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映画『Love Letter』『スワロウテイル』の岩井俊二監督が初の長編アニメーションに挑んだ『花とアリス殺人事件』が全国公開中となっている。これを記念して、一般投票により選ばれた映画『スワロウテイル』の復活上映会が新宿バルト9で開催され、ゲストに同作の音楽を担当した小林武史を迎えたトークショーが行われた。その後、トークショーを終えた2人に、大ヒットを飛ばしたYEN TOWN BANDの音楽、お互いのコラボレーションにおける相性などについて語ってもらった。

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映画『花とアリス』(2004)続編となる『花とアリス殺人事件』が全国公開中。
共演作となる映画『スワロウテイル』上映会トークショーに登壇した(左)岩井俊二監督と(右)音楽家・小林武史氏。
写真:トレンドニュース


■小林さんのチャレンジ精神はお手本になる

--岩井監督は今回、初のアニメ作品にチャレンジしたわけですが、常に新しいことにチャレンジしているという意味ではお二人とも共通する資質をお持ちだと思うのですが。

岩井「やはり小林さんのチャレンジ精神というのは刺激になりますよね。普通だと落ち着いて好きなことだけやればいいわけじゃないですか。でもそうはならない。小林さんがいるから自分も大丈夫かなというような、すごくいいお手本だという感じがします」

小林「もちろんこれ1本でいくんだという人もいるけれど、岩井君はいくつかの方向性を持ってものごとを追い詰めていくような、そういう物作りが好きなんだろうなと思う。自分が飽きないようにというのもあるだろうし、(物作りの)初期衝動を維持するという意味もあるだろう。そういう意味では最新作『花とアリス殺人事件』で、変わらずにチャレンジしている感じがうれしくもありましたけどね」

■YEN TOWN BANDはヒットすると信じていた

--近年では、映画の曲がヒットチャートで1位を記録することはなかなかないことだと思います。しかし、『スワロウテイル』劇中に登場する架空のバンド「YEN TOWN BAND」による主題歌「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」は街でもよく流れていましたし、まさに社会現象化だったともいえます。このヒットは予感していましたか?

小林「まずは僕がヒットすると信じていましたからね。あれだって最初から鳴り物入りで売り出されたわけではない。当時のヒットチャートで初登場40位くらいだったんですよ。でもそれからラジオなんかでもたくさん流れるようになって。どんどんチャートを上がっていった。結局、映画公開と同時くらいにようやくシングルとアルバムが1位になった感じでしたね」

岩井「あのときはとうとう1位になったな、という感じがありましたね」

--岩井さんはYEN TOWN BANDの音楽を初めて聴いたときはどう思いましたか?

岩井「アルバムとしてまとめて聴いたんだと思いますが、全体にすごく渇いた音楽性があるなと感じましたね。主題歌の「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」は歌詞を持ち回りで書いたんです。僕が書いた歌詞をCHARAにまわして、それから小林さんにまわして。プロはこうやって仕上げるんだなと思いながら完成させた記憶があります」

--フランク・シナトラの『マイウェイ』もカバーではなく、本人の曲を使うなど、音楽にもこだわりがあったと思うのですが。

小林「岩井君は覚えているか分からないけど、あれはシナトラじゃないとだめだと言ったんです。シナトラに似せたダミーじゃだめだと。でも大変なことだったね。(曲を使用するのに)お金もすごくかかったし」

--シナトラの曲を使用する資金は小林さんが出したと聞きましたが。

小林「そう。最終的には僕が面倒を見るからと言って出しました。その代わり、サントラの権利はもらいました。最初からサントラはいけると思っていたから、シナトラはいいよと言い続けてきたんですよね。当時はいったいお金がいくらかかるのかということにも、まったく頓着していなかった」

岩井「バンドの曲だけでなく、生オーケストラも使いましたからね。それだけで倍はかかります。『スワロウテイル』はもともとそんなに予算がある映画ではなかった。それなのに何であそこまでできたのか、いまだに分からない(笑)。河井(真也)さんというプロデューサーがいてくれて、あり得ないことをあり得るようにしてくれるプロデューサーさんだったということもあると思います」

■小林さんに『花とアリス』はお願いしづらい(笑)

--小林さんは『花とアリス』をどう見ていました?

