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赤塚不二夫の代表作であり、ギャグマンガの金字塔として名高い「天才バカボン」の初の長編アニメ映画化作品映画「天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~」が5月23日より新宿バルト9ほかにて公開される。本作には、その悲しすぎる結末により伝説となった名作アニメ「フランダースの犬」のネロとパトラッシュが参戦。まさかのコラボレーションと、「自分たちを死に追いやった人間に対して強い憎しみを抱き、地獄からよみがえる」というあぜんとするような設定で話題を集めている同作。独自の解釈で、新たに生まれ変わった新生バカボンを手がけたのは、「秘密結社 鷹の爪」の生みの親にして、今やコメディーアニメ界で暴走を続けるFROGMAN。そこで今回はFROGMANに、本作が生まれた経緯、その創作の秘密について聞いた。

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「秘密結社 鷹の爪」の生みの親にして、今やコメディーアニメ界で暴走を続けるFROGMANさん
(C)赤塚不二夫 (C)NIPPON ANIMATION CO., LTD.
(C)天才バカヴォン製作委員会


■FROGMAN流の交渉方法

--「ルパン三世」、「ベルサイユのばら」など、FROGMANさんが手がけるパロディー作品は意表を突くものが多いですが、その中でも今回の「天才バカボン」と「フランダースの犬」とのコラボ作品は特に意表を突かれました。毎回どのようにして作品を選んでいるのでしょうか?

何をパロディーにしたら面白いか、プロデューサーと相談しながらやっています。僕がやりそうなことと、世間から面白いと思ってもらえそうなものの候補をあげて。じゃ、これでいけそうだと思ったら、一気にいっちゃうんです。

--パロディーをやると決まった時は、もちろん許諾が必要になると思うのですが、相手先とどのような交渉するのでしょうか?

僕らがお話をする時には、まず先にプロットを作ったり、場合によってはパイロット版を作ることもあります。そうすると、相手先も「そういう感じなのね」とご理解いただいて、「じゃ、いいでしょう」となりやすい。最近では、僕らがやってきたパロディー作品をご存じの方が多くなってきて、「あ、ついにうちにも来ましたか」と。意外と好意的に受け止めてもらえるようになってきましたね。

--最近でこそ認知されるようになったとはいえ、初期の頃はパロディーということを理解してもらうのも大変だったのではないかと思います。相手を怒らせないように説得する秘訣(ひけつ)などがあればぜひお聞きしたいのですが。

つきなみな言葉でいうなら愛があるかどうかですよね。きちんとその作品に向き合えるかどうかが、原作者、権利者の方に対しての一番の説得材料だと思っています。今回のネロとパトラッシュも、(自分を死に追いやった人間たちに対する強い憎しみを抱き、地獄からよみがえるという)設定だけを見ると、何てことをしやがるんだと思われるかもしれません。しかし、作品をご覧いただければ、ネロとパトラッシュが笑いの道具になっていないことが分かります。きちんと彼らなりに葛藤を乗り越えて、成長していく姿を描いているんです。相手を説得する秘訣(ひけつ)というならば、そこかなと思います。

--プロットやパイロット版をあらかじめ作って概要を説明し、相手の不安を取り除くことが秘訣(ひけつ)になるんですね。

僕らは広告会社をやっていて、いろいろな会社とコラボをやってきました。僕らプロの人間なら、台本を渡されてもそれを読み解くことはできますが、そうではない方に台本を渡しても「よく分からない」というのが本音だと思います。ですから、例えば「鷹の爪」で何かをやろうとする時には、その場で「(総統の声で)吉田君」「(吉田君の声で)なんですか」と、実際に声を出して読むようにしています。そうすると、「ああ、そういうことね。それは面白い」とすぐに理解してもらえる。

--FROGMANさんが声優をやっているというのも強みですね、

そこはひきょうなんですけどね(笑)。ですから、わざわざパイロット版を作らなくても、その場ですぐに分かってもらえることも多いですね。目の前でラジオドラマ的に演じてあげるだけでも、(企画成立の)ハードルがグッと下がっていく。やはり映画というものは完成しなければ、いいか悪いかが分からないものなので、どういうものに仕上がるのか不安だと思うんですよ。そういう意味では、僕らのようなプレゼンが、ある程度、皆さんの不安な部分を、少しでも取りのぞけるんじゃないかなと思っています。これは鉄板のプレゼンなんですよ。

■「天才バカヴォン」が生まれた理由

--ところでそもそもなぜこのような企画が生まれたのでしょうか?

