ここから本文です

これまで『ソラニン』『僕等がいた(前篇・後篇)』『ホットロード』など数々の大ヒット恋愛映画を手がけてきた三木孝浩監督。すべての作品がいわゆる"原作付き"のものだが、原作ファンを納得させる実写化の極意とはなんだろうか。
800万部突破の大ベストセラーコミックスを映画化した最新作『アオハライド』が12月13日より劇場公開開始されるにあたり、三木監督の映画作りへの考えに迫った。


サムネイル

最新作『アオハライド』が12月13日より公開 三木孝浩監督


■"原作の空気感や世界観は忠実に描く"が鉄則


――実写化作品は原作ファンの反発を招いてしまいがちですが、そういった風潮についてどうお考えですか?


「もちろんそうでしょうね。僕も自分が好きな作品が実写化されると聞いたときは、『できる限りいい感じに作ってくれ』って祈りますもん(笑)。だから自分が原作を読んだ時にファンになった部分は脚色もせず、壊さないように作るのがテーマでもあります。」


――原作から大きな設定変更がある実写化作品も多いですが、三木監督はビジュアル含め、原作の設定を忠実に守っていらっしゃいますね。


「僕は『アオハライド』原作者である咲坂伊緒さんが『映画化してよかった』と納得してもらえるものを作りたかった。咲坂さんが生み出したキャラクターを生身の人間で演じたときに、原作の世界観がより広がるのが理想なので、キャラクターの造形と空気感は、一番気にします。」


――基本的には原作に沿う形で映画を作るのですか?


「もし原作を改変するのであれば、それは自分のオリジナルで違う物語を作ればいい、というのが僕の考えです。長期連載作品の映画化となると、どうしても2時間という尺に収めるために一度は原作を解体して再構築しなきゃいけない部分というのは出てきますが、空気感というのか匂いというのか、原作ファンが触れたときに違和感がないように、かなり忠実に描きます。」


――実写化映画にとって原作とはどういった存在なんでしょうか。「ここまでは原作を守るけれど、ここから先は少し変えていこう」という境界線はどのように決めていますか?


「原作のテーマを抽出して、それを軸に肉付けをしていくという作業なので、やっぱり原作は骨組みにはなりますね。枝葉は違っていても、骨組み、幹の部分がブレないようにしています。だから原作は何度も何度も繰り返し読み込みますけど、それは、コピーするためというより、原作がもつ空気感や世界観を体にしみこませるためです。」


――『アオハライド』の"幹となる部分"とは、三木監督から見てどこにありましたか?


「その瞬間を生きる、ライブする感覚、失敗してもいいからその瞬間を、チャンスを逃さない、タイミングを逃さないように、常に動く。主人公の双葉は、『失敗を恐れて動かないとゼロだけど、失敗しても前に転べばそれだけ前進してる』ということを提示してくれる。その姿を見て洸(こう)は心を動かされるし、見ている大人の僕らも感動するというのが『アオハライド』なのかなと。恋愛だけでなく、友情ストーリーでもありますよね」


「あとは、キャストのみなさんには"作品の中でキャスト同士、気持ちを共有してほしい"という話はしました。「はい、あなたはライバル役です」というよりは、もしかすると千葉くんが演じる冬馬くんや充希ちゃん演じる成海が何かが違えば、双葉や洸と付き合っていたかもしれない。原作で僕が好きだった部分、"ちゃんとそこで生きてほしい"というか、見返りを求めない友情、離れていても友だちのことを想っているという気持ちを大事にして欲しかったです。」


サムネイル


■恋愛映画で"光の演出"は感情表現のひとつ


――『アオハライド』で、撮影上のこだわりはありましたか?


