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ももいろクローバーZ、水樹奈々、中川翔子......そうそうたるアーティストたちに数多くの詞や楽曲を提供するシンガーソングライター・しほり。1曲作ったごほうびにまた1曲作るというほど曲作りが大好きな彼女は、左耳に先天性の重度難聴を抱えながらも「これも神様のギフト」とひたすらにポジティブだ。

一昨年、昨年としほりが作曲を担当したももクロの楽曲がNHK紅白歌合戦で披露された。自身の大きな仕事のひとつになったというももクロ楽曲の作曲秘話、そして"神様と遊ぶ"作曲術とは? 音楽を愛し、そして音楽に愛されるしほりが明かしてくれた。

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(GYAO! トークバラエティ「ぶるぺん」出演 しほり)


■作曲の最短時間は5分

「私は生まれつき左耳が聞こえないんですけど、曲を作るうえでそれを気にしたことは全然ありません。かわりに右耳に絶対音感っていうギフトを神様が授けてくれて、だから音楽をこんなに楽しめるんだろうなって受け止めています。むしろ左耳が今聞こえるようになったら、うるさくて困っちゃうかも......!

曲を作っていて、音楽の神様とわーい! って遊んでいると感じられたなら、それはいい曲になるんです。これまで人に提供してきた曲は、五線譜に曲を書き付けているだけでワクワクしてきて、あーこの曲いいな―って自分で感動できた曲だけ。自分でときめくことができないような曲だったら、そもそも形にしないんです。だから、なんとかひねりだすみたいなことはないですね。大体いつも1曲作るのにかかるのは1時間くらいかな? 最短でメロディができたのは、中川翔子さんの『つよがり』っていう曲。寝る前にふわっと曲が降りてきたので、布団の中でiPhoneに鼻歌を録音して、それから寝ました(笑)。えへへ。

詞を書くときは、作曲とは違って作詞ってある程度メロディっていう枠が決まっているじゃないですか。だから作業はパズルを解くようなイメージかな? 枠のなかに自分の伝えたいメッセージとアーティストさんのイメージなんかを、いかに言葉遊びをしながらピシッと詰め込めるかという感覚ですね。これまで自分で書いて気に入っているフレーズは、『ユニバーサル・バニー』(劇場版アニメ『マクロスF 虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~』イメージソング)の『テンシンすぎてランマン1000%』って部分かな。このときはコンペで歌詞をほかの作曲家さんと競っていたんですけど、思いついた瞬間『勝った!』と思いました。ただ、はじめは『1000%』のところを300%とか500%とかその程度の数字にしてたんです。それを作曲担当で、私が憧れている菅野よう子さんが1000%に直してくれて、やっぱり私とはスケールが全然違う! と(笑)。あのときは本当にいろいろ勉強になったなぁ」

■ももクロ楽曲はプレッシャーで知恵熱が......

「水樹奈々さんに何曲か提供していることもあって、アニメファンの方の間ではありがたいことに『しほり』の名前をちょこちょこ知っていただけてるんですけど、アイドル界では私ってまだまだ無名なので......。だから『ももクロの新曲は、しほりが作曲』って発表されたときは、ファンの方に満足してもらえるかな......って初めてプレッシャーで熱出ちゃいました(笑)。『青春賦』なんてまさか全国ロードショーの映画(ももクロ主演の『幕が上がる』)の主題歌とは思ってなかったんで、びっくりして39度の熱がなんと2日間も......。

初めてももクロさんの作曲を担当したのは、『GOUNN』。インド音楽っぽい雰囲気の曲ですが、実はコンペの最初のテーマは、"和風"だったんです。候補5曲に残ったときの打ち合わせで初めて『和がテーマって言ってたんですけど、本当はインドというか、仏教がテーマなんです』って伝えられて、『えーっ!?』ってなって(笑)。この曲に関してはプロデューサーさんとマネジャーさんが完全にビジュアル先行で企画していたみたいで、『こういうイメージでお願いします』ってたくさん仏像の写真を見せられました。その場では『やります!』って答えましたけど、家に帰ってから『どうしよー!?』って崩れ落ちた思い出があります(笑)。だから『GOUNN』は攻めた曲って言われてますけど、実はコンペの段階ではもっと和ポップみたいなわちゃわちゃした、これまでのももクロちゃんっぽい曲を出してたんですよ。

