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多岐にわたるレンタルサービスが存在する昨今。実は、あの「ヒグマ」までもが、レンタルできるということを皆さんはご存じだろうか? しかも送料のみ負担すれば、レンタル料は無料である。

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※画像は「公益財団法人 知床財団」のサイトキャプチャーです


貸出元は、北海道の「公益財団法人 知床財団」。世界遺産の知床を拠点に、知床自然センターなどを運営し、ヒグマやエゾシカなど野生動物の保護や調査研究、環境教育など幅広く活動している。少しでも多くの子どもたちにヒグマのことを知ってもらおうと、同財団が「ヒグマ学習教材トランクキット」を2009年より全国に貸し出しを開始。トランクの中身は22点にもおよび、その内容もバラエティ豊かだ。その一部を紹介しよう。

■ヒグマの毛皮

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体重131kg、2歳だったオスのヒグマの毛皮である。耳には行動をモニターするための生態調査用タグがついている。

■ヒグマの頭骨

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毛皮と同じヒグマのもの。鋭い犬歯や奥歯の臼歯を観察することができる。

■ヒグマのフン(実物)

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ヒグマのフンを乾燥させたもの。内容物はどんぐり100%。

■ヒグマのかみ痕つき空き缶

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実際に知床国立公園内で回収されたもの。

■ヒグマの新生児実物大ぬいぐるみ

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※画像はすべて知床財団提供

ゆるキャラではなく、ヒグマが生まれたときとほぼ同じ大きさ・重さのぬいぐるみである。重さはリンゴひとつ分ほどの約450g。

このほか、トランクキットには、衛星利用測位システム(GPS)発信機などの調査関連品や、遭遇した時に役立つ防御スプレーやクマ鈴、絵本などの書籍が詰め合わせになっている。

知床財団に直接話を聞いた。

―どんなところへ貸し出しされているのですか?

「2009年からこれまで27件の貸し出し実績があり、主な貸出先は学校です。当初は小学校を想定していましたが、幼稚園から高校までさまざまな学校の授業に使っていただいています。地元北海道だけでなく、東京や埼玉など本州の学校への貸し出しも半数以上です。また、学校の先生の勉強会や地域や会社の勉強会など、大人の方向けの貸し出しもあります」(知床財団 加藤さん、以下同)

―反響はいかがですか?

「『なかなか目にする機会がない本物の標本を、間近で見て触って学べたので面白かった』という声をたくさんいただいています。触っていいよ、というと皆身を乗り出して集まり、年齢問わずとても盛り上がるそうです。貸出料金が無料なのもあり、毎年リピートしてレンタルしてくださる学校もあります」

―ところでこのヒグマの毛皮、人間がかぶってもいいんですか?

「可能です。四つんばいになって毛皮をかぶって歩いてもらうと本物のヒグマがどのくらいの大きさなのかイメージしてもらいやすいので、毛皮をかぶってみるということもおすすめしています」

触るだけでなく、全身でヒグマを感じ、ヒグマの気分を味わえるのは一生に一度の貴重な経験となることだろう。

こうして毛皮と頭骨となり全国にレンタルされているこのヒグマ、実は地元・知床ではちょっと有名なヒグマだったそうで、こんなエピソードを聞かせてもらった。

「このヒグマは、知床自然センターからほど近い岩尾別川に、サケをとりに頻繁に出没していたため、通称『イワちゃん』と呼ばれていました。川には『水しぶきをあげながらサケをとるヒグマ』という画を撮りたいアマチュアカメラマンたちが、川岸で毎日何十人も集まって出待ちをしていました。イワちゃんはカメラマンたちが日常的に至近距離にいることで人間への警戒心がマヒしてしまったようで、そのうち町に現れて民家の干し魚を食べるようになり、やむなく捕殺されました。イワちゃんがまだ若く人慣れしていなかったころから追跡調査していた私たちにとっては悲しい出来事でした」

このトランクキットは、決して野生動物の恐ろしさを伝えるものではなく、野生動物と人間がうまく付き合い、共存することを目的にレンタルされているものである。ヒグマのことを理解しておくことが、今後ヒグマに遭遇したときの冷静な対処につながるかもしれない。むやみに恐れるのではなく、まずは相手を知ることが何事も大切である。そのことが伝わらなければ、毛皮となったイワちゃんも浮かばれないことだろう。

(草苅敦子+プレスラボ)

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