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ホラー映画の大ヒット・シリーズ『呪怨』の生みの親であり、同作の米版リメイク『THE JUON/呪怨』で実写映画では日本人監督初の全米興行収入第1位を獲得した清水崇。そのアメリカ映画第3弾となる『7500』が7月25日から公開される。今回はキャストも撮影もすべてアメリカという純ハリウッド映画。ロサンゼルス発東京行きのジャンボジェット機を舞台に、乗客や乗組員たちを襲うさまざまな恐怖と怪異を描いている。ホラー映画のヒットメイカーである清水監督に、映画の裏側やホラーに対する想いなどを聞いた。

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7月25日から公開 清水崇監督 フライトパニック・ホラー『7500』


■「見せる怖さ」と「見えない恐怖」の違いは?

――新作『7500』の企画の成り立ちを教えてください。

 プロデューサーのロイ・リー(『THE JUON』の製作総指揮)から「飛行機の中だけで展開する密室パニックものが作れないか?」と誘われたのが発端です。といっても口頭で話があっただけで、彼自身にも具体的なアイディアがあったわけではないんですが...。それで当時流行っていたPOV(カメラが観客の視点になる映画)にしてみようかとか、いろいろ企画を練っていくうちに、ある出来事が蔓延(まんえん)する群像劇にしてみたいと提案し、脚本家のクレイグ・ローゼンバーグを紹介されて、彼の書いた脚本をもとに一緒に手直ししていったんです。

――その際に気を配ったことは?

 臨場感と緊迫感を大事にしたかったです。あと群像劇なので、バラバラだった登場人物たちが、ひとりの男の死をきっかけに同じ恐怖に苛まれていく、というのをきっちり描きたかった。じつは最初のプロットでは登場人物はもっと多かったんです。クレイグに「そんなにたくさんいても、観客が覚えきれないよ!」と言って削りましたが(笑)。

――アメリカと日本で見せ方や観客の反応に違いはありますか? この『7500』では直接的な残酷描写をあえて避けているような気がするのですが...?

 そこのところはいろいろと葛藤がありまして...、プロデューサー陣も意見が分かれ、製作会社の意見にも翻弄(ほんろう)されまくりました。実際、ゴースト的な直接描写もそのための素材もいろいろ撮影しています。アメリカではやはり、何でもわかりやすいものが求められる傾向がありますから。それはホラー映画に限らずエンターテインメント全般で言えることで、なかなか行間を読み取ってくれる映画ファンばかりというわけにはいきませんから...。ですが、最終的にはほとんど大半のゴースト描写はカットされました。

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7月25日(土)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
(C)2014 CBS Films Inc. All Rights Reserved


――しかし、監督の出世作の『呪怨』シリーズは、それまでのいわゆるJホラーとは違って、雰囲気で怖がらせる映画ではなく、恐怖の対象をはっきりと見せる作品でした。

 怖いものをはっきり見せないで観客をじわじわと怖がらせるというのが90年代のJホラーの特徴で、僕自身もこの見せ方が上品だし、怖いと思っていました。もともとは鶴田法男さん(ビデオやテレビで人気の『ほんとにあった怖い話』シリーズの監督)や小中千昭さん(脚本家。恐怖演出について語った「小中理論」で知られる)、高橋洋さん(『リング』の脚本家)、中田秀夫さん(『リング』の監督)といった先人方が確立した手法ですよね。しかし、僕が監督をやらせてもらえるようになった時、そうした先輩方と同じことをやっても仕方がないな、と思ったんです。実際にマネをする人や模倣表現も同時多発していましたし。それで、笑われてもいいからと思いっきり見せつけてしまったのが『呪怨』です。でも、その部分にサム・ライミ(『死霊のはらわた』などの監督。『呪怨』がハリウッドでリメイクされた際のプロデューサーをつとめた)なんかは引っかかってくれたのかもしれません。

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7月25日(土)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
(C)2014 CBS Films Inc. All Rights Reserved


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7月25日(土)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
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■ホラー・メイカーの映画の原点はあの『E.T.』?

――そんな清水監督のホラー体験の出発点とは何なのでしょうか?

 子供の時、とても怖がりだったんです。怖いもの見たさで水木しげるや楳図かずおのマンガには手を出すけど、夜眠れなくなってしまったり...(笑)。お化けや妖怪について友だちと語り合ったりするタイプじゃなくて、その先を想像してはひとりで怖がっている子供でした。『呪怨』も子供の時に想像していたことをふくらませて映画にしたようなものですから。「何の理由も元凶もわからずとも、とにかく怖いお化け屋敷のような映画が見たい」という発想です。

――映画への想いが芽生えたのはいつごろですか?

