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"アポなし突撃"や"猿岩石のユーラシア大陸横断ヒッチハイク"など、突拍子もない企画で1990年代に一世を風靡(ふうび)した伝説のバラエティ番組『進め!電波少年』で、若手芸人から「T部長」「Tプロデューサー」として恐れられていた土屋敏男氏。現在は、依頼者の人生の真実を切り取り、その人のためのドキュメンタリー番組=ライフビデオの制作を行う、LIFE VIDEO株式会社の代表取締役ディレクターとして新たなコンテンツ制作に挑戦している。飽くなき挑戦を続ける土屋氏に"アポあり"インタビューし、「おもしろいコンテンツの作り方」について聞いた。

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■今だけでなく昔のテレビも面白くない?

テレビが面白くないという言葉が飛び交う昨今。じゃあ昔のテレビが全部面白かったかというとそうではないんです。今も昔もテレビ番組の数はものすごく多いですよね。その中でも面白い番組は、テレビ史の中に数えるほどしか残っていないんですよ。つい先日、僕が日本テレビに入社したときの制作局長で大変お世話になった井原高忠さんが85才で亡くなりました。その人は『ゲバゲバ90分』『11PM』などを作ったスゴイ方。その方でさえ、話題にされる番組は4つか5つですよ。僕が関わった番組はいくつもあるけど、もし僕が今死んだら『電波少年』としか言われない(笑)。

■面白いと思うテレビは必ずある

テレビとネットを「面白さ」で比べる時に基本的にそれぞれは違うものだと区別しなきゃ行けない。少なくともプロの側は、と思っています。ネット=通信は、基本的に「あなた」のためにというところからスタートする。つまり双方向の「会話」ですよね。それが徐々に「あなたたち」「あなたたちのような人たち」と広がっていったのが、ネットのコンテンツだと僕は考えているんです。だから、はなっから万人を相手にしていない。特定の誰かが、すごく面白がってくれればいい。
でも、テレビははじめから「みんなのため」に作っています。そこは今も昔もまったくブレていない。つまり、「今のテレビが面白くない」と言う人は、その人が見ている番組の作り手側が想定する「みんな」に、その人自身が入っていないからだと思う。でも、その人だって全部の番組を見ている訳じゃない。EテレやBSやCSを全部見られる訳ではない。でも、その人が「みんな」の中に入っている番組は必ずあるんですよ。そこにたどりつく方法を見つけていないだけで。

■視聴率は面白さの指標ではなく、商売の指標

僕がTwitterで、あの番組が面白いとつぶやくと、「でも、あれ視聴率悪かったですよ」と言ってくる人がいる。それっておかしいですよね。実際にその番組を見て「面白くない」というのは全然かまわない。でも、「視聴率が悪かった」は違う。そもそもテレビの視聴率というのはテレビ局にとってのビジネスの指標でしかない。面白いか面白くないかの指標ではないんです。
ところが、視聴率が低いものは面白くないと考えてしまう人がいる。さっき言ったことの「みんな」と関係しますが、みんなが見ているものが誰にでも面白いもの、というのは大間違いです。あくまでも自分が面白いと思うものは自分で探さないと見つからないと思うんです。
もちろん、視聴者のテレビ視聴スタイルが多様化している昨今、テレビ局側も変わらなければいけないと思う。先日、日本民間放送連盟の井上弘会長が定例会見で発表した「ネット配信するぞ」みたいな、ドラスティックなビジネスモデルの転換をしなければいけない時期に差し掛かっているのだと思いますよ。

■新しいテクノロジーによって新しい表現が生まれる

僕は新しいテクノロジーやツールが大好きなんです。それこそグーテンベルグの印刷技術からはじまって、映画にしてもインターネットにしても、新しいテクノロジーから新しい文化が生まれて、そこに新しい面白いことが生まれるでしょう。それをやらないでどうするのって思うんです。
あの猿岩石のヒッチハイクができたのも当時SONYのHi8 (ハイエイト)ビデオカメラがあったからなんです。そのカメラは小さいけど、ある程度の画質が撮れた。基本的にプロ用カメラはデカい上、ロケともなると音声や照明、プロデューサー、マネジャーなど総勢8人ぐらいの大所帯になってヒッチハイクなんてできない。でも、ディレクターが一人でそのカメラで撮影できたので成立したんですね。それでも「あんな画質で放送できるか!」と送出部の人には怒られましたけど(笑)。

