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セブン-イレブンのセブンカフェの登場で、コンビニエンスストアで買えるコーヒーの質が大きく変わりましたね。このセブンカフェのブランドクリエイティブディレクションが佐藤可士和さんの手によるものだと知っていましたか? 他にも、ユニクロのロゴをカタカナと英語のダブルロゴにしたのも、日清のカレーメシのCMやネットコンテンツの、全体的になんだか気になる感じも、可士和さんの仕事です。

 ヒット作を数多く手がけるアートディレクターの佐藤可士和さんに、"仕事で結果を出すための秘策"をうかがってきました。

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アートディレクター、佐藤可士和さん


■打ち合わせは仕事における「食事」のようなもの

 ――可士和さんは、『佐藤可士和の打ち合わせ』という本を出すほど打ち合わせにこだわりをもっているようですが、それはなぜですか?

 毎日の生活習慣とか、食事とか、日常の中で当たり前になっているものってなかなか改めて気をつけられないですよね。僕はね、打ち合わせも食事のように当たり前のことだからこそ、気をつけたほうがよいと思うわけです。食事も生活習慣も、大げさではなく10年たつと体に変化が出てくるじゃないですか。打ち合わせもそういうものに近いと思うんです。打ち合わせに気をつかうことで、10年後の仕事の内容が変わっていると感じています。

 ――なるほど。では、打ち合わせで好ましくないと思う態度はありますか?

 たとえば今はモバイル型のノートパソコンを打ち合わせに持ち込む人って多いですよね。パソコンがあれば議事録を取ったり、打ち合わせ中にインターネットで調べ物ができたりする。それから僕の仕事ではウェブサイトのデザインについての確認することもあります。

 このようにパソコンがどうしても必要な局面もありますが、打ち合わせ中なのにずっとパソコンの画面を見つめているようなことはやめたほうがよいと思っています。たとえば議事録などは、誰か一人が取ればいいですよね。議事録を正確に取るのも結構大変なことだと思うので、それは誰か一人が集中してやる。みんなでメモを取る必要はない。打ち合わせは記録の場だと思っているのかもしれませんが、それは違いますよね。たとえば、パワーポイントなどで概要を誰かが説明しているのであれば、それは資料をあとでもらえば打ち合わせ中に細かく記録する必要はないですよね。

 パソコンの画面を見ていると、しゃべらなくても仕事をしている気になってしまうことがあるんですよね。だから本当にパソコンを見ることが必要なときならいいのですが、パソコンを打っていれば何となくミーティングに参加しているような気になっている人もいるのではないでしょうか。そういうのはよくないですよね。

■その場で考えられる人、その場で決断できる人

 ――では、可士和さんが、打ち合わせの段階で、「この人と仕事したい」と思う人はどんな人ですか?

 やっぱり、その場で考えられる人ですね。先ほどのパソコンの話と同じなんですが、僕が思うのは、打ち合わせで記録することに没頭している人は、記録して会社に帰って読み返してその後で、次の打ち合わせに答えを持ってくる気でいるんだと思います。そうではなくて、会議中の案件に対し、その場で真剣に向き合ってみんなで考えていくことが打ち合わせの意味ではないでしょうか。

 もちろん全部が全部打ち合わせで答えが出るわけではありません。でも、その場で考えて何らかの結論を出すつもりで打ち合わせに挑む姿勢はとても重要です。

 ――可士和さんは著書のなかで「無駄な打ち合わせはしない方が良い」とおっしゃっていますが、定例ミーティングのように時間が決まっている場だと、特に話すことがないけどとりあえず集まることもありますよね。そういう会議はしない方がよいと思われますか?

 そうです。必要なければやめればいい。僕が自分に課していることは、打ち合わせによってプロジェクトが少しでも前に進むということです。打ち合わせを1時間行えば、1時間分の結果を出さなければいけない。時間に対する"飛距離"というものは、とても意識しています。

 最初の話になりますが、やっぱり打ち合わせは食事に似ているんですよ。生活における食事。おなかが空いてないけれども決まっているから三食食べなければいけないとついつい思いがちですが、本当は体調や年齢によっては、二食でよい日もあるかもしれない。

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佐藤可士和さん「打ち合わせこそクリエイティブの場。無駄な打ち合わせはしないほうがよい」


■日本のカルチャーは、どんどんマニアックに進化してほしい

 ――話は変わりますが、佐藤可士和さんは、現在の若者のカルチャー、TwitterやFacebookなどのSNS、LINEや、ニコニコ動画などの新しいカルチャーの出現について、どう思われていますか?

 ぜひ、もっともっとマニアックに深く進化していってほしいですね。そこから、新しいイノベーションが生まれると思うので。

 僕自身も、SNS、LINE、ニコニコ動画などを使っています。特に若者カルチャーで印象的だったことは、今年、日清食品の「カレーメシ」の広告キャンペーンを担当したときのことです。「おじさんには理解不能な新しさ」というコンセプトで「カレーメシくん」というキャラクターをつくり、そのキャラクターがさまざまなゆるキャラと対決するという「カレーメシファイトクラブ」というコンテンツを考えました。CMもそのコンテンツもSNSやYoutubeですごい盛り上がりを見せ、若者のネットカルチャーが世の中を動かしていると肌で感じました。

 そしてネットの盛り上がりが、実際の売り上げにもつなかっているということが、すごいなと思いました。

 ――今回の本は可士和さんご本人がデザインされましたが、表紙のこだわりはありますか?

 わかりやすく、インパクトのあるデザインに仕上げようと思いました。表紙は、読者の方自身が、テーブル越しに僕と打ち合わせをしているというイメージです。

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ご本人が表紙をデザインした、「佐藤可士和の打ち合わせ」。


 本のなかに登場する可士和さんは誰もが耳を傾けてくれるような大物になった今も、自分が考えたアイディアを真剣に相手に伝えようとする謙虚な人だということが文章から伝わってくる本です。可士和さんの元に面白い仕事が集まるのは、発想を相手に真剣に伝える努力によるところが大きいと感じました。

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佐藤 可士和(さとう かしわ)

アートディレクター/クリエイティブディレクター。1965年生まれ。東京都出身。博報堂に入社。独立後「SAMURAI」設立。慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科客員教授。ホンダ「N」シリーズの広告キャンペーン、「キリン別格」のパッケージデザインから広告キャンペーン、ユニクロ、楽天グループ、今治タオルのクリエイティブディレクションなど多数の仕事を手がける。

(取材・文:梅田カズヒコ/プレスラボ、撮影:林健太)

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