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胸をかきむしるようなディストーションギターと、ダンサブルなエレクトロビート。そうした異なる要素を融合させた、ユニークなサウンドで注目を集めているのがスリーピース・ロックバンドThe Flickersだ。絶望の中で一筋の光を求めるような、安島裕輔(ヴォーカル、ギター&シンセ)による歌詞の世界も印象的で、甘いウィスパーヴォイスと凶暴なシャウトを行き来するヴォーカルスタイルとともに、強烈なインパクトを放っている。
「毎回、遺書のような気持ちで曲を書いている」と語る安島が、自らの音楽に込める思いとは? ファースト・アルバム『UNDERGROUND POP』(4月15日リリース)を完成させた彼らにロックンロールへの熱い思いを語ってもらった。

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The Flickers 左から堀内祥太郎(B)、安島裕輔(Vo,G,Syn)、本吉"Nico"弘樹(Dr)


The Flickers「nova」


■あくまでポップなものをつくっている

――80年代ニューウェーヴや90年代ポストロック、ゼロ年代ロックンロール・リヴァイヴァルからの影響を受けつつも、それを"現在進行形のロックンロール"として鳴らしているのがとても印象的です。

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The Flickers 左から堀内祥太郎(B)、安島裕輔(Vo,G,Syn)、本吉"Nico"弘樹(Dr)


安島:その辺のバランスは結構考えましたね。前衛的でありたいし、時代の中で新しいものでありたい。すごくオリジナリティがあって、世界で僕たちしか作れないものでありたい。そう思う一方で、普遍的なポップスをも目指したかったんです。

堀内:決して頭でっかちなものじゃなく、いつの時代に聴いても色あせないグッドミュージックというか。

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堀内祥太郎(B)


本吉:なので、「今世の中ではどういう音楽が鳴っているのか?」っていうことはいつも考えていますね。サウンドとしての面白みも積極的に取り入れていきたい。

安島:『UNDERGROUND POP』というアルバム名もそう。これは活動を始めた7年くらい前、自分でフライヤーやポスターを作っていたときに考えたキャッチコピー「揺れるアンダーグラウンド・ポップス」から取りました。

本吉:僕らは決してアンダーグラウンドな音楽をやっているとは思ってなくて、ポップなものをやっているつもりなんです。

安島:でも、聴く人によってはどちらにもとれるっていう。

■ロックするのは簡単だけどロールするのは難しい

――曲を作るときに大切にしていることは?

安島:フィクションじゃなくて、自分の人生や感情、魂を歌うことですね。ちゃんと自己表現できているかどうか。常に根本は、そういうものでありたいと思っています。

――夜明け前の暗闇で光を探しているような、そんな世界観が印象的です。

安島:性格はそんなに明るくないので(笑)。放っておいたら救いのない方へ行ってしまうんですけど、音を出す、クリエイトするということ自体はポジティブな行為だと思うし、曲を作るということが、自分にとって希望だったり、生きる意味だったりするのかなって思いますね。
でも、曲を作ることそのものが自分にとっての救いでもある一方、苦しみでもある(笑)。常に"昨日の自分"を越えていかなきゃならないと思っているし、そうやって連続して更新していく自分自身のベストを、毎回曲を作るたびに新鮮に感じていたい。なおかつ自分たちがこれまで積み重ねてきたことを、ちゃんと踏襲したサウンドにしたいと思っているんです。それっていうのは、簡単なことじゃない。ロックするのは簡単だけど、ロールするのは難しいってことですよね。

■受け入れられようが受け入られまいが、これが自分たちなんだ

――アルバムの冒頭を飾る「nova」はすでに解禁されていますが、これはどのように生まれた曲ですか?