「僕自身今までは回想録だったり、靄がかかったようなノスタルジックな描写が多い物語をよく撮っていたんですけど、今回の『アオハライド』は瞬間瞬間の輝きを逃さないようにという感覚で撮りました。僕自身初めての挑戦でしたが、たとえば、映像の色合いにコントラストをつけて、キリッと今そこで動いているような感じを出してみたり。あとカメラの動きもライブ感を意識して撮りました」


――画面全体に淡くもやがかかったようになっていたり、キラキラ輝くようだったり、三木監督の映画は"光"が印象的ですね。


「僕にとって光は、感情表現のひとつなんです。とくに恋愛映画は、セリフ以外の部分がすごく大事。ケンカしたけど相手のことが好きだと思っているときの表情とかって、セリフじゃなかなかニュアンスが伝わりづらいけど、映像なら伝えられる。そういうときの光の加減は気にします」


――今まで恋愛ものをたくさん撮っていらっしゃいますけれど、三木監督はラブストーリーについてどのようにお考えなのでしょうか?


「恋愛に限らず、"誰かが誰かを想う時間"っていうのが好きなんです。僕は、セリフじゃない想いの部分を描くのが好きで、そういう部分を一番たくさん表現できるのが恋愛映画なんだと思います。想像するのが映画の醍醐味(だいごみ)という気はしますね。」
「ただ、思春期の女の子の気持ちは僕にはわからない(笑)。現場の若い女性スタッフがいっぱいいますので毎回聞きながら撮ってます。立ち居振る舞いとか、ちょっと突き放したように言ったほうがいいのか、もうちょっと甘く言ったほうがいいのかとか、そういうセリフの微妙なサジ加減とかは、すごく相談しますね。」


――実は私は、三木監督の映画を見るまで、少女漫画原作の映画にチープなイメージをもっていたんです。思春期の女の子向け、いってしまえば子供向けというような、わかりやすい作りをしているものだと思い込んでいました。


「僕が気を付けているのが、『人間は、思っていることを素直に言葉にすることはほとんどない』ってことなんです。恋愛ものはとくに登場人物たちがなかなか本当のことを言わない。どこかうそぶいていたり、かっこつけていたり。言葉と本音にギャップがあるほうが人間味がありますし、そこはすごく意識しますね」


■監督の今後の作品について


――映画を撮るうえでの目標のようなものはありますか?


「僕はやっぱり求められるものに応える方がすごく楽しいです。原型があって、オーダーされて、そのために作る。たとえば、家具職人のようにその人のキャラクターや好みを理解しながら、「こういうの作ったら喜んでくれるかな」って考えて作る方が、性に合っている。「オリジナルでこういうの好きで作ったから、買ってよ」というよりは、発注した側も、それを見る人も楽しんでもらえるんじゃないかな。僕はそれがすごく理想的だと思っています。」


☆10巻で累計800万部突破(2014年11月現在)という驚異的な発行部数を飾った、"本命"青春ラブストーリー『アオハライド』が、12月13日より全国ロードショー。タイトルのアオハライドとは原作者 咲坂伊緒が<青春(アオハル)>と<ride(乗る)>を組み合わせて作った言葉。"登場人物みんなが、青春に乗っていく"という意味が込められている。本田翼、東出昌大のW主演。


(取材・文/原田美紗@HEW


三木孝浩(みき・たかひろ)
1974年8月29日、徳島県出身。ORANGE RANGE、いきものがかり、FUNKY MONKEY BABYSなど多数のアーティストのミュージックビデオやCM、ショートフィルムなどを演出し、2010年、『ソラニン』で長編映画監督デビュー。その後、数々の恋愛映画でヒットを記録。2015年には、次回作『くちびるに歌を』の公開も控えている。
◆座右の銘は「神は細部に宿る」


■「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている"視線の先=考え、狙い、戦略"を一緒に見てみたい。


表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。 それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通して、"情報"にとどまらない「エンタメの真髄」に迫り、読者の皆様にお届けいたします。

Facebookコメント
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。
PR

最新記事

rss

もっと見る

本文はここまでです このページの先頭へ