 小学校4年生の時に見た『E.T.』です。それまでも子供向けのアニメやファミリー映画は見ていましたが、本格的な洋画はこれが初めて。予備知識がなかったから、指のアップがデザインされたポスターや予告編を見ただけでは、モンスターか宇宙人の怖い映画だとずっと思ってた。だから親戚の人に見に行こうと誘われた時にも断ったんですが、「もしかして、怖いんでしょ?」と言われたので強がって見に行きました(笑)。それで、初めての字幕を必死で追いかけながら見たら、ものすごい共感と感動が襲ってきて...! 主人公の少年と同じ10歳だったというのもあったと思いますが、子供の目線で、捨て犬や猫を拾ってきて親に見つからないように飼う、といった感覚で異星人を扱っている。本当にびっくりして、それからはあらゆる映画を見まくりました。テレビでやっていれば深夜のでも見る、とにかく見たい映画なら、親や親戚にくっついて見に行く、という具合でした。

――清水監督から見た、ホラー映画の魅力とは何でしょうか? なぜ人は映画に恐怖を求めるのか...

 人には本能的に恐怖をどこかで欲している部分があると思います。幸せで平和な状態で過ごしていると、逆に危機感を感じてしまうんじゃないですかね。だからたまに人為的にビクビク、ドキドキする感覚を欲する。体感型のコースターやアトラクションも似て非なる感覚ですが...、ホラー映画だと客観的な物語も味わいつつ、自分は安全な場所にいながら楽しめますから。これってホラーだけに限った話ではなくて、人と人のコミュニケーション、特に恋愛やケンカ・対立関係なんかでも一緒。社会的な配慮を十分に踏まえた大人の女性こそ、不倫の物語やドラマに憧れる...、これも、安全圏内でそうしたドキドキ感やキュンとなる感覚を味わいたいからじゃないでしょうか。

――監督がハリウッドで撮った『THE JUON』と『呪怨パンデミック』はいずれも全米1位の大ヒットを記録しています。当然オファーもたくさんあったと思いますが、ハリウッド3作目にあたる『7500』までかなり間が空きました。その理由は?

 正直言えば...、製作会社(スタジオ)やプロデューサー陣とのクリエイティブな意識の相違が大きいです。商業映画を手がける限り、無くならないジレンマですが...。お金と面白さ、結果と過程、そのはざまでいずれもが一致して実を結ぶ理想像を追いかけて、ということでしょうか? 確かに『呪怨』シリーズはヒットしたし、自分にとって名刺がわりの代表作です。でも、そんな過去の栄光にすがりたくないんです。僕自身、ビデオから劇場版、ハリウッド版と計6本も『呪怨』を撮ってきたので、正直おなかいっぱいでした。しかし、いつの世も世間や製作側はハリウッドでも日本でも『呪怨』的なものばかり求められ、似たような企画ばかりがオファーされて、ずっと断り続けていました。もしくは既存の有名作のリメイクや今で言うリブートばかり。逆にこっちが乗り気になるような企画は途中で消えてしまったりして、ハリウッドでの映画作りは本当に難しいです。しかし現在も「これならば!」という進行中の企画があるにはあるので、なんとか形にできたらと思っています。

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7月25日(土)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
(C)2014 CBS Films Inc. All Rights Reserved


☆『7500』
ロサンゼルス発東京行きのヴィスタ・パシフィック航空7500便にはさまざまな事情を抱えた乗客たちが乗り込む。破局を隠したまま友人夫婦と旅行するカップル、異常な潔癖症で自分勝手な若妻、全身タトゥーのヘビメタ女、盗品を売りさばくバックパッカー、謎の箱を大事そうに抱えた男......。男性パイロットと客室乗務員も不倫関係にある。やがて機は突然の乱気流に遭遇し激しく揺さぶられることに。その直後、ひとりの男が苦しみだし、血を吐いて急死してしまう。死体を乗せたまま飛び続ける7500便。だが、死は次第に機内全体に広がり出し、人々をさまざまな怪異が襲う。いったいこの機内に何が起こっているのか...? 清水崇監督のハリウッド映画第3弾。7月25日から公開。

プロフィール
清水崇(しみず・たかし)
1972年生まれ。群馬県出身。シャイカー所属。大学で演劇を学び、助監督や映画美学校を経て、98年にテレビ『学校の怪談G』の短編でデビュー。99年にOVA『呪怨』『呪怨2』を監督、口コミで「怖い!」と評判を呼ぶ。2001年『富江re‐birth』で劇場映画初監督。02年劇場版『呪怨』、03年『呪怨2』が話題となり、04年にはサム・ライミ製作のもと『THE JUON/呪怨』でハリウッド進出。実写映画で全米ナンバーワンを記録した初めての日本人監督となり、06年の続編『呪怨パンデミック』も全米1位に。その他の作品に『輪廻』(05)、『戦慄迷宮3D』(09)、『ラビット・ホラー3D』(11)などがある。09年の『非女子図鑑』、14年の『魔女の宅急便』などホラー以外の作品も手がけている。
座右の銘:「どうかあなたにびっくり箱を」(開けるまで何が飛び出すかわからないワクワク感を大事にしたいから)

(取材・文/紀平照幸)

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