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今、一部のはがき職人の間でもっとも面白いラジオだと言われているのが『久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)。「モテキ」(講談社)の久保ミツロウと、エッセイマンガ「オカマだけどOLやってます。」(竹書房)の能町みね子のコンビが、火曜の深夜3時~5時までしゃべりまくる番組だ。

先日、はがき職人の首位打者イトーさんに取材をおこなった記事内で同番組に触れたが、なんと記事のURLを久保ミツロウさん、能町みね子さんご両人がリツイートしてくれた。これを喜んだ筆者が調子に乗り、今大注目のお二人に畏れ多くも取材を申し込んだところ、なんとご快諾。そんなわけで今回は、そのインタビューをお届けする。

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久保ミツロウ(左)と能町みね子(右)


■久保さんの「神の啓示」で始まった交友

―久保ミツロウさんは社会現象にもなった漫画『モテキ』の原作者、能町みね子さんはエッセイスト・イラストレーターなどマルチな活動を行っていらっしゃいます。そもそもお二人が出会ったきっかけは?

(久保):『モテキ』を描いてるときに、モテない系書物をいろいろ見ていた中で能町さんのブログを読んで、この人おもしろいなと思ったんです。そうしたら能町さんがトークショーをやるっていうから、勝手に自分の中で「絶対能町さんと仲良くなれる!」っていう神の啓示を受けた気になって......(笑)。発売前の『モテキ』第一巻を持って一人でトークショーに行って、「実は私も漫画を描いてるんで読んでください」って渡したのがきっかけですね。

(能町):でもその後しばらく期間が空いて、メル友ってわけでもなく、ただ知り合いっていうだけで止まってましたね。

(久保):年末に、講談社のパーティーで再会して、やっぱりそういうときっていろんな方とお会いしてお話しする機会があるんですよね。「モテキおもしろいですね」「ファンなんですよ」とか言われて。そのあと能町さんと一緒に会場を出てから私が「今日会った男性みーんな私のこと好きじゃないんだよ! それってすごくない?」って満面の笑みで言ったんです。

(能町):それは名言だと思った。この人はタダ者じゃないって思いましたね。

(久保):いくら作品を褒められても、それは決して私の交際歴につながったりしない、と。この絶大な自信を誰かと共感したくて、それを能町さんに伝えましたね。

(能町):そのころからちょっとずつ(親交が深まって)、他のイベントのあととかにも会ったりしましたもんね。ちょっとした鬱憤がたまって、「これをぶちまけるのは久保さんしかいないんじゃないか」と思って、夜中の3時くらいまで電話したこともありました。愚痴ではあったんですけど、それが超楽しかったんですよね。

(久保):実際に会ったことはないけど、お互いの理解度は高いだろう、久しぶりに会ったら絶対話が盛り上がるっていう自信だけあったんです。それで会って話して、こういう非モテのノリだけでトークショーやりたいよねっていう話になりました。

■ラジオ公募は絶対受かると思っていた

―それが2011年11月6日に第1回目が行われたトークショー「男子禁制!! 俺たちデトックス女子会」なんですね。

(久保):この2回目をやる前に、『オールナイトニッポン0(ZERO)』の公募の存在を知ったんです。3分の動画を出さなきゃいけなかったんで、そのトークショー中に即興でネタをやりました。終わった瞬間に「あ、これラジオ決まったな」って(笑)。他の投稿動画とか見てても私たちが一番おもしろいっていうくらい。

(能町):実際おもしろいとは思いました。私は「決まった」とまでは思わなかったけど(笑)。

(久保):そこで公に自分の顔を動画でアップしなきゃいけない! っていう苦難を乗り越えました。顔出しに関しては悪口しか言われなかったけど(笑)。

―ラジオに対する昔からの思いを教えてください。

(久保):私は電気グルーヴのオールナイトニッポンが大好きでしたね。テープに録音して擦り切れるまで聴いて、本当に影響を受けまくってます。上京してからは伊集院さんの「深夜の馬鹿力」を聴いたりとか、ラジオっ子ですね。仕事中も録音したやつを聴くっていう風に、今でもそれは定着してますね。

(能町):私は中高生ころ、たまに聴いたりはしてたんですけど、特に思い入れのある番組があるわけじゃなくて、すごく聴くようになったのはこの仕事をするようになってからなんです。イラストを描いてるときって音楽よりラジオを聴くほうが、なぜか集中できる。だから深夜だったらオールナイトニッポンとかTBSラジオのJUNKとかおもしろいやつを聴き始めて何個かお気に入りもできましたね。

―ちなみに今のお気に入りは?

(能町):今は『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)と、他局ですが『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)。あと朝起きたらアラームでFMラジオをかけてます。それは会社に勤めてたときからそうで、目覚まし代わりにタイマーで起きるみたいな。テレビの朝番組ってなんか好きになれないんですよね。朝くらい爽やかにいきたいので、音だけで。

(久保):私も朝は別所哲也さんのラジオを聴いてます。ある朝、「今日の別所哲也おとなしいな」と思ったら別所さんは休みの週で、ジョン・カビラがやってたみたいなこともありましたね(笑)。

(能町):そんなことあるんだ。しかもジョン・カビラの方がおとなしいんですね(笑)。

■「ミニマムな世界も理解してしゃべるっていう存在は私たちくらい」

―放送中、お二人は「あのときあのラジオ聴いちゃったせいでこんな風になっちゃったんだ、って言ってもらいたい」(2012年7月17日の放送)と仰っていましたね。

(能町):よく私たちは「爪痕を残す」っていう言い方をしてるんですけど、世間というか若者に爪痕を残したいんですよ。

(久保):自分の細胞をみんなに埋め込みたいっていう思いがあるんです。ラジオを聴いていて覚えたネタとかがふっと心の引き出しのなかから出てくるっていう風にあリたいなと。

―本業との違いやバランスについては?

