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――「夜明けのスキャット」などで知られる歌手・由紀さおりと、指導者としても輝かしい業績をもつ声楽家の姉・安田祥子。歌謡曲とクラシック、それぞれ違うジャンルを得意分野とするふたりは、童謡・唱歌という美しい日本の歌を伝えるべく、姉妹一緒に歌い続けて30年以上経つ。


実はお互い音楽の捉え方が同じ......。そこに気付くまでには、ときにぶつかり合うこともあった。由紀さおりに姉との長い歩みについて語ってもらった。


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2月8日(日)放送の「ウチくる!?」(フジテレビ系)にて、由紀さおりが出演

写真:トレンドニュース


■寄り添えるくらい大人になれた


姉とユニットを組んだきっかけは、1982年に開催した私のコンサートに姉がゲストで出演したこと。母から「知らない人にゲストできてもらうよりは、お姉ちゃんに出てもらったほうがいいんじゃない」と勧められて、一緒に童謡を歌うことになったんです。


私たちふたりが音楽に出会ったのは、子供の頃にいた"ひばり児童合唱団"。同じ先生に教わっていたからか、一緒に歌うことになったら、私も姉も「ここはこういう風に歌うと気持ちいい」みたいなことがピッタリ同じってことがわかったの。姉はクラシックで、私が歌謡ポップというジャンルの違いはあっても、いざ同じジャンルを歌うとなったとき、それぞれのベーシックな表現方法はひとつでした。ここに意見の違いはないってことに気付いたわけです。


若い頃は、姉とはぶつかり合いもありました。でも一緒に音楽をできるようになったのは、ずっと違う道をたどってきて、そのうえでお互い「自分はこの道で正しかったんだな」と思うことができたからこそ。そんな優しい時間の流れがあったから、ともに寄り添えるくらいふたりとも大人になれたということです。


■姉も自分も不安定な時代があった


「攻撃は最大の防御」という言葉があるけれど、自分を守るために「それは違う。私のほうが正しい」と相手を突く頃もありました。声楽家を目指す姉は、まず東京藝術大学に入って、そこでキャリアを積むっていうことは将来において大事な意味を持ってくるわけじゃないですか。でも私が選んだ歌謡ポップスという道には、なにやってもダメなものはダメだし、こうすればヒット曲に恵まれるという決まったコースがない。そういう違いっていうのは、やっぱりお互いを不安にさせますよね。


まだ私が由紀さおりとして活動する前、お姉ちゃんとふたりでCMソングを歌うお仕事をしたことがあったんです。当時の姉は、「自分はこういうジャンルの音楽をやってきていないから歌えない」ということをスパッと言ってしまうタイプだったんですけど、私は小さな頃から芸能活動みたいなことをしてきていたから、「お金をもらっている以上、要求されたことはやれるところまで努力しなくては」という考えでした。


だからその現場では姉妹ゲンカのようになってしまったんですけど、そのときの姉の気持ちも今となっては理解できるんです。若い頃は自分というものが確立できていないから不安なわけです。違うことをするのは怖いし、だから攻撃するっていうか。もちろん今の姉は全然違いますよ。いろんなジャンルの音楽を楽しめるし、どんどんチャレンジしていきたいっていうのが今の姉。でも、やっぱりお互いそういう不安定な時代っていうのはあったわけなんですよ。


■目指すものが違うからこそ無限の可能性


今はそれぞれの意見が食い違うことはがないとはいっても、すべての音楽が姉とわかりあえるわけではないです。だって私の目指す音楽は、姉と一緒に歌っている童謡・唱歌だけじゃないので。ふたりの道筋はそれぞれハッキリしてるわけですよ。でもあるジャンルだけは、つまりひばり児童合唱団の先生に習ったことが土台となる音楽に関しては、ふたりは寄り添うことができます。そこから、「こういうこともできるかな」、「ああいうこともできるかな」と。


お互い得意ジャンルが違っているので、「こういう歌い方でいいかしら?」とよく相談しあっています。私も姉も目指したものが違うじゃない? だから1+1が2じゃなくて、4や5になるような......。違うジャンルをたどってきたからこそ、幅は広がってるかな。レパートリーや歌い方に関しては、同じ音楽を目指したペアよりも幅が広いかもしれない。


実際にステージに立っているときは、姉とか妹とか関係ないですね。音楽的に理解しあえる部分の多い相手がたまたま姉妹だったという感じです。違う人生を歩んできた人ともう25年以上やっているわけだもの。お互いが相手を音楽的にリスペクトしている部分が根底にないといけませんよね。


姉への今の気持ちはなんだろうな......。大事なお姉ちゃんだし、一緒に歌ってきてもう30年近いですもんね。いつまでも元気で歌ってほしい、そんな気持ちです。


――それぞれのジャンルが違うからこそ、1+1の答えは無限大にまでなる。異なる道を歩むふたりが寄り添うことで生まれたものだからこそ、この姉妹の歌は優しいのかもしれない。


☆2月8日(日)放送の「ウチくる!?」(フジテレビ系)にて、由紀さおりが出演。
昨年芸能活動45週年を迎えた由紀のこれまでを振り返る。デビュー当時の映像に照れ笑い。「夜明けのスキャット」誕生秘話も。


・MC:中山秀征&中川翔子
・毎週日曜日12:00~13:00


◆由紀さおり(ゆき・さおり)
1948年11月13日生まれ、群馬県桐生市出身。小学生から高校生までひばり児童合唱団に所属して、童謡歌手として活躍。1969年に「夜明けのスキャット」で由紀さおりとしてデビュー。以後、女優やバラエティなど幅広く活動する。2012年に紫綬褒章受賞。
座右の銘は、家訓でもある和歌「憂きことのなほこの上に積もれかし限りある身の力ためさん」。


(取材・文/原田美紗@HEW)


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