今年は赤塚不二夫先生の生誕80周年ということで、フジオプロの方で何かやろうということになり。やるならFROGMANがいいんじゃないかということになったそうです。それで、お話をいただいた時に考えたのは、赤塚不二夫さんなら何をやるだろうか、みんなが驚くことは何だろうなということ。最初はエイリアンとかプレデターを登場させようかという案もありました。念のためコラボの可能性がないかどうかハリウッドに打診をしてみたんですが、アニメとのコラボはないと言われ、あっけなく撃沈されました(笑)。

--ハリウッドとのコラボの構想もあったと。

ただ、仮にコラボすることになったとしても、向こうは確認の作業などで時間がかかりますから。形になるまでに2~3年はかかるでしょうね。やはりそれは現実的じゃないだろうということであきらめました。そんな時にちょうど「フランダースの犬」が生誕40周年だということが分かり。コラボレーションできないかということで、今回のプロットを書き、実際に日本アニメーションに行って、社長さんの目の前でプレゼンをしました。快諾というわけではなかったですが、「まあ、いいんじゃないですか」という感じでオーケーをいただいたという感じですね。

■それでもパロディーをやる理由

--劇中では、ネットなどで匿名で批判する人をチクリとするシーンなどもありましたが、今の時代におけるパロディー作品のやりにくさというものはあるのでしょうか?

例えば、昔なら『雨に唄えば』という名作があって、そういった作品のパロディーができました。でも、最近は誰もが知っているような作品が少なくなっています。せいぜい『タイタニック』や『アバター』、最近でも『半沢直樹』あたりかもしれないですね。特にアニメの業界ではそうなんですが、萌(も)えアニメを夢中になって観ている人からすれば常識的なことであっても、そこの層から離れると誰も分からない。それでもそこのパイが大きければいいのですが、それはものすごく小さい。価値観の多様化という意味では、パロディーがしづらい時代になったかなという気はしています。

--FROGMANさんが、比較的古めの作品を取りあげることが多いのも、そのあたりが理由としてあるのでしょうか?

そうですね。昔はみんなが同じ方向を向いていたんで、やりやすかったんですけどね。最近の仕事でも「それは分かりづらいから」と言われ、却下されたことがありました。そう言われてもな、とは思ったのですが。

--やりづらい時代かもしれないですが、それでもパロディーをやるんだということですよね。

やはり僕はパロディーや風刺が好きですし、ものごとを逆から見ることによって、違うものが見えてくる。そういうのがすごく楽しいし、みんな好きなんだと思うんです。そういうものがやりづらくなってきている時代だからこそ、むしろパロディーをやることが大事なのかなと思っています。幸いなことに、われわれがパロディー作品をやることを皆さんが好意的に見てくださることが多くなってきたので、そういう意味ではやりやすくなっているのかなとは思いますけどね。

--作品を作る上で心がけていることはありますか?

思考がクリエーター的になりすぎないように、ということは心がけています。例えば、宮崎駿さんとか、スタジオジブリのような、きちんと時間をかけて作るようなエンターテインメント作品はあるべきだし、すばらしいものだと思っています。ただ、世の中に天才というものはそれほど多くはない。むしろ、これは当たるのかな、と不安になりながら作っている人の方が多いと思うんです。だからこそ、僕らはこだわりを捨てて、きちんとビジネスとして成立するものを作ろうと思っています。

僕が映画業界にいた時に、先輩から言われたことなんですが、大衆にこびるのか、それとも自分のクリエイティビティを誇示するのかといった議論があったんです。その時、先輩は、自分が作りたいものと、世の中が見たいもの、その両方の頂点を結んだものを作ればいい。それに何の問題があるんだということになって、その議論は終わっちゃった。

意外にそれができていない人が多いんですけど、それは全然別物じゃないんです。だから僕が所属しているDLEのように、クリエーティブをしながら、ビジネスも進めていく会社が、今のエンタメ業界にいい影響を与えられればいいなと思っているんです。だからといって、日本にDLEみたいな会社ばかりになっても困りますし、日本の映像文化はチープな方向に走ってしまうんで、それは嫌なんですけどね(笑)。僕はクリエイティビティとビジネスを両輪で意識できるクリエーターでありたい。だからフリーにならずに、サラリーマンを選んでいるんです。

(取材・文/壬生智裕)

FROGMAN
映像作家。「秘密結社 鷹の爪」シリーズ作者。ひとつの作品の監督・脚本・キャラクターデザイン・編集・声の出演をひとりでこなす独自のスタイルでトップクリエーターとして地位を確立した。また、有名作品をコメディーアニメにリメークすることも多く、過去に「週刊シマコー」「ルパンしゃんしぇい」「攻殻機動隊ARISE」「ベルサイユのばら」などを手がけている。現在はテレビ、WEB、ラジオにて「秘密結社 鷹の爪」シリーズの新作を毎週放送・公開している。
座右の銘
「クリエーターになりすぎるな」

天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~ プロモーション映像 GYAO!特別映像(00:05:58)>>


天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~ プロモーション映像(00:01:00)>>


チームしゃちほこ 「天才バカボン」(00:04:00)>>

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