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ダウンタウンDX』(日本テレビ系)チーフプロデューサーの西田二郎氏と『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)ディレクターの藤村忠寿氏、それぞれ違う局に身をおくふたりの敏腕テレビマンが局の枠を飛び越えて、テレビ埼玉で一緒にバラエティ番組を作っているらしい......。

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その番組『たまたま』は、西田氏と藤村氏がおくるトークバラエティ。「なにもないからなんでもできる!!」をうたっており、これといったレギュラー企画がないのが特徴だ。
さらに『たまたま』は、低予算どころかなんと予算ゼロ。それでも「ラジオ放送をイメージした」とカメラの前にラジオがポツンと映っているだけの正月特番、視聴者参加のキャンプ企画、ヒーローショーのプロデュースなどユニークな企画を次々繰り出して、コアなファンを増やしている。

名物プロデューサーが予算ゼロで番組を作る理由とは? 西田二郎氏が明かしてくれた。

■テレビマンは予算があって当然と思っている

本当に予算0円なんです、この番組は。テレビ埼玉から予算いただかないようにしています。なぜかってわれわれテレビマンは、予算もらって番組作るのが当たり前やと思ってるんですよ。だから予算がないとこでやってみたかった。セットなんかも全部手作りなんですよ。

でもどういう風に制作費集めるかは悩みました。それで藤村くんと「とりあえず100人とか150人とかまず人来てもらおうや」って決めた。「来た人からお金もらうしかない」と。でも、もらい方どうしましょう。入場料? 1000円やったら、ひとり1000円集めて終わり。いやいや、人によってはもっとこの番組に関与したい、お金出したいって人もいるかもしれん。考えに考えて、20円くらいのプラスチックのちいちゃい板を100枚くらい買って、そこにわれわれがマジックでサインを入れた。

で、人呼んで収録当日です。ぶっわぁ盛り上がりまして。それで、客席に向かって、「めっちゃおもろいやろ? こんなおもろいもん1回で終わってええんか!?」と呼びかけた。そしたら、「いやや!」って答えるんですよ。「せやろ? なら今から言うこと従ってくれ」、それでなんて言ったか。「このペラペラした板、原価20円や。1000円で売る」と。「この儲(もう)けで次回収録の会場も借りられるし、放送もできる。今日のためにお金出してくれ言うんちゃう。次回のためにお金出してくれ」。

ほんならまぁ、こんなしょうもないペラペラのプラスチックをね。5枚とか買ってくれる人もおって、なんやかんやで100口以上、10万ちょい集まったんですわ。これに味をしめたわれわれは、収録を続けていくわけです。そしたら見事にお客さんが少しずつ増えて、こないだの収録はなんと350人くらい。気をよくしたわれわれは、2000円コースも作りましたが、皆喜んで払う。今で番組1年3カ月続いてますね。もう放送25、6回続けてるんですよ。ほんまに必死でした。

そんな大変な思いして、なんで『たまたま』を始めたかというと、もともと「局の枠を飛び越えて、いろんな人間となにかしたい」って思ってたんです。そしたら藤村くんがのってくれた。「水どう」抱えてれば食いっぱぐれずにやってけるんちゃうかいなとビックリしましたけど、藤村くんは、「それでもな、なんかおもろいことしたいやん」って言ったんですよ。おもろいことしたいって考えの先には、やっぱりおもろいもんがつながっていきますね。

■オリジナルはタダでも生み出せる

去年『たまたま』でね、キャンプとして北海道の廃ゴルフ場に種まいて花咲かせるってプロジェクトしたんですよ。募集かけたら30人くらい来てくれました。やることは種まくだけなのに結構なツアー費用ですよ。でも楽しかったんでしょうね。皆写真やら動画やら撮りまくりですわ。で、それらをアップするために内輪のホームページも作ってくれて。そしたら、編集して動画作ったってやつが現れて、まぁそれがようできてたんですわ。「めっちゃええがな」ってその動画をそのまんま放送しました。

気持ちの入ってるものは伝わります。下手くそでも気持ちが伝わればいいんですよ。ネットで人気の動画とか、映像としてのクオリティ高いですか? 高くないでしょ? でもパワーがある。こいつなんか本気やなって伝わるものは、なんか知らんけど見てしまうんですよ。視聴率だけじゃないって気持ちで『たまたま』を作っていますね。低視聴率でも後世に語り継がれるものがあるかもしれない。

オリジナルのものを作るのにお金はいらないんです。あらゆる表現方法を解体して、それでも残るものが"オリジナル"なんです。表現方法っていうのは、言ってしまえば飾りですからね。

それでもテレビはどうしても表現にいろんな飾りを付けて見せたがってしまう。それにはお金がかかって、だからやりたくてもできないことも出てきて、予算を言い訳にするようになってしまう。でも、裸でいいですやん。「裸で行きましょうよ」ってことになれば、テレビ業界も新しいなにかが動き出すんじゃないかな。『たまたま』は、そう思ってやっています。

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西田 二郎(にしだ じろう、1965年9月28日 - )

読売テレビ東京制作局所属のチーフプロデューサー・演出家。大阪府出身。
大阪市立大学経済学部卒業後、1989年読売テレビに入社。『EXテレビ』『ダウンタウンDX』など読売テレビの人気お笑い番組を多数演出。インターネットラジオでパーソナリティーを務めたり、関西ローカル番組『西田二郎の無添加ですよ!』では進行を担当するなど、番組に出演することもある。

現在、「水曜どうでしょう」を担当した北海道テレビディレクターの藤村忠寿氏と共にテレビ埼玉にて『たまたま』を制作、不定期にて放送中。二人のトークライブの模様や、そのトークライブで生まれた企画を行う番組。
 ・公式ホームページ>>
 ・<視線の先>テレビは本当につまらなくなった? 名物プロデューサー・西田二郎氏が反論「クオリティは上がってる」
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(文/原田美紗@HEW)
写真:トレンドニュース


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