■90%の"ビジネスマン"と10%の"狂気をはらむ人間"

Facebookが日本に入ってきたとき、「日本人は匿名文化だから......」とか、ほとんどの人が否定した。でも、いつのまにか「コレ面白いんじゃない?」とどんどん広まってヒットしたわけですよね。僕はヒットコンテンツに必要な物はある種の"狂気"だと思うんです。今、SONYの業績が悪くなったのは「AIBOなんかを作っていたからだ」と言う人がいます。僕はAIBOを作ってトライし続けなければいけないと思うんです。もちろんすべてのトライが成功するわけではありません。でもトライしなければ成功もありえない。
視聴率などのデータも実は革命的な発明を生むためには役に立たない。アメリカのドラマ『24』は、きっと「24時間リアルタイムのドラマがあったら面白いはず!」という思いだけでやったんです。だってやる前にそれが面白いというデータなんてありませんから。でもそれでハリウッドが大きく方向転換することになった。本当の革命はそうやって起こっていくんです。
最近のみんなは頭が良くて、データをしっかり分析している。でもデータを見過ぎなんです。データを元に会議の出席者みんなが「それイイよね」というものは、間違いなく間違っている(笑)。経営者的な立場からすれば頭のイイ人たちが必要だけど、ヒットコンテンツを生み出すには個の「狂気」をはらんだ人員が必要なんです。何かおかしなことばかりしているなというような人が。でも全員がそうだと困ってしまうけど(笑)。

■自分の勘を頼りに「現在ないもの」を作る

クリエイターの中に「自分が作りたいものをつくった」という人がいますけど、そんなことはありえない。やっぱり誰かに見せるために作るんです。僕が今やっているLIFE VIDEOというのは、「誰が見るのか?」というところから始めます。自分自身で見るのか、家族がみるのか、それとも会社の人がみるのか。そういう切り口があるから「その対象に対して」面白いものが作れるんです。もちろん、作り手自身が面白いと思うことは大事。「その人の人生を切り取る」というディレクターの目線は必要です。作り手の勘と言ってもいい。
今の世の中にはこんなものがない。ないのだったら自分でやろうというところから、自分の勘を頼りにスタートする。
僕は電波少年の前に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』をテリー伊藤さんの下でやったけど、実は、最初はスタジオコント番組だったんです。でも、3カ月後にドキュメント的な企画を始めた。ドキュメントをバラエティで初めてやった番組なんです。これはやっぱりテリー伊藤さんの勘なんですよ。それを僕は見ていたから、自分の勘を大事に作ったのが『電波少年』であり、『ウリナリ』だった。既存の人気番組に似たものを作っていくつもハズしていたので、だったら、今ないものを作ろうと。
LIFE VIDEOも「今までにないもの」だから、世の中に認められるのには時間が掛かると思います。だから、最低5年はやり続けようと思っています。

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土屋 敏男(つちや としお)

LIFE VIDEO株式会社 代表取締役ディレクター。1956年生まれ。静岡県出身。
一橋大学社会学部卒業後、1979年日本テレビに入社。『進め!電波少年』ではTプロデューサー、T部長として話題となる。『天才たけしの元気が出るテレビ』『雷波少年』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!』などの人気バラエティ番組を多数手掛ける。
LIFE VIDEO公式ホームページ>>
▲座右の銘:地道

(取材・文/浅井英彦@HEW)
写真:トレンドニュース

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表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。 それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通して、"情報"にとどまらない「エンタメの真髄」に迫り、読者の皆様にお届けいたします。

【バックナンバー】
 ・<視線の先>テレビは本当につまらなくなった? 名物プロデューサー・西田二郎氏が反論「クオリティは上がってる」
 ・<視線の先>名物プロデューサー、地方局で予算ゼロ番組を作る理由......「なにもないからなんでもできる!!」

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