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映画『Love Letter』『スワロウテイル』の岩井俊二監督が初の長編アニメーションに挑んだ『花とアリス殺人事件』が2月20日に全国で公開される。これを記念して、今月8日に新宿バルト9で映画『花とアリス』復活上映会が実施され、ゲストにスタジオジブリ代表取締役の鈴木敏夫を迎えたトークショーが行われた。その後、トークショーを終えた2人に、岩井監督と高畑勲監督との意外な接点、アニメへの思いなどについて語ってもらった。

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今月8日、映画『花とアリス』復活上映会トークショーに登壇した(左)岩井俊二監督と(右)鈴木敏夫氏。
続編となる『花とアリス殺人事件』が2月20日に全国公開。
写真:トレンドニュース


■『花とアリス』の続編を作った理由

--岩井監督が続編に取り組むのは珍しいように思うのですが、再び『花とアリス』に取り組もうと思った理由は?

岩井:「『花とアリス』というのはサザエさんみたいな話だと思っているんです。(本作に出演する2人の少女である)花がいて、アリスがいればなんでもいい、という。だから前作を作り終えてからも話が膨らんでしまって。気がついたら、(2人の中学時代の出会いを描く)エピソードワン的な構想が膨らんでしまった。不思議と自分の中では終われなかった作品という感じはありますね」

「ただ、新作の場合はキャラクター造詣をする上で作り込んでいかなきゃいけないんでしょうけど、続編の場合は作り込めばいいというものではなくて。作り上げたキャラクターともう一度やるというのは、それはそれで自然でやりやすいところもあった。そこは新しい発見だったかもしれないですね」

■ジブリ作品、続編制作の可能性は

--スタジオジブリでも一部の短編を除き、続編を制作してこなかったという歴史があると思うのですが、鈴木さんは続編に対してはどうお考えですか?

鈴木:「同じ事をやるのは面倒くさいんですよ。何か新鮮な気分になれないというかね。でも『花とアリス』は違うんだなと思いました。これはアニメでしかできない作品ですよね。今回のアニメ版は大人になった2人(鈴木杏、蒼井優)が演じる中学生ですから。実写では、急に若くなってくれといっても無理な話ですよね」

--鈴木さんはイベントなどで『風の谷のナウシカ』の続編の話に言及されたこともありますが。

鈴木:「あれは庵野(秀明)がやりたいと言っているだけですよ。いろいろあって、そんなにやりたいなら勝手にやってよと言っているんです。だって『エヴァンゲリオン』って巨神兵ですよね。(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの)完結編がまだできていないでしょ。だから僕は庵野に言ったことあるんですよ。『最後にナウシカを出したらどうだ。そしたら話が終わるよ』って。(『エヴァ』には)お父さんしか出てないでしょ。だからお母さんを出す必要があるんじゃないかって。庵野は何も言わなかったけど(笑)」

■高畑勲監督から教わったこと
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岩井監督と高畑勲監督とは遠い親戚にあたる
写真:トレンドニュース


--聞くところによると、岩井監督と高畑勲監督とは遠い親戚にあたるとのことで。就職活動の際に、高畑監督の元に訪ねて、映像業界について話を聞かせてもらったことがあったそうですね。

岩井:「血は直接つながっていないんですが、家系をたどっていくと親戚になるんです。高畑さんとは、それまでお会いしたことがなかったんですけど、仲のいい方のつてをたどって、お話を聞かせてもらえないですかとお願いしたんです。それで映画界のお話をさせていただきました」

--そのときはけっこう厳しいことを言われたとか。

岩井:「そうですね。今まで知らなかったようなことをいろいろと教わりました。ただ、最初にいろいろな映画界のルールを教えていただいたんで、そういうもんなんだと頭の中で思い込んだんでしょうね。当時はあまり意識していなかったんですが、最近になって振り返ると、そのとき聞いた話が大きかったなと思いますね。現場に向かう厳しさなどを教わったので、そのことはすごく感謝しています」

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岩井監督と高畑勲監督との再会の思い出を語る、鈴木敏夫氏
写真:トレンドニュース


鈴木:「今の話の続きで言うとね。その後、岩井さんと知り合って。ジブリに遊びに来てもらったんですよ。そしたら高畑さんがいてね。高畑さんと再会というときに、岩井さんがこれまでになく緊張していたんですよね。それを覚えている。高畑さんはその後、岩井さんの作品をちゃんと見たんですが、自分の不明を恥じる、みたいなことを言っていましたよ。『リリイ・シュシュのすべて』を高畑さんは褒めていました。僕もあれは好きだった。」

岩井:「ちょうど『リリイ・シュシュのすべて』の頃に高畑さんからハガキをいただいたんですよ。あれは感動しましたね」

--鈴木さんは、岩井さんがアニメに向いていると思ったそうですが。

鈴木:「それは岩井さんがコンテを描くからですよ。コンテを描く人はアニメに向いているという感じがしているんですね。だからアニメをやってもらいたいなと思ったわけですよ。だけどやはり実写も見たいですよね。岩井さんには大作をやってほしいんですよ。例えば会津の子供たちで組織された白虎隊がいるでしょ。あれを岩井さんが作るとどうなるんだろうと。きっと今までの白虎隊と違う白虎隊になるだろうなと思うんですよ。『リリイ・シュシュのすべて』を見たときにそう思ったんですよ。それは見てみたいですね」

--またアニメをやってみたいとは思いますか?

岩井:「そうですね。若い頃から実写の映画をやってきて、気付けば実写で撮ることが当たり前になっていたように思うんですね。でも、アニメという表現方法を手に入れてみると、そこの景色に何が描き出せるんだろうと思うとワクワクしますね。この感覚は実写で長く忘れてきたものだなと思って。スタッフが1枚1枚じっくりと絵を描いてくれている姿を見ると、またこの人たちとやりたいなという気持ちがわき起こってきますね。まだ具体的なことがあるわけではないんですが、そのことを考えるとワクワクします。チャンスがあればやりたいですね」

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次回アニメーション作品の制作に意欲を示す岩井監督
写真:トレンドニュース


☆映画『Love Letter』や東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」の作詞など、多彩な分野で活躍する岩井俊二が2004年に原作・脚本・監督を務めた映画『花とアリス』の前日譚(たん)となる『花とアリス殺人事件』が2月20日より全国ロードショー。同作は岩井監督にとっては初の長編アニメーションとなり、中学時代の"花"と"アリス"という2人の少女の出会いのエピソードを完全オリジナルストーリーで描き出す。


岩井俊二(いわい・しゅんじ)
1963年1月24日宮城県仙台市出身。1988年よりドラマやミュージックビデオ、CFなど、多方面の映像世界で活動を続け、1995年に『Love Letter』で映画監督デビュー後、数々の作品を発表。代表作は『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『ヴァンパイア』など多数。
オフィシャルサイト「岩井俊二映画祭」>>
◆座右の銘は「目からうろこが落ちる」

鈴木敏夫(すずき・としお)
1948年愛知県名古屋市出身。徳間書店に入社後、雑誌『アニメージュ』編集長を務めるかたわら、『風の谷のナウシカ』『火垂るの墓』『となりのトトロ』などの高畑勲・宮崎駿作品の製作に参加。1985年にはスタジオジブリの設立に参加、89年からスタジオジブリの専従になり、『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』などのプロデュースを手がける。
◆座右の銘は「不易流行」

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