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ボサノバ風味のアレンジをほどこしたアルバム『Parallel World II KUBOSSA』を経て、3年ぶりのオリジナル・アルバム『L.O.K』をリリースした久保田利伸。前作『Gold Skool』はデビュー25周年記念でもあり、「久保田の素」をテーマに集大成的な色合いが強かったが、「L.O.K = Lots Of Kisses」と題した今作は"今の久保田"がここにいることへの感謝を捧(ささ)げたアルバムに仕上がったという。

R&Bをこよなく愛し、日本独自のR&Bシーンを築き牽(けん)引してきた久保田。デビューから四半世紀すぎた今なお第一線で活躍し、人生を謳歌(おうか)し続ける彼の考えるエンターテインメントとは?

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久保田利伸、3年ぶりのオリジナル・アルバム『L.O.K』を3月18日(水)にリリース
写真:トレンドニュース


■最新作『L.O.K』に込めた思い
「アルバムを作る前に考えていたのは、自分がこうして長く音楽を続けて来られたこと、いろいろな人たちと出会ったこと、そういうことに対する"感謝"の気持ちを込めたいなっていうことでした。なので、わりと今回は"真摯(しんし)"な気持ちで作り始めたんですけど、段々肩が凝ってきた(笑)。感謝の気持ちを示すにしても、あまり気負わず楽しまなきゃダメなんじゃないかなって思うようになっていったんですよね。自分が人生を謳歌(おうか)しているっていうことを、音楽で示すことが自分なりの感謝表明だろうと。

アルバム・タイトルの『L.O.K』は、『lots of kisses』の略です。このKissって、例えば恋人にするようなキスだけを指すわけじゃなくて。例えば、サッカー選手がゴールを決めた時、テニスプレーヤーがいいボレーを決めた時、天に向かって投げキッスをしますよね? あのイメージなんですよ。"この幸運をありがとう!"みたいな。海外では、手紙の最後に"lots of love"とか"lots of kisses"と書いたりするんですけど、そのニュアンスに近いですね」

■僕が「感謝」するもの
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「人生を謳歌(おうか)しているということを音楽で示すのが僕なりの感謝表明」
写真:トレンドニュース


「感謝という言葉を聞いて思い浮かぶものはたくさんあります。例えば、ニューヨークの厳しい街、そこにいたさまざまな文化の人たちへ、それから大好きな海老フライを食べたとき(笑)。自分は平和が好きなので、そういうことを長い歴史の中で訴えてきた人たち。ガンジーとかね。それから、僕が子供のころにたくさんのホームランを打ったヒーロー、王貞治選手。僕に夢を教えてくれた人です。そうやって挙げていくとキリがない」

――"厳しい街"にも感謝を?

「やっぱり、動けなくなるくらいキツイこととか、厳しい状況とか、僕くらいの年代になれば誰でも経験すると思うんですよ。長い時間迷ってしまったり、失敗してしまったりね。でも、体さえ傷つかなければ、そういうハードな状況がいろいろあって良かったなって思います。そのときは大変でも、後から思い起こせば感謝の気持ちが湧いてくるというか。特に30代後半からは、そう思えるようになりましたね。まあ、できればつらいことなんてない方がいいですけど(笑)」

■「ポンポンポロンポンポン」はR&B流のスキャット

――CM曲にもなった「Upside Down」は、"世界がひっくり返るような"出会いについて歌った曲ですが、久保田さんが最近体験した"世界がひっくり返るような出来事"は?

「僕はこれまでずっと、曲を作ったり歌をうまく歌ったりするためには、右脳を鍛えることが大事なんだと思ってきたんですね。右脳が感覚をつかさどり、左脳が論理的な思考をつかさどるのだとしたら、どうやって右脳を発達させたらいいのかなとか、そんなことばかり考えてました。ところが、あるとき人と話していたら"右脳も左脳も関係ないんだ"と。どちらかだけが感覚を司ってるとか、そんなことに科学的根拠はないって言われて......。だとしたら、僕がこれまで15年以上一生懸命考えてたことって一体何だったんだ? 右脳を鍛えるトレーニングなんてやってた意味はあったのか? って思い愕然(がくぜん)としました。これが最近の"Upside Down"な出来事です(笑)」

――「Bring me up!」もCM曲ですが、めちゃくちゃファンキーでシビレます。耳にこびりついて離れない、サビの「ポンポンポロンポンポン」っていうフレーズはどこでどう思いついたのですか?

「CM曲提供の依頼を受けたとき"英語混じりの歌詞にしてほしい"っていうリクエストがあったんですね。でも、せっかくお茶の間に流れる曲だったら親しみやすいほうがいい。とはいえ短いセンテンスの中に英語と日本語をチャンポンするのは、なんだかせせこましくてイヤだなって思ったんです。それで、何かないかなーと思って考えてたときに、"そうだ、ポンポンしちゃえばいいんだ"って(笑)。いわばR&Bやファンクミュージック流のスキャットですね」

■"日本のR&B"の魅力とは
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"日本のR&B"の魅力を語る久保田利伸
写真:トレンドニュース


「本場のR&Bと比べると、力強さやグルーヴのエッジという意味では、時として負けてしまいます。結局僕らは黒人じゃない。でも、もっと自由だし身軽だとも言えます。"R&Bはこういうサウンドでなければならない"とか、"R&Bはこういう歌詞を歌わなければならない"みたいな、いわゆるマナーに忠実じゃなくてもいいし、さまざまなジャンルを自由にブレンドしても許される。それは、僕らが日本人だからなんですよ。そういう何でもありの自由さがあったからこそ、のびのびと発展していった。そこが面白いところですね」

――久保田さんの考えるエンターテインメントとは?

「僕はものを考えるときに、動物と人間を比べることが多いんです。"人間ていうのは悪いことばかりする生き物だなあ、それに比べて動物はピュアで本能的だな"って。でも、ことエンターテインメントに関しては。動物にはできない人間だけの文化ですよね。踊りとか、宗教行事とか、スポーツや音楽もそう。1000年前の人たちもきっと、エンターテインメントを必要としていたのだろうし、もしエンターテインメントが必要ない、エンターテインメントができない環境があったら、大変なことになってしまうね」

――エンターテインメントを続けていられる間は、人は人らしく生きられるっていうことですね。

「そうですそうです! 最後にイイ話しちゃいましたね(笑)」


今なお日本のR&Bをアップデートし続けている久保田利伸。4月から始まるファン待望のツアーも、やりたいことが多くていろいろ悩み中とのこと。ただ、ボサノバ中心のアコースティックな内容だった前回のツアーを踏まえ、「今回はファンキー、ファンキーでいきますよ!」と教えてくれた。
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久保田利伸、3年ぶりのオリジナル・アルバム『L.O.K』を3月18日(水)にリリース
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◆ 久保田利伸(くぼたとしのぶ)
静岡市清水区出身。1986年、シングル「失意のダウンタウン」でメジャー・デビュー。1988年、アルバム「Such A Funky Thang!」がミリオンセラーに。その後も音楽制作のみならず、ドラマや映画主題歌、CM音楽、スポーツ祭典におけるテーマ曲、アニメソングなど、多くのメディアへ楽曲提供するなど、多岐にわたって第一線で活躍し続けている。座右の銘は、「常にフェアであること」

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(取材・文/黒田隆憲@HEW、撮影/蔦野 裕)

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