次の『My Dear Fellow』は、『GOUNN』とは打って変わって超王道のど真ん中アイドルポップって感じでしょう。田中将大投手の入場曲になるということで、『マー君の好きな王道っぽい感じで』というオーダーでした。なるほどなと思ったのは、バッターボックスでちょうどいいテンポ感っていうのがあるそうなんですよ。ゆっくりだと、やるぞ! って気持ちをそがれちゃうし、早すぎても心拍数が上がり過ぎちゃうし......と。そのちょうどいいテンポを探りました。

この2曲は、2013年、2014年NHK紅白歌合戦でももクロちゃんが歌ってくれました。自分の関わった曲が紅白にいったのは初めてだったんで、どこに私の名前が出るんだー!? と画面にかじりつきでスタンバってました。言葉には言い表せない気持ちでしたね。

そして、一番最近作曲を担当したのが『青春賦』。これは映画のクライマックスで流れることを伝えられて、『学校の音楽の教科書に載るような、卒業をテーマにした王道のバラードを作ってほしい』という依頼でした。......なんだかこう見ていくと、ももクロに提供した3曲だけでも結構振れ幅大きいですね」

■「青春賦」は自分の芯に近い曲

「これまで関わってきた曲の中で一番思い入れが深い曲となったら、やっぱり『青春賦』がいろいろ感慨深いかな。私ってこれまですごく曲調が難解な変化球的な曲か、それか逆にすごく王道ポップな曲を採用されることが多かったんです。だから自分でシンガーソングライターとして弾き語りしてるときに歌うようなバラードの曲ってほとんど採用されたことがなくて......。インパクトの強いバーン! って曲だけじゃなくて、私の芯に近いバラードでこれだけたくさんの人に喜んでもらえたっていうのがうれしかったです。

『青春賦』のことを、新たな卒業ソングみたいに期待してくださる方もいて。そうなったら最高ですよね。自分の曲が毎年春にいろんな学校で、なんて......。今年は卒業式のBGMに使われたって話はうかがったんですけど、合唱曲に採用されるにはちょっとギリギリすぎたかな? だから来年に期待です(笑)。

いつか曲を提供してみたいなって考えている相手は、嵐さんです。嵐さんの曲ってものすごくハイクオリティで、作家仲間も皆『本当にすごいよね』って感心しています。難しいメロディをポップに聞かせるさじ加減がものすごくうまくて、でもそれには相当スキルがいるから、自分にはもっと勉強が必要だなと感じているところです。

あと嵐さんの曲って、日本全国のたくさんの人が聞くじゃないですか。だから嵐さんに提供することで、自分の曲をより多くの人に聞いてもらって、歌ってもらって、何年もたった時に『あの思い出の曲』みたいに皆が挙げてくれたら本当に幸せだな。『青春賦』に卒業ソングになってほしいっていうのもそうですけど、曲をずっと残したいっていうのが願いとしてあるんです。自分が死んでもずっとずっと残るような曲を作るというのは、ひとつの大きな夢ですね。だから『青春賦』でその夢が実現すれば、すっごくうれしいな」

もっともっと音楽を楽しみたい! もっともっと音楽の神様と遊びたい! というキラキラした願いが、しほりの原動力。満面の笑みを浮かべながら音楽の楽しさについて熱弁する彼女を見ていると、こちらまで幸せな気持ちになってしまう。しほりの話に相槌(あいづち)を打ちながら、ふと、音楽の神様がいるならば、この人はその子供かもしれないなと感じた。
☆主題歌「青春賦」の作曲をしほりが手がけた、ももいろクローバーZ主演映画『幕が上がる』が全国ロードショー中。

◆しほり
9月4日生まれ、愛知県出身。2007年に"瀬名"の名義でデビュー(2011年に本名である"しほり"に名義を統一)。作詞・作曲家だけでなくシンガーソングライターとしても活躍しており、ゼクシィの「パパパパーンの歌」の歌唱でも知られる。
座右の銘は、自身のオリジナル曲「大丈夫」の歌詞にもある「全ては見方次第で味方にできる」。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
>> しほりが出演する、GYAO配信番組「ぶるぺん」

ももクロ映画の主題歌誕生の裏話 ぶるぺん(00:01:52)>>


人気作曲家の作曲時間にスタジオ騒然! ぶるぺん(00:02:49)>>


その他の出演番組>>

・人気作曲家の意外過ぎる作曲方法
・作曲家から見た人気歌手たちの印象は?
・あのCMソング歌手は美人作曲家だった

(取材・文/原田美紗@HEW
(写真:トレンドニュース)

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