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 吉田松陰の妹、文(井上真央)の視線から幕末の動乱の時代を描き出した2015年大河ドラマ「花燃ゆ」がNHK総合日曜8時から放送中だ。視聴率低迷がニュースをにぎわすなど、逆風にさらされている感もある同ドラマだが、一方、視聴者の口コミなどを見てみると、同ドラマを支持する声も少なくない。そこで同ドラマの土屋勝裕チーフ・プロデューサーに大河ドラマに対する思い、視聴率をめぐる世間の声などについて率直な意見を聞いた。

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2015年大河ドラマ「花燃ゆ」を手がける土屋勝裕チーフ・プロデューサー
写真:トレンドニュース


■大河ドラマを放送する理由

--いよいよ第2ステージ「激動の幕末編」がはじまるとのことですが、これからの展開について教えてください。

26日放送の17回で吉田松陰が処刑されてしまうこととなり、新たな展開を迎えます。その前に総集編(4月29日)が放送されますから、今まで見ていなかった方にもぜひご覧いただきたいと思います。そして5月3日から始まる第2ステージからはついに坂本龍馬も登場します。ますます見逃せない展開となっていきます。

--最近は視聴率の上下がニュースをにぎわせることの多い「花燃ゆ」ですが、実際にドラマを見た人の口コミなどを見ると、ドラマを高く評価する声も決して少なくはありません。土屋チーフ・プロデューサーはこの温度差、現状をどうご覧になっていますか?

 吉田松陰の妹という、無名の人物が主人公であることが最大のハードルになっているのかなとは感じています。誰もが知っている人物ではないため、どういう風に見ていいのか分からず、取っつきにくいのかな、と。しかし、実際に見ていただければこういう人物なんだと納得して楽しんでいただけるんじゃないかと思っています。

 彼女がひとりの女性として歩み出す前に、まずは松陰先生の妹であり、久坂玄瑞の妻であるというところから始まり、そして夫を失ってからは独り立ちしていくという人生を歩みます。それも彼女の人生の側面だと思うのですが、本当に大変なことが次々と起こって、いろんなことを乗り越えていく。彼女は我慢の人だと思うのですが。そんな彼女の人生は視聴者の共感を得やすい主人公なのではないかと思っています。

--ここ数年、好調を維持する朝ドラに対して、大河ドラマは厳しい戦いを強いられているように思うのですが、それでも大河ドラマを放送する意義があるのではないかと思うのですが。土屋さんが思う大河を放送する意義はどのように考えていますか?

1年間という、これだけ長い期間をかけて放送するドラマは他にはありません。そういう意味で言うと、日曜の8時に大河ドラマを放送することの責任を感じています。ですから、家族団らんしながら見られるようなホームドラマにしたかった。間口を広げて、というのが今回の企画意図としてあります。家族や塾生、重臣たちなどたくさんの個性の違うキャラクターが登場します。松下村塾の塾生の中でも、この人は好きだな、この人の言っていることは分かるな、といったように見ていただける。また、今後、文(井上真央)は、毛利家の奥御殿に奥女中として入っていくことになりますが、そこでは女性の気持ちを大切にしたい。

やはりみんなで一緒に話題にできるような大河ドラマでなくてはいけない。と思っています。NHK紅白歌合戦もそうですが、皆さまの話題にしていただける。同じくそれこそが大河の存在意義だと思いますし、その役割は大きいと思います。
 
■大河ドラマに目を向けてもらうために

--歴史ドラマに関心がない若者、女性層も多いと思いますが、そういった層に訴求するために気をつけていることはありますか?

キャスティングは大事にしていますね。若手で人気のある俳優さんに出演していただくことはそうなんですが、もちろん大河ドラマですから、芝居がしっかりしていなくてはいけません。そういう方に出演してもらうようにしています。
ただ、難しいのは、そもそも歴史ものは見ないから、大河も見ないという声が多くあるということ。今回は、歴史を知らなくても、ひとりの女性のドラマとしても十分楽しめる作品にしようと心がけています。

■女性を主人公にする理由

--「篤姫」「江~姫たちの戦国~」「八重の桜」など、最近の大河ドラマは女性を主人公にすることが多くなりましたが、女性にスポットを当てたいという意図はあるのでしょうか?

幕末の歴史はすごく難しいのではないかと考えました。尊王攘夷(じょうい)といった言葉が飛び交う男たちの権力闘争は、家族で見るのは難しいのではないかと。もう少し家族で見られるものにするためにはどうしたらいいのか。もちろん大河ドラマなので、歴史的なことは失わないようにしなくてはいけません。そこで女性を主人公にすることで、仮に歴史を知らなくても、日常生活に近いところで共感して見ていただけるんじゃないかなと思ったんです。

--女性の目を通して歴史を捉え直すということもあるのでは?

幕末の時代は、切り口の違いによって、どちらが善なのか、どちらが悪なのかが分かりづらいところがあります。例えば新選組も、描き方によって悪になったり善になったりするわけです。しかし女性の目線から見ると、そういった歴史も一歩引いて見られるんじゃないかと思うんです。

やはり男たちは理想を語るものですが、現実に向き合うのは女性です。とにかく理想に燃えている男たちに対して、理想を語るのはいいけど、じゃあ現実の生活、ご飯はどうするのと(笑)。女性を前に出すことによって、理想と現実と両方に立脚できるんじゃないかと。やはり人間の生きていく上でのリアリティーってそういうところにあるんだと思うんです。現在は少子高齢化や災害、経済的な問題があり、否が応でも現実に向き合わなければいけないような空気がありますが、かといって理想も持ち続けなければならないと思う。そういったジレンマがある時代なのではないでしょうか。吉田松陰のように「志は何か」と理想に燃える一方で、小田村伊之助のように「理想を求めるためにはまず現実を見なくては」という意見もあり、そしてそんな2人の間で文が歴史を目撃していく。今はそういう時代だと思うんです。


☆5月3日放送 第18回「龍馬!登場」より物語は動乱の時代へ! 4月29日(水・祝)に大河ドラマ「花燃ゆ」第1回から第17回までの総集編を、前編(午前8時15分~9時)・後編(午前9時05分~9時50分)に分けて放送。

(取材・文/壬生智裕)


土屋勝裕
1970年生まれ。1994年にNHK入局。連続テレビ小説「ひまわり」で初演出。大河ドラマ「利家とまつ」、連続テレビ小説「天花」、土曜ドラマ「氷壁」などで演出を担当。特集ドラマ 「楽園のつくりかた」で2003年の文化庁芸術祭優秀賞を受賞。主なプロデュース作品として特集ドラマ「真珠湾からの帰還」、「家で死ぬということ」、よる★ドラ「恋するハエ女」、土曜 ドラマ「太陽の罠」などがある。
座右の銘「至誠にして動かざるは、いまだこれ有らざるなり」

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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