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シネセゾン渋谷や恵比寿ガーデンシネマ、シアターN渋谷などのミニシアターが次々となくなっていくことにさみしさを感じている人は少なくないはず。そんな映画ファンのためにも、映画館に足を運ぶことが少ないという人に筆者が知ってもらいたいのが「名画座」です。

名画座とは主に旧作映画を上映する映画館のことで、都内では老舗の早稲田松竹やギンレイホール、その他市街地を中心に全国に点在しています。中でもぬくもりのある空間づくりが好評を博している目黒シネマの支配人・宮久保伸夫さんに名画座ならではのこだわりについて取材しました。

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―実は僕もよく利用させていただいているんですけど、すごく人気ですよね。
宮久保:いや、正直に申しあげると、人気だとは一回も思ったことがないんですよ。だから常にお客様にフラれないように、楽しいことをちりばめています。入場券を切って映写するだけじゃなくて、スタッフ一同でチームの独自性を生かして、いろいろと創造しているんですよ。でもあくまで主人公は映画だから、それを崩しちゃいけない。われわれは"無色透明"なんだ、というのを念頭に置きながら、お客様に楽しんでもらえるようにしていますね。

―スタッフのみなさんの独自性というと、例えばどんなことでしょうか?
宮久保:映画音楽の作曲家のアシスタントをしながら働いているスタッフもいますし、消しゴムハンコが作れる者もいます。『キック・アス』ではテーマ曲を生演奏したり、作品によっては消しゴムハンコを作ったりもします(写真)。それとスタッフはみんな蝶ネクタイをつけているんですけど、実はこれもネクタイをリメイクした手作りのものなんですよね。

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―こういった「ほっこり」する工夫が目黒シネマには多いですよね。
宮久保:そうですね。ほかにも、階段のところにはポスターやフィルモグラフィーを貼っています。もちろん手間やお金が少しかかるんですけど、やっぱり楽しんでくださるお客様がいっぱいいらっしゃるんですよ。ちなみに「映画上映中は受付ヒマなんだろうな」とかお思いかもしれませんけど(笑)、その時間に実はフィルモグラフィーを作るために新聞記事をスクラップしたり、みなさんが喜んでくださる小物をせっせと作っているんですよ。

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―TwitterやFacebookも活用されていますよね。
宮久保:やっぱりお客様に一秒でも「わっ、楽しい」と思っていただきたいんですよね。さっきも申しあげたように、楽しい要素をたくさんちりばめるように努力しています。例えばフクロウのホーちゃん(Twitterアカウント @megurocinema)では、今後の上映スケジュールを発表する際にジラしたりするんですよね。そうするとお客様から「早くしろよ! 笑」ってリプライが来るんです。でも、それも含めてエンターテインメントだなって思うんです。

―目黒シネマは映画を見てもらう「だけ」ではない、と。
宮久保:普通だったら見たい映画を見つけて行く、って感じじゃないですか。でもウチは、ちょっとおもしろい空間づくりをして、それに興味を示して見たくなってもらう。それがわれわれの目指すべき点ですね。

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―最後に、映画について思いを教えてください。
宮久保:映画って芸術でも娯楽でもあって素晴らしいんですけど、映画は映画以上でもそれ以下でもないんです。変に格式ばるのはダメだと思うんですよね。もっと気楽でいいというか。だから、いっそつまらない映画も見てほしい。例えば本がすべておもしろいわけじゃないですよね。それと一緒で、つまらないものがあって、おもしろいものがある。それはお金を払ったお客様が決めていいんですよ、と。

―"いちばん身近な芸術のひとつ"といった感じですね。
宮久保:そうですね。かしこまって見るんじゃなくて、もっと映画を身近に感じてほしい。私、映画は趣味じゃないんですよ。もう映画は寝食と同じで、生活の一部だから。そんな風にして、人生を豊かにしてくれるのが映画だと思うし、そのお手伝いを今後もできればと考えています。

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昨年公開された映画『東京オアシス』の原田知世さん演じるキクチが務める映画館のロケ地ともなった目黒シネマ。さまざまな方に長く愛され続けるこの劇場で、映画とそのあたたかみのある空間を、気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。

目黒シネマ
12月1日~12月14日は「へルタースケルター」と「さくらん」の監督・蜷川実花2本立てが上映中

(くわ山ともゆき+プレスラボ)

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