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実際にあった殺人事件を基に映画化、死刑囚とそれを影で操る男という衝撃的な内容で話題となった『凶悪』。2013年度のこの作品は、日本アカデミー賞の優秀監督賞&優秀作品賞、新藤兼人賞 金賞、報知映画賞 監督賞、日本映画批評家大賞 新人監督賞など数多くの賞に輝き、そして監督・共同脚本の白石和彌を一躍注目の存在に押し上げた。そんな白石監督が満を持して発表する今回の作品は、配信によるオリジナルドラマで、なんと舞台は女子中学校のトイレだというのだが!? 

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監督は衝撃作「凶悪」の鬼才・白石和彌氏
(C)2015女子トイレ清掃組合


「女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。」プロモーション映像 >>


■『凶悪』のあとに「トイレ」を選んだ理由とは?

――この新作『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』の、そもそもの出発点はどこだったんですか?

『凶悪』を撮る以前から劇作家の根本宗子(本作の脚本を担当)さんと話していて、「ショートコンテンツで何かできないか?」という企画が身を結んだものです。実は昨年にマンガ原作の映画を撮る予定だったのですが、さまざまな事情で流れてしまって......。他にもいろいろと準備を進めてはいますが、その中でこれが浮上してきたんです。

――カメラがトイレからほぼ一歩も出ない、という1話15分の異色のワンシチュエーション・ドラマですが......。

 空間が限定されることによって、逆に見えてくるものもあるだろう、と思います。今回は人間の感情をより掘り下げていかなければならない、と感じていまして、そういう意味では「広がり」ではなく「深度」を求めていると言えるのかもしれません。女子トイレという、男性の自分には未知の空間が舞台ですが(笑)、そもそもの発想が根本さんなので、彼女の劇作家としての感覚に乗っかってやっています。

――主演にはロックバンド「神聖かまってちゃん」のドラマー、みさこさんが起用され、劇中でもそのドラムスの腕前を披露しています。

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ロックバンド「神聖かまってちゃん」ドラマーのみさこを主演に抜擢(ばってき)
(C)2015女子トイレ清掃組合


 彼女の存在あっての企画です。物語を語る上で、「核」になるものが欲しかった。そこでドラムスをたたけるみさこさんが活きてくる。ドラムスって非常に男性的なイメージの楽器だと思うんですよね。女の子ばかりの空間にドラムスを入れることで、調和がとれていくんじゃないか、と。

――女子中学生役の女の子は全員、本当の中学生を使っていますね。

 もう少し上の世代、実年齢が高校生の俳優だと、女優としてスターになりかけている人もいるので、見つけやすいし、広げやすいとは思います。でも、それよりもナマっぽさ、リアルな感覚を重視しました。オーディションで実際の中学生を選んだのですが、会える限りの女の子に会わせてもらいましたよ。演技が初めての子もいましたが、監督の仕事は「その俳優の演技から最高の瞬間を切り取ること」なので、それに関してはベテランも新人も変わりはないと思っています。

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120人以上のオーディションから選ばれた、個性的な現役中学生アイドル
(C)2015女子トイレ清掃組合


■配信というメディアから新しい才能に出てきてほしい

――今回は、配信というメディアを選ばれましたが......。

 大きく広がってほしいメディアだと思いますね。僕は今の日本映画界に必要なのは「ゆりかご」になる部分だと思っているんです。僕の師匠である若松孝二監督の時代にはピンク映画(新東宝、大蔵映画などが製作の低予算の成人映画)があったし、80~90年代にはVシネマ(劇場公開を前提にしないビデオ・オリジナルの作品。主としてレンタル向けに製作された)がありました。それに参加することで、作家、新人監督、俳優、スタッフが育てられてきたんです(ピンク映画出身の監督には若松監督以外にも、周防正行、井筒和幸、滝田洋二郎などがいる。Vシネマで有名になった俳優は哀川翔、竹内力など)。
しかし2000年代に入ってから、それがなくなってしまった。最近はテレビの2時間ドラマも減ってきているので、若い人たちが映画やドラマを作れる環境がなくなってきているんですね。これでは新しい才能も生まれてこない。この配信というジャンルが、その隙間を埋めるものになってくれれば、と期待しているんです。

――監督ご自身は、新しいメディアに何を期待されますか?

 今の日本映画界の現状を見てみると、まず名のある俳優をキャスティングしないと企画が通りにくい、ということがあります。そんな中では、監督も新しいことに挑戦することができないんですね。さっきも言った「ゆりかご」の中で実験をすることが可能になれば、そういう実験的な作品と、ちゃんと正面から勝負をした作品とでメリハリを付けることができます。だからこの配信というコンテンツはぜひ成功させたいです。配信という「場」を与えられたことで、次々と作り手が出てきて、俳優からも新しい才能が出てくる。そうしたモデルケースを作らなきゃいけない、と思っています。


☆ドラマ『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』

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ドラマ『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』
(C)2015女子トイレ清掃組合


舞台は栃木県のとある女子中学校。ドラマー志望だが、トラウマから鏡を見ることができない地味な清掃員のれんげ(みさこ)がトイレを掃除していると、いつも女子中学生たちが入ってきてはガールズトークを始めてしまう。恋の話にささいな悩み、化粧やファッションについてなど話は果てしなく広がって......。やがて文化祭が近づくなか、トイレの一番奥にある謎の「開かずのトイレ」の秘密が明らかになるが......。

女子校のトイレからカメラがほぼ一歩も外に出ないという異色のコメディ。主演は「神聖かまってちゃん」のみさこ、オーディションで選ばれたモデルやアイドル、中学生ロッカーなど実際の中学生たちが出演。衝撃作『凶悪』以来、注目を集めている白石和彌が監督を務める。脚本は熱狂的なコアファンを有する、人気急上昇中のリアル女子演劇の注目株、根本宗子が担当。1話15分の全12話が5月20日からGYAO!にて無料配信開始。劇場用映画も予定されている。

プロフィール
白石 和彌(しらいし・かずや)
1974年生まれ。北海道旭川市出身。若松孝二監督に師事し、数々の映画で助監督等を務め、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で本格的に映画監督デビュー。2013年に監督した映画『凶悪』にて、新藤兼人賞金賞を受賞ほか、第5回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、第38回報知映画賞監督賞、第37回日本アカデミー賞優秀監督賞など、多数の賞を受賞。日本邦画界で次回作が待望される、今最も注目される監督の一人。
座右の銘:守りに入らない。捨て身で攻めて攻めまくる。

(取材・文/紀平照幸)

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女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。 第1話 呼び名が命 >>


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