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日本のスカパンク・シーンの先駆者であるKEMURIが、今年で結成20周年を迎える。今なおシーンの最前線で活躍し続けている彼らだが、幾度かのメンバーチェンジや、メンバーの不慮の死、そして2007年には、一度バンド解散に至るなど、その道のりは決して順風満帆といえるものではなかった。しかし、どんなときでも一貫して"P.M.A."(ポジティヴ・メンタル・アティテュード、肯定的精神姿勢)を胸に刻み、がむしゃらに進んできた彼らは、震災後の「AIR JAM2012」を機に再結成を果たしてから、以前にも劣らぬペースで新作をリリースし、ライブ活動を続けている。「バンド史上、最高」と公言して憚(はばか)らないメンバー編成で、今年はセルフカバーを含むベストアルバム『SKA BRAVO』と、最新アルバム『F』をリリースし秋には大規模なツアーも予定しているなど、充実した日々を過ごす彼らに話を伺った。

最新アルバム『F』から「O-zora」を公開>>



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セルフカバーを含むベストアルバム『SKA BRAVO』と、最新アルバム『F』をリリース


―― デビュー20周年おめでとうございます。今の心境は?

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伊藤ふみお(ボーカル)

伊藤ふみお(ボーカル) 「うーん、長かったような、短かったような。気がつけば20年っていう感じでしたね」

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平谷庄至(ドラム)

平谷庄至(ドラム) 「ずっとやってきて、もちろん辛いことを挙げたらキリがないけど、それがあって今があるなとも思う。今がとても充実しているので、それだけで満足ですね」

―― 4月には、17年振りのUSツアーを敢行したそうですが、印象に残っていることは?

伊藤 「すごかったですね、びっくりしました。向こうでライブをやったの17年ぶりだったのに、『ずっと待ってたぜ!』っていうお客さんがいっぱいいたんですよね。サンフランシスコでは、300人くらいのキャパのハコが即ソールドアウト。南米のコロンビアやハワイ、ニューヨーク、カナダ......いろいろなところから集まってくれて。最初から最後まで、日本語の曲をずーっとシンガロングしてくれてるんですよ。」

―― ファンと交流などもしました?

伊藤 「ええ。『なんでお前、髪の毛切ったんだ?』って声かけられました。そりゃ17年もたちゃ、髪の毛くらい切るよ!(笑)」

―― (笑)。KEMURIは一貫して、"P.M.A."(Positive Mental Attitude ポジティヴ・メンタル・アティテュード、肯定的精神姿勢)、"常に前向きであること"をバンドの哲学としてきましたが、これは元々どういうところから来ているのですか。

伊藤 「叶(かな)えたい夢はあるけど、なかなか叶(かな)えられない。やっと始めたバンドもすぐに解散してしまって、ただただ生活するために働いていた日々。そういう状況の中でKEMURIを始めたから、もう挫折感満載のスタートだったんですよね。でも、この再出発が最後のチャンスならば、いいことだけを信じていきたいなって思った。先のことを心配したらキリがないけど、強い気持ちで進もう、そして、そのことを歌っていこうと決意したんです。そういう思いが『P.M.A.』という言葉に集約されているんですよね。もともとは、フィッシュボーンのアンジェロ・ムーアが使っていた言葉なのだけど、バッド・ブレインズら、他のストレートエッジなハードコアバンドも同じことを歌っていて。それ以来、ずっとそこにこだわっているんです」

―― 2007年に、一度解散したのはなぜだったのでしょうか。

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津田紀昭 (ベース)

津田紀昭 (ベース)「長年やっていく中で、メンバーそれぞれの方向性が、少しずつ違ってきたように感じたんですよね、音楽に限った話ではなくて。誰が正しくて誰が間違ってたというわけではないんだけど」

平谷 「だんだん、うまくコミュケーションもできなくなっていったというか」

伊藤 「ざっくり言うと、シラケたんだと思う。それって一番良くないことだよね。面と向かって相手に伝えようとしなくなるし。最悪の状況だった。まだ相手に対して腹が立ってたり、言うことを真に受けてる方が、話はできるじゃない? そういうことができないムードになってしまっていたんですよね。」

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コバヤシケン(テナーサックス)

コバヤシケン(テナーサックス) 「ずっと長いことバンドをやってて、CDを作ってステージに上がるというルーテインが毎年続くわけじゃないですか。その間、音楽業界も少しずつ衰退していくんだけど、その中で自分たちが置かれている状態を当たり前のように感じていた気がしますね。メンバーに対するありがたみとか、そういうことも含めてね。だから、解散したことによってバラバラになって、『やっぱり、すごい人たちとやってたんだな』と、改めて思うところもありました」

―― 今考えると、それもまた必要なプロセスだったのかもしれませんね。それで、宮城県で開催された"AIR JAM 2012"にて約5年ぶりの復活を果たしました。

伊藤「まあ、AIR JAMがキッカケというか、震災がキッカケというか......。不思議なものですよね」

―― その後はセルフカバー・アルバムを1枚、セルフ・カバーを含むベスト・アルバムを1枚、今作『F』を含めてオリジナルアルバムを3枚もリリースしています。再結成しても、なかなか新作を出せないバンドも多い中、KEMURIの創作意欲は驚異的ですよね。田中('T'幸彦)さんが再加入して、刺激された部分も大きかったのでは?

