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近頃なにかと「テレビがつまらなくなった」と騒がれているが、それは真実なのか?『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)など数々の人気番組を手がける名物プロデューサー・西田二郎氏が業界関係者として自身の考えを語ってくれた。

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■視聴者がテレビをつまらなくした?

「テレビがつまらなくなった理由」なんて記事がいっぱい書かれてるのはなぜか。それ書いたら雑誌が売れるからです。やっぱり皆なんだかんだで「テレビは権威や」と思ってるんで、それをおとしめたほうがウケると思ってやってるんです。そもそも「テレビつまらへん」なんて言う人って昔からいるんですよ。ずーっと一緒です。

僕は、テレビ番組のクオリティ自体は各局すごく高くなっていると思いますね。なにひとつ作り方を間違っていないという番組が増えている。でも、人はどこか破綻しているものが好きだったりするんですよ。昔のテレビ番組って、作り手は「これだ!!」って自信満々でもどこか間違ってるって感じあったじゃないですか。ちょっと雑だったり、アホみたいに丁寧すぎたり、明らかにバランスを欠いてる感じ。その様子が実に魅力的だったりするんですよね。「風雲! たけし城」とか企画からしてやばいでしょ。「はじめてのおつかい」だってバランス悪いでしょ。なんらかの価値観の偏りがある。でもそれが面白い。

面白さということだけで言うと、人間でも魅力的な人ってどこかバランスを欠いていたりしますよ。完璧な人ってちょっとつまんない。人間も番組も魅力的になるにはどこか破綻していたほうがいい。そういう意味で最近の番組は、うまく作りすぎている。そこをもうちょっと勇気もってできたらいいのかなとは思います。

でもね、一方で、勇気をもって"破綻"を作ることにチャレンジしてきたやつはこれまでにもいたはずなんです。破綻した番組が放送されたことはちゃんとありました。でも、その芽を誰が摘んだか? 視聴者ですよ。視聴者が全く受け付けなかった。テレビ局は数字が全て。数字が出なかったものは続けられません。

めちゃくちゃだけど面白いものの芽は、テレビ局だけじゃなく皆で見守らなきゃいけないのかもしれません。今はものの良し悪しを判断されるスピードが速い。本当はもっと時間をかけて見守らなきゃいけないものに、すごいスピードで「ダメ」と答えが出されてしまう。テレビはつまらなくなったと言われるけど、皆が支持するものだけが残った結果が今なんじゃないですか?

■"破綻"の魅力を伝えるために......

テレビは限定的です。24時間というタイムテーブルのもとで番組を作らなきゃならない。だからテレビマンがいくらやりたいって思うことがあっても、タイムテーブル上の理由でできない場合がいっぱいあるんです。テレビマンは、「数字はとれないかもしれないけどなんか面白い気するねんな」ってアイデア必ず抱えています。でもどうせボツにされるのをわかってるから、企画書出さないって部分はあるでしょう。企画書出すだけ出したら通ったけど、「スッテーン!」ってコケてしまうこともあります。視聴率0.2%とか、逆に「出たでー!」って感じしますけども。ただ、これあんまりやると局のブランドに傷をつけてしまうようなもんですから。やっぱりある程度次の仕事につなげられるような、安全なものに打ち込んでくしかないんですね。

■テレビ業界のこれからの人材、表現する場とは

若いテレビマンなんか悲惨ですよ。まだ自分の方向が定まっていないのに、局からは堅実なもんばかり求められて。テレビ局に対する不満、彼らは圧倒的に抱えています。

とはいっても僕としては、実はテレビ局に対して不満って全くないんですよ。テレビ番組を作ってはいるけれど、僕の興味はテレビだけじゃない。いろんな幅を持っています。だからそのなかでテレビの枠に持ち込めないものがあるのは仕方ないと理解しています。それで、そのテレビに持ち込めないような表現の幅が持てるメディアがwebなんでしょうね。

僕は、"破綻してるものを面白い"と思える人の数を増やすために、とりあえず比較的自由なwebから面白いことを伝えていくっていうのもひとつの手じゃないかと思うわけです。
僕らテレビマンは限定的でない場所というのに多大なる魅力を感じています。そして、いろんなアイデアを抱えているけど出す場所のないテレビマン、僕は完全に彼らをグリップしています。いろんな人に声かけてるんですよ。リヤカーにいろんなテレビ局のディレクター積んであちこち「どうですかー?」って回ってるイメージですね。まだまだテレビ局には使いきれていない資産が埋まるほど眠っています。これから恐ろしいの、出てきますよ。

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西田 二郎(にしだ じろう、1965年9月28日 - )

読売テレビ東京制作局所属のチーフプロデューサー・演出家。大阪府出身。
大阪市立大学経済学部卒業後、1989年読売テレビに入社。『EXテレビ』『ダウンタウンDX』など読売テレビの人気お笑い番組を多数演出。インターネットラジオでパーソナリティーを務めたり、関西ローカル番組『西田二郎の無添加ですよ!』では進行を担当するなど、番組に出演することもある。

現在、「水曜どうでしょう」を担当した北海道テレビディレクターの藤村忠寿氏と共にテレビ埼玉にて『たまたま』を制作、不定期にて放送中。二人のトークライブの模様や、そのトークライブで生まれた企画を行う番組。
 ・公式ホームページ>>
 ・<視線の先>名物プロデューサー、地方局で予算ゼロ番組を作る理由......「なにもないからなんでもできる!!」
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(文/原田美紗@HEW)
写真:トレンドニュース


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