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28歳の若手キャリアウーマンにできた初めての部下は......50歳!? マイペースな「年上部下」アベ(緋田康人)に振り回される「年下上司」ハナ(木南晴夏)の姿をコミカルに描いた5分間のショートドラマ「青山ワンセグ開発『私の部下は50歳』」が、「久しぶりに声出して笑った」「NHKやるな!」「主題歌が頭から離れない......」とドラマ通たちの注目を集めている。


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同番組は、さまざまな制作会社が手がけた映像作品を視聴者の投票でオーディションするというバラエティ番組「青山ワンセグ開発」(NHK Eテレ、毎週金曜0時20分~0時45分)に寄せられた作品なのだが、なんと今年4〜6月期のバトルで、他作品に大差をつけて圧勝、見事レギュラー化を勝ち取ったという道のりを歩んだ作品だ。


しかし、「50歳の部下」とは一見突飛なようだが、年功序列制度が崩れてきた現代の日本では、実は、「明日はわが身」といえるような設定。一歩間違えると、視聴者が気軽には笑いにくい作品ともなってしまいかねない危うさもある。


脚本・演出を手がけた有働佳史ディレクターは、誰もが身近な問題をエンタメに昇華するうえで、その危険性をどのようにクリアしたのだろう? そして、リアルなテーマを扱った真意とは? 12月7日(日)16時30分から第6話~10話が一挙放送されるにあたり、その想いを聞いてみた。


■「ありそうでないもの」を作るはずが......


――「50歳の部下」という設定はコミカルなようで、ある意味社会問題ともいえるテーマですよね。この企画は、どのように生まれたのでしょうか?


日常にありふれたものをそのままドラマにしてもつまらないから、「ありそうでないもの」を企画しなきゃいけないと思ったんです。そしたら、どうやら年上の部下っていうのが最近ちょこちょこ増えてきているらしいと。僕も会社員時代、年上とはいえ立場上は後輩の人にタメ口きかれて「なんで!?」ってモヤモヤしたり、年上の部下がなんか使いづらいって友達からボヤかれたりしたことがあったので、自分にとっても身近なテーマでした。ただ、いくらなんでも50歳が部下になることはないだろうと。しかも20代後半の女の子に。そう思いついたら、すぐにタイトルもストーリーもキャスティングも決まりました。

でも、そんな「ありそうでないもの」と思ったものが、視聴者の声を聞いてみたら、意外と「あるある」の話だったみたいで......。事実は小説よりも奇なりって言いますけど、実際にSNSに「私には60歳の部下がいます」っていうコメントもありました。僕たちとしては、意図しなかった部分で共感が得られましたね(笑)。


■50歳の部下、アベを形作る絶妙なバランス


――視聴者にとって身近な問題をコメディに変換するうえで、気を付けた部分はなんでしょうか?


キャラクターをいかに魅力的に見せるかです。木南晴夏さん演じる上司のハナもそうですが、この場合はとくに緋田康人さん演じる部下のアベに、「いそうでいない」、それこそ「ありそうでない」のバランスを作れるかどうかが大事だと思いました。あまりリアルに迷惑な感じの人になると、視聴者をイライラさせるだけになっちゃいますし。かといって突拍子もなさ過ぎるキャラにしちゃっても......。


Twitterの感想を見ていると、「昔会ったおじさんを思い出してアベにイラッとする」というのがやっぱりたまにあるんですよね。そういう意味では、ほとんどが「こんなおじさん見たことない」って感想でも、100人にひとりくらいが「誰かを思い出す」って感じる、いい具合のバランスを作ることに成功したのかなと。


■50歳のおじさんなんてコントロールできない


――有働さんは、年上部下との付き合い方について、どのようにお考えですか?


今までの上司と部下の関係って、上司が部下をコントロールするようなものだったと思うんですけど、50歳のおじさんなんて絶対に操れないわけですよ。もう人格が固まっちゃっているし。転職や中途採用が当たり前になって、年上の部下がどんどん増えて、今までの上下関係っていうのは今後消えていくと思います。同期と仕事しているようなフラットな関係になるしかないんじゃないかなぁと。同期には命令できないじゃないですか。


今後ハナちゃんとアベさんが協力してなにかを成し遂げるという展開があるとすれば、「一緒に、同じ方向を向いて走りましょう」っていうフラットな関係でできるやり方じゃないとだめなのかなって気がしています。


■エンタメで行う「ゆるい投げかけ」


――コミカルな内容の中に、そのようなメッセージが込められてるんですね。


メッセージっていうほどのものでもないですよ(笑)。身近な問題をテーマにするっていっても、あんまり見ていてつらくなっちゃうようなリアルなものだと、それはちょっと僕には荷が重くて。あと説教くさくなる可能性もありますし。なにより僕がそんな説教なんてできる立場なわけないし。問題提起なんかじゃなくて、「こんなこと思っていますけど、皆さんどう思います?」くらいのゆるい投げかけのつもりです。


「社会問題をいかにポップに笑い話にできるか」っていうのが、僕の考えるエンタメの醍醐味なので。だから一番意識したのは、「楽しんでもらえるか」というところです。もちろん社会問題をシリアスに伝える作品もあっていいとは思うけども、それは、別の人がやることかもしれないなと考えています。


ポップにすることで伝わりやすくなるものもあると思うんです。みんな説教って受けたくないでしょ? それに100人中99人が面白いって笑ってくれたなかで、ひとりだけは、「これ深いな」みたいに感じてくれるかもしれない。そんな風に、僕の意図を超えたところからメッセージを読み取ってくれる人がいたら本望ですよね。


だから、このドラマも一応社会問題をテーマにはしてるんだけど、それをテーマにした時点で僕の仕事はひとつ終わっていて、残りの仕事は、どれだけ面白い作品にするかってだけです。「なにかすべきだ!」って一石を投じる力は僕にはないので。だからこれを見て頂いた誰かに頑張って投じてほしいです! 本当に!(笑)

・ ・ ・ ・ ・

有働さんから感じるのは、「視聴者への明るい期待」。作り手が作品の受け止め方まで決めてしまうのは、おこがましい。一体この「ゆるい投げかけ」にどんなリアクションが返ってくるのだろう――。まるで有働さんのほうが、大好きな物語の続きを待つファンかのように、目を輝かせて視聴者の反応を楽しみにしている。「僕の意図を超えたところからメッセージを読み取ってくれる人がいたら本望」、果たして有働さんをうならせる名解釈は現れるか?



■有働佳史(うどう・よしふみ)


1984年10月28日、熊本県出身。CM制作会社に勤務して、2012年、28歳になった時、心機一転のため独立。「CMより長い作品も作りたい」と番組制作の方面にも挑戦。昨年12月に「青山ワンセグ開発」で処女作となるアニメ「レッドはツラいよ!!」を発表。「私の部下は50歳」は2作目。
座右の銘は、「『座右の銘を決めないこと』。考えは変わるものなので」。



☆「青山ワンセグ開発『私の部下は50歳』」、NHK Eテレで12月7日16時30分~16時55分に第6話~第10話が一挙放送。また、ワンセグ2で毎週月曜21時55分~22時に1話ずつ再放送中。


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(c) NHK 佐世保映像社



(C)NHK


(取材・文/原田美紗@HEW


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表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。 それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通して、"情報"にとどまらない「エンタメの真髄」に迫り、読者の皆様にお届けいたします。

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