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視聴率が低迷した時代があったため、一部では"もう飽きられている"などと言われる「NHK紅白歌合戦」。だが、2013年の第64回が大好評を博すなど、実のところ最近の紅白は視聴率も徐々にではあるが上昇しているのだ。特にミュージシャンにとって、紅白の存在感は特別。「他に比べるものがないほど」だと"紅白に詳しすぎる放送作家"寺坂直毅氏は言う。

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40年分の司会者やトリのコメントを再現できるほど、
紅白の歴史と知識に関して右に出るものはいない"紅白愛好家"寺坂氏


このところの演出方針の転換や朝ドラ女優の使い方などにより、NHK紅白歌合戦はかなり面白くなっています。視聴率の上昇はわずかに見えるかもしれませんが、40%を超えた。30%台と40%ってものすごく違うんですよ。数字が取れないこの時代に、40%を超えるというのは大変なこと。年々視聴率が上がっている唯一の番組といってもいいかもしれません。

■ももクロは紅白出演時に特別な思いをのせた

確かに低迷していた時代はありました。その頃はアーティストたちもあまり紅白を重要視していなかった。でも、最近の特に若いミュージシャンは本当に紅白を特別な存在だと思っているんですよ。
象徴的なのが、2012年の第63回。この年はももいろクローバーZが初出場を果たしたのですが、そこで歌った「行くぜっ! 怪盗少女」という曲でドラマが起こった。同曲は最後にメンバーの名前を順番に呼んでいくパートがあるのですが、このとき、現メンバー5人の名前とともに2011年で脱退した元メンバーである早見あかりの名前が入ったバージョンで歌ったんです。この曲は早見あかり在籍時からのももクロの代表曲。しかもももクロは紅白出場を夢として掲げて活動していた。ももクロが初紅白を決めたときには、うれしさとともに「6人で出たかった」と泣いたメンバーもいたほど。そんな思いから初出場のももクロは、同曲の6人バージョンを歌うことで早見にメッセージを届けたというわけです。

■落選を悔しがるミュージシャンたち

このシーンで、若い歌手がそれくらいの思い入れを持って出ている番組だということがみんなにわかった。これは他の歌番組にはない力です。実は今の若い歌手はみんな出場を熱望しているのだと感じました。「若手のミュージシャンはみんな紅白にそっぽ向いてますからね」なんて言う音楽評論家がいますが、とんでもない。ももクロがあれだけ歓喜し、出場が有力視されたモーニング娘。は落選にみんな悔しがっている。乃木坂46のメンバーは「人生に残る悔しさ」とブログにつづり、どれだけみんな出たがっているか。

■日本中を熱狂させた矢沢永吉、震災年に初出場を決めた松任谷由実

そのきっかけは2009年、第60回の矢沢永吉だと僕は思っています。この年、矢沢永吉はスペシャルゲストとして記念すべき第60回を盛り上げました。しかも、楽屋口からステージに向かう姿を"中継"するという演出つき。実に堂々と出場した永ちゃんを見て、みんな「ロックはこうあるべき」や「紅白なんて......」と言うことのほうがかっこ悪いというか、純粋に、大みそかの夜に放送される音楽番組「紅白」の重要性、価値がわかったんじゃないでしょうか。

1年の最後の日に音楽を聴くというのは、特別なものだと思います。嫌なことなどいろいろあったとしても、数時間で切り替えることができる。その時間に、みんなでひとつになれる音楽番組がある。その価値を永ちゃんが教えてくれました。その後、松任谷由実も、震災のあった年の紅白では、その重要性を鑑み単独では初めてとなる出場を決意しています。12月31日の夜、という時間こそが、紅白の一番のキラーコンテンツと言えるでしょう。

(取材・文/大木信景@HEW

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寺坂直毅
1980年宮崎県生まれの放送作家。紅白歌合戦愛好家の他、デパート愛好家。
著書に、日本全国のデパートを取材した『胸騒ぎのデパート』(東京書籍)がある。
座右の銘は「冬来たりなば春遠からじ」。


寺坂直毅さんが語る「紅白の裏側」を動画で>>

・NHK出禁になった吉川晃司の紅白珍事件(00:01:59)


・紅白のあの全裸騒動は国会でも審議されていた......。 (00:01:29)


その他出演番組はコチラ>>

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