小林「岩井君がより女の子の世界にいったなという感じがしましたね。よく言われる少女マンガ的な世界というか。ただ岩井俊二には初期の頃からノイズ感というようなものがあるから。どちらかというと今回の方が、お話を組み立てている感じがした。実写じゃなくて、アニメで表現するというのはこういうことかと。そこから生み出されるクリエイティブな魂がストンと残るんだよね。このアニメは実際の演技も取り入れているから、主人公2人の存在感が際立っている。2人の頑張りがほほ笑ましくもある。いい仕事をしたなと思いますよ」

--2人のコンビ作というと、岩井さんがメガホンをとった作品、『スワロウテイル』や『リリイ・シュシュのすべて』などはとんがった方向性が印象的でしたが、逆に岩井さんと小林さんがプロデュースを担当した『ハルフウェイ』のような、『花とアリス』的な作品もありました。その振れ幅が面白いなと思うのですが。

小林「僕もマイラバ(MY LITTLE LOVER)でしたからね(笑)。女性のかわいらしさというものは、そういうところを通して得意だったのかもしれません」

岩井「ただ小林さんにはなかなか『花とアリス』はお願いしづらいですよね」

小林「してくれりゃいいのに(笑)」

岩井「だから本当は『ハルフウェイ』も頼みづらかった。2人ともがたいが大きいですから(笑)。なんか小林さんとやるなら、『スワロウテイル』とか、『リリイ・シュシュのすべて』のようなタフな映画というか。大きなステージでやれるもの、というものがあるのかもしれないですね」

--そういう意味では2人で組む作品はある程度選んでいる?

岩井「選んでいると思いますね」

小林「もちろんわれわれには繊細な部分もあるけれど、やはりがたいがでかいんで(笑)、ちょっとはみ出し気味になるんだよね。お菓子みたいに包まれているものも面白いけれど、一方で途方もないことを考える岩井俊二というのも面白い。そういうところがあるから、キャッチボールをする楽しさというのがある。特に『スワロウテイル』のやりとりは忘れられないくらいの高揚感があったからなぁ。あの頃は岩井俊二が登場したという感覚があった。それは世間的にもそうだし、僕の中でもものすごい影響力があった。それはいまだに残っているから、幻じゃなかったんだとは思うけど。それくらいにひとつの始まりを作ることができた感じがしたもんね」

☆映画『Love Letter』や東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」の作詞など、多彩な分野で活躍する岩井俊二が2004年に原作・脚本・監督を務めた映画『花とアリス』の前日譚(だん)となる『花とアリス殺人事件』が2月20日より全国にて公開中。同作は岩井監督にとっては初の長編アニメーションとなり、中学時代の"花"と"アリス"という2人の少女の出会いのエピソードを完全オリジナルストーリーで描き出す。

岩井俊二(いわい・しゅんじ)
1963年1月24日宮城県仙台市出身。1988年よりドラマやミュージックビデオ、CF等、多方面の映像世界で活動を続け、1995年に『Love Letter』で映画監督デビュー後、数々の作品を発表。代表作は『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『ヴァンパイア』など多数。
オフィシャルサイト「岩井俊二映画祭」>>
◆座右の銘は「目からうろこが落ちる」

小林武史(こばやし・たけし)
1959年6月7日山形県新庄市出身。音楽プロデューサー、キ―ボーディスト。Mr.Children、MY LITTLE LOVER、レミオロメン、Salyuなど数多くのアーティストのプロデュースを手がけ、J-POP屈指のヒットメーカーとして活躍。2010 年の映画『BANDAGE バンデイジ』では監督も務めるなど、マルチに活動している。
◆座右の銘は「流れる水のごとく」

(取材・文/壬生智裕)

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