伊藤 「それはあるかもしれないね。新生KEMURIとしての雰囲気が、今すごくいいんじゃないかな」

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田中 'T'幸彦(ギター)

田中 'T'幸彦(ギター) 「再加入する前から、ふみおさんのソロで曲を書かせてもらってたりしてて、その流れでまたKEMURIに誘ってもらったんですけど、なるべく津田さんや庄至さんが書かないような曲を書こうとか、そういう気持ちは常にありますね」

伊藤「いやあ、メンバーが1人違うだけで、バンドってこれだけ変わるのかなって思う」

―― 最新作『F』は、現在のライブメンバーで録音した初のオリジナルアルバムとなります。KEMURI節炸裂(さくれつ)のスカパンクから、インスト曲「LADYBUG」、そしてアコースティックな「PAIN」と、非常にバラエティ豊かな内容ですね。

伊藤 「津田、T、庄至、コバケンが曲を持ち寄って、今までで一番数多く曲がそろったんですよね。そのなかから選んでいったから、これだけ振り幅の大きなアルバムになったんだと思う。個々の課外活動が、いい形でフィードバックされたというか。メンバー全員が、新しいKEMURIを求めてたのかもしれないですね」

―― アコースティック曲「PAIN」の中で、「痛みなくして何を学べるというのだろう? 痛みなくして進歩はないんだ...」と歌っていて。多くの試練を乗り越えてきた伊藤さんならではの歌詞だなと思いました。

伊藤 「まあ、"出会いがあっての別れ"というものを、何度か経験した中で出てきた歌詞ですけどね」

―― 「僕らは救い......僕らは見捨てる ......」という部分は?

伊藤 「人って、案外カラッと残酷な部分があるじゃないですか(笑)。自分にとってはこんなに大事なことなのに、相手には全く届かずスルーされる、みたいな。『優しく、正しく』と思ったところで、自分も気づかないうちに誰かを傷つけているかもしれない。人間って、そういう生き物なのかなと。そういう性みたいなものを、僕もいい歳だし歌っておかないとかな、って(笑)。まあでも、できれば傷つかない方がいいよね。いたずらに傷つかない方が......。傷って残るからね、一生消えない。忘れることはあるかもしれないけど。だから、この先の人生ではもう傷つきたくないなぁ(笑)」

―― 9月には、REEL BIG FISH、LESS THAN JAKE、SKANKIN' PICKLEという伝説のスカパンク・バンド3組をアメリカから招き、20周年ツアー"SKA BRAVO"が始まりますね。

コバヤシ 「なんかライブって、自分たちで『今日はバッチリじゃない?』って思ってもそうでもなかったり、『今日はイマイチかな』と思ったら絶賛されたりするから、自分たちではどうにもならない部分ってあるんですよね。だからもう、ありのままにやるしかない」

伊藤「ありの~ままで~♪」 ―― (一同笑) 伊藤「もうね、アルバムが出ちゃったら裸みたいなもので。あとはライブをやるだけ。体には気をつけて頑張りますよ!」

◆ KEMURI(けむり)
伊藤ふみお(ヴォーカル)、津田紀昭(ベース)、コバヤシケン(サックス)、平谷庄至(ドラム)、田中"T"幸彦(ギター)。1995年に結成し、1997年、アルバム『Little Playmate』でデビュー。1998年のセカンドアルバム『77 days』はゴールド・ディスクを獲得した。以降、幾度かのメンバーチェンジやメンバーの不慮の死を乗り越えながら精力的に活動を続ける。2007年に一度解散するが、2012年、"AIR JAM 2012"にて約5年ぶりの復活。結成20周年となる今年、セルフカバーを含むベストアルバム、オリジナルアルバムをリリース。9月には伝説のスカパンク・バンド3組をアメリカから招き、ツアー"SKA BRAVO"を敢行予定。

(文/黒田隆憲、撮影/蔦野 裕)
(写真:トレンドニュース)

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"KEMURI TOUR 2014-2015 RAMPANT"東京公演より「SUNNY SIDE UP!」


現メンバーで再録、"二代目"ミュージックビデオを公開 「PMA(Positive Mental Attitude)」


KEMURI 「白いばら」(from『TOUR 2012 ~REUNION~』)


KEMURI 「Ato-Ichinen」(from『TOUR 2012 ~REUNION~』)

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