安島:自分が一生懸命やっていたり、大切にしていたりするものほど、うまくいかなかったり壁に当たったりすることってあると思うんですよ。僕自身、音楽を続けていくことにすごく悩んでいた時期があって、ライブが思うようにいかずステージで泣いてしまったことがあるんです。そのときの気持ちを歌にしています。そうすることで、そのときの自分を肯定できたように思いますね。これが受け入れられようが受け入られまいが、これが自分たちなんだって言い切れる曲になりました。

――去年のメジャーデビューEPにも収録された「midnight express」は、今いる世界から飛び出していこうという、"終わり"と"始まり"を感じさせる曲ですね。

The Flickers「midnight express」


安島:この曲は、仲のよい音楽仲間が読んでいた沢木耕太郎の『深夜特急』にインスパイアされて書きました。その友人は、いっとき音楽ができなくなったことがあって、すごく苦しそうにしていた。お互い、よく悩みを語り合っていたんです。その彼が、「ここでうだうだしてるくらいなら、外国へ旅してくる」っていって、バックパックを背負って旅に出たことがあって。そんな彼に向けた曲なんですけど、アルバムの中でもっともポップで明るいものになりましたね。

――4月1日解禁の「love in the music」は、「私は気づいてしまった/私は空っぽなんだ 僕には何もないから/この音の中で ねぇ死ねるよ」という歌詞がとても強烈です。

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本吉"Nico"弘樹(Dr)


The Flickers「love in the music」


安島:アルバムの中では最後の方にできた曲で、一番難航した記憶があります。歌詞は最初に勢いで書いて、そのまんまっていう感じ。支離滅裂でも、文章が汚くても、自分の衝動と魂が詰まっていればいいやと思って作りました。

本吉:この曲のMV、実はワンテイクしか撮ってないんですよ。

堀内:そう。引き潮のときを狙って撮影しました。「早く(撮影を)終わらせないと潮が満ちてしまう」っていう、ギリギリ感を感じてもらえたらうれしいです(笑)。

■1曲1曲「これが最後」という気持ちでやりたい

――ところで、安島さんは毎回、遺書のような気持ちで曲を書いているとか。

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安島裕輔(Vo,G,Syn)


安島:はい。「love in the music」も、「これで終わりにしてやる!」っていう気持ちも、なくはないっていうか......。アルバム全体にそういう気持ちは漂っていますよね。

――ある意味、命を削るように音楽を作っている印象があります。何か安島さんがそういう音楽に出会って救われたというのがあるんですか?

安島:やっぱり、ジョイ・ディヴィジョン......(笑)。

――イアン・カーティス(ジョイ・ディヴィジョンのヴォーカリスト。バンド活動中に自殺)ですか......。それはちょっと心配ですね。

安島:遺書っていうとなんか暗くなっちゃいますけど(笑)、自分は人生を通してロックンロールでありたいし、芸術でありたいし、ひとつの映画や文学でありたいんです。毎日が全力投球だし、1曲1曲が「これが最後」っていう気持ちでやりたいってことなんですよね。そういう出発点って、とてもエゴイスティックに思われるかもしれないけど、でも「それだけでいい」とは決して思ってなくて。自分の気持ちを人と共有したいし、人に受け入れてもらえれば自分を愛せるかもしれない。きっと愛に焦がれているんでしょうね。

――「自分は誰ともつながってない」って感じている人は、おそらくたくさんいると思うし、そういう人たちがThe Flickers の音楽を聴いて、「自分は独りじゃない」って思えたらいいですよね。

安島:そうですね。ただ、僕みたいな人が世の中にたくさんいたら、それはそれでかわいそうっていうか......心配になりますね(笑)。

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◆The Flickers
安島裕輔(ヴォーカル、ギター&シンセ)、堀内祥太郎(ベース)、本吉"Nico"弘樹(ドラム)の3人からなる、スリーピースロックバンド。エレクトロの要素とガレージロックやパンクの要素を融合させた唯一無二のエレクトロパンクサウンドと魂をむき出しに痛いほど叫ぶボーカルで独特の世界観を表現し続け、"SUMMER SONIC"、"ROCK' IN JAPAN FES"、"COUNTDOWN JAPAN FES""RADIO CRAZY" などの大規模フェスへの出演を果たし、2014 年6 月にメジャーデビュー。4 月には彼らの人生と魂を注ぎ込んだ、The Flickersの本質とも言えるメジャーファーストアルバム" UNDERGROUND POP" をリリース。座右の銘は「ごはん」(安島)。

(取材・文/黒田隆憲@HEW
(写真:トレンドニュース)

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