(能町):本業は本業で楽しいんですけど、一人の作業が多くて、いつも行き詰まってるイメージなんですよ。ネタがないっていうことよりも書き飽きているというか、作業そのものに飽きている。だから仕事の形態が違うだけでもすごく助かるんですよね。

(久保):2時間がんばってしゃべればこの仕事って終わるんですよ。これが幸せで......。原稿はそれを埋めて、整えて、表に出せるように仕上げて、もちろん2時間でやろうと思えばできますけど、2時間で終わらないことだらけで。だからラクなんです。漫画を描くことが私は一番キツいと思ってるんですけど、ラジオはその過程を音声で残せばいいので気楽ですね。だから楽しんでるのが伝わればいいかなぁ。

―お二人のラジオ、作品はすごくインターネットとの親和性が強いなと思います。

(久保):それこそTwitterではがき職人の方もフォローしてるので、たまに見て「どこどこのラジオは採用数稼げるよね~」とか会話してるの私知ってるぞ! みたいな(笑)。もちろん広い世界に向けてやってるんですけど、そういうミニマムな世界も理解してしゃべるっていう存在は、私たちくらい居てもいいのかなと。

(能町):あまり境目がなくなるといけないと思ってるから、一応私はラジオ関係のことをTwitterで話しかけられても答えないようにしてるんです。ちょっとズルい感じがするので、それはラジオに送ってくださいって思います。でもそれ以外で常連さんのTwitterとかちょっと見ちゃったりとかするし、今そういうことができる時代だから、むしろやった方がおもしろいと思うんですよね。

(久保):私たち自身がネットに慣れてるっていうのはあるかもしれないですね。

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■美人かイジれるブサイクしか存在しない男性社会、いい加減飽きろ!

―今お二人がいらっしゃる位置、ポジションってこれまでにないところだと思います。

(能町):男性社会のラジオとかだと、私たちみたいな存在はほぼ無視されるんですよ。世間的に女性は「かわいい・きれいな人」か「ネタにできるブサイク」しか存在しないことになってますからね。もうそれ飽きろよって思うんですよ。

(久保):ネタにできるブサイクをテレビで見てても「これしか道はないのか!」って思っちゃいますね。ブスとかデブとかババアって、世の中にアホほどいるんですけど、結局そういう人ってテレビに出てないんです。私が顔出ししてこの3つをすごく言われるんですけど、それって一番世の中にありふれた特徴なんですよ。

(能町):どうたたいたらいいか分からなければ、その枠に入れとけばラクなんでしょうね、きっと。

(久保):だから私がたたかれても「いや、このくらいのブス、普通にいるじゃん」って思うんです。私だけがひどいんだっていう落ち込みより、こういう世の中に大多数いる存在がこんなにもたたかれなきゃいけないのかって。最近は私への文句じゃなくて、私に似てる人が「久保ミツロウにそっくりだ=ブスだ」みたいに言われてるのを見て、状況が複雑になっちゃって。自分が自分を卑下すると、そういう人たちをも卑下しちゃうことになっちゃうので。「コミケに来てる女みんな久保ミツロウにそっくり」みたいなね(笑)

―ラジオも作品もそうですけど、どこかコンプレックスや性に対する思いが仕事の源になっているようにも感じました。

(能町):ないわけじゃないんですけど、コンプレックスは自分のなかで半分ネタになりつつあります。ネタにして自分をごまかしてる感じですね。せっかくしゃべるならおもしろくしゃべろうっていう気持ちになっちゃうので。世間のモテ文化とかに怒ったりしますけど、それはお仕事としてで、自分は本気で怒ってるのかどうかちょっとわかんなくなってきてます(笑)。

(久保):他人に「女の人ってこうですよね」って決められてることに対して、腹が立つことが多いんですよね。それはちょっと違うなと。でもそのちょっとの違いが自分らしさだと思うんですよ。草食系男子ってこういう人ですよねってまとめたときに絶対その枠にハマらない人がたくさんいて、そこがその人の個性だったりするわけじゃないですか。そのこぼれ落ちるものを自分で拾えて、表現できるっていうのは私たちの強みだと思うので。そこの存在って今まであまりいなかったんじゃないですかね。自分なりに世の中をカスタマイズしていく感じが楽しいんですよ。

■単純化へのアンチテーゼを目指す

―最後に、お二人が作品を通して伝えたいことは?

(能町):「こういう女、いるよ」ってことですよね。世間に私たちみたいな女性もいるよっていうことを伝えたい。

(久保):赤文字系とかゆるふわとかでもなく、セックスについてガツガツ話すようなタイプでもない、どこにも当てはまらない女性というか。全体を語りたいわけじゃないんですよ。あくまで今、私たちはこの地点っていうのを表現したくて、この地点っていうのが明確になるとその人に比べて自分はこうだってわかるなと『モテキ』を描いてて感じたので、作品は「私たちは今、ここにいる」っていう記録ですね。

(能町):どうしても「女ってこうだろ?」と単純化したがるんですけど、絶対その中に私たちは入ってないんですよ。それに対するアンチテーゼになればいいかな。それと、同じようなことを考えている女性たちへの多少の後押しがしたいですね。


「つらい! たのしい! 大好き!」をモットーに放送しているというこのラジオ番組。男性にとっては「女ってこんなこと考えてたんだ」と爆笑とともに気づかされる。また、女性に勇気が出るような痛快な言葉をくれるだろう。

■久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポン0(ZERO)
ニッポン放送にて毎週火曜深夜3時~5時オンエアー
公式ウェブサイトはコチラ>>

取材・文=くわ山ともゆき
撮影=Shinsuke Yasui

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