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――年末最大の関心事といえば、NHK紅白歌合戦だった。それが民放に押され視聴率は徐々に下落するのだが、ここにきて人気は回復傾向。特に"北島三郎引退"や"あまちゃん"など話題の多かった昨年末の第64回は、紅白を見直すきっかけとなった、などの高評価を得ている。

そこで、いよいよ目前に迫った第65回NHK紅白歌合戦の見どころを、"紅白に詳しすぎる放送作家"として知られる寺坂直毅氏に直撃。舞台セットのミニチュアを自作したり、ここ40年分の司会者やトリのコメントを再現できるほど、紅白の歴史と知識に関して右に出るものはいない"紅白愛好家"だという寺坂氏が明かす"紅白人気復活のきっかけ"や"紅白の本当の楽しみ方"とは?

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40年分の司会者やトリのコメントを再現できるほど、
紅白の歴史と知識に関して右に出るものはいない"紅白愛好家"寺坂氏


■紅白人気復活のきっかけは「歌の力」、大きな分岐点に

このところ、紅白が面白くなってきたという声を耳にします。実は2007年の第58回から、制作の方針が変わっているように思います。58回から60回までのテーマは「歌力」。それまでの、紅白対抗戦というコンセプトではなく、それこそ同局の「SONGS」のような音楽をより大事にする番組になった。メッセージ性を重視し、音をしっかり聴かせる。
特に大きく変わったのが司会者の曲紹介で、曲が終わるやいなや「さあ続いては~」と入ったり、メドレー形式で数曲まとめて紹介するのをやめ、1曲1曲を大切にするように変わったんです。歌手が歌い終わると、その余韻を感じられる間(ま)をとってから、「○○さん、ありがとうございました」。この回が大きな分岐点になり、視聴率も上がっていきます。

それを受け継ぎつつ、2009年の第60回から62回までは、照明を少し暗くし、セットもシンプルで格好いい、シックな番組になります。そして第63回にももクロが登場する。その前からAKB48などのアイドルグループは出演していましたが、紅白全体を彩るほど目立ってはいなかった。アイドルを前面にし、バラエティ色をだし、紅白を一大エンターテインメントにしようとしているのを感じました。
今年も「歌力」と、エンターテインメント性が融合したものになるのは間違いない。そのバランスは興味深いですね。

■曲順とは映画のストーリー、最も伝えたいメッセージを感じ取る

その、"今年はどうなるか"というのが最も表れるのが"曲順"なんですよ。曲順には、その年の「紅白歌合戦」そのものが、4時間を通して訴えたいことがわかる。紅白には、出場者発表、曲目発表、曲順発表と放送前に何度か山場がありますが、その中でも僕は特に"曲順"に注目しています。

曲順イコール映画のストーリーなんです。本編を見る前に、曲順だけでいろいろ考えるのもおもしろいですよ。ここでこう雰囲気を変えるんだろうなとか、ここで攻守交代するんだろうなとか、ここで1年の締めくくり的なコメントがあるんだろうなとか。
「いよいよ2014年も終わりに近づいてきました。最後は来年への思いを込めたバラードをお送りしましょう」と言ってクライマックスに向けた時間が始まるといった、4時間のストーリーが見える。それが曲順なんです。

なかでも、最も伝えたいメッセージが大トリの曲に表れます。2013年なら北島三郎の「まつり」。北島三郎引退の花道であり、かつ、しんみり終わらせたくないんだなと。紅白の4時間は、ラストの曲に向けて作っていくもの。今年2014年は松田聖子の「あなたに逢いたくて~Missing You~」が大トリに決まりました。どうつなげていくか、ぜひ楽しみにみていてください。

■朝ドラ女優が4時間で見せるドラマ「初々しさからプロ魂まで」

もうひとつ、最近の傾向と見どころとして、"朝ドラの女優"が挙げられます。2010年、第61回の紅組の司会は「ゲゲゲの女房」の松下奈緒。それまで女子アナや仲間由紀恵が務めてきた紅組司会ですが、ここから"朝ドラで1年間頑張った女優さんを紅白の司会に抜擢(ばってき)"という流れができました。
第64回は「あまちゃん」大特集があったためか司会は綾瀬はるかでしたが、1年間大河ドラマ「八重の桜」で主演を務めたので意味合いは同じでしょう。しかも共通するのが、大きな司会の経験があまりないこと。そういう人が発表会見で「初めてなので不安ですが」みたいなことを言って、本番でもはじめは不安定なところを見せるんだけど、途中から感情移入していって最後トリの曲の紹介のときにはカメラ目線でしっかりまとめる。制作側の狙いとしては、その女優にとっての、朝ドラから続くドキュメンタリーにしちゃうんですね。4時間のなかで、初々しい女優さんがだんだんプロ魂を発揮し、やがて堂々と感動の曲紹介をするというストーリーをわれわれは見るわけです。

だから、朝ドラ女優のラストの曲紹介にも注目です。第63回の堀北真希は、オリンピックのアスリートたちを前に「ロンドンオリンピックの感動とともに、いつもこの歌がありました。さわやかな歌声と希望に満ちたメロディーが、私たちに生きる喜びを与えてくれました」と語ったあとで、「歌に会いたい」というテーマに合わせ「この歌に出会えてよかった。いきものがかり『風が吹いている』」と紹介。
第62回の井上真央は震災を振り返り、「東北に、そして日本全国に歌の力を届けるため。全身全霊で歌っていただきます。石川さゆりさん『津軽海峡・冬景色』」と紹介。

2014年は、最後に吉高由里子がどのようなメッセージを伝えるのか。そこに、歌番組を超えたドラマというか、ドキュメンタリー性がある。そのことからも、紅白は1本の4時間の作品なんです。
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――単なる歌の羅列ではなく、ストーリーを楽しむのがNHK紅白歌合戦。最初から全部見ないと、感動も半減するのかも。

(取材・文/大木信景@HEW

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寺坂直毅
1980年宮崎県生まれの放送作家。紅白歌合戦愛好家の他、デパート愛好家。
著書に、日本全国のデパートを取材した『胸騒ぎのデパート』(東京書籍)がある。
座右の銘は「冬来たりなば春遠からじ」。

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