORDZ
http://www.beerholerecorz.com/tamasonic2012/

Facebookコメント
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。
PR

最新記事

rss

もっと見る

本文はここまでです このページの先頭へ