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ビクターエンタテインメントのデジタルビジネス部による、新たなレーベル「AndRec(アンドレック)」が誕生した。同レーベルが行うのは、音楽配信市場の特性や変化に対応した独自のコンテンツ制作。レーベル長兼デジタルビジネス部 部長の今井一成氏によれば、「音楽をコレクションしたいファンにはCD・ハイレゾ配信やダウンロードシングル、気軽に場所を選ばず音楽を楽しみたいファンにはサブスクリプション(定額制音楽聴き放題サービス)など、ライフスタイルに合わせて音楽を届ける事が大切」と考えるようになったことが、立ち上げの大きなキッカケという。第一弾アーティストには、シンガーソングライター丸本莉子が選ばれた。デビューシングル「ココロ予報」で、6月10日に史上初のハイレゾ先行配信デビューとなった。

CDセールスからスピードスターレコーズの宣伝部を経て、デジタルビジネス部を担当してきた自身の経験を生かし、これまでにない画期的な戦略を打ち出す今井氏。折しもAWAやLINE MUSIC、Apple Musicなど、定額制音楽聴き放題サービスが続々と登場している今、レコード会社が目指すべきビジョンをどのように考えているのだろか。
今井氏と、「丸本莉子 LIVE at Victor Studio 『一本勝負!!』」と題された生配信(7月16日の20時から)が決定しているシンガーソングライター丸本莉子の二人に話を聞いた。

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7月16日(木)20時~ライブ生配信決定
AndRecレーベル長・今井一成、シンガーソングライター・丸本莉子

GYAO! MUSIC LIVE 「丸本莉子 LIVE at Victor Studio 『一本勝負!!』」生配信ページ>>

■タイアップ至上主義への疑問があった

今井 :デジタルビジネス部に配属される前は、同じビクターエンタテインメント内のレーベルであるTAISHITAレーベルとスピードスターレコーズで宣伝の仕事をしていました。当時はサザンオールスターズのアーティスト担当を任される一方で、斉藤和義、くるりといったアーティスト達と、様々な宣伝アプローチにも挑戦していました。当時の宣伝方法といえば、とにかく多くのメディアに登場し、作品情報を幅広く打ち出していくという手法が主流だったのですが、そんな中でわれわれは媒体をあえて絞り、そこにアーティストの世界観や思い、個性などを注ぎ込むという「大量露出とは正反対のプロモーション」もおこなっていました。 私は1986年入社なので、ちょうどレコードからCDへとメディアが切り替わっていく時代を見てきています。2000年代に入り音楽配信も始まりましたが、その頃からタイアップ至上主義が加速したように思います。ランキングに入ってくるのはドラマ主題歌やCMタイアップ作品が中心で、サイクルもどんどん早くなっている。セールス初動が勝負というか、曲自体よりも、話題性、サビの耳馴染みばかりに注目されるのは、すごく不自然で不健全に感じましたね。 そうやって毎年同じルーチンを繰り返すことにだんだん疑問を感じてきた頃、2008年に長年いた宣伝部から異動し、現在のデジタルビジネス部を立ち上げました。当初はデジタルマーケット特有の仕事の進め方に戸惑いつつも、若手スタッフとざっくばらんにコミュニケーションをとり、意図的に社内会議よりもライブの現場へ積極的に足を運ばせたりもしました。こんな積み重ねから、デジタルビジネス部発信のアーティストがいても良いのではないかという考えが強まり、今回の新レーベル「AndRec」設立につながりました。レーベル第一弾アーティストを決めるミーティングを繰り返しているときに、ディレクターが追いかけていたミュージシャンの中に、声質が非常に印象的な作品があり、それが丸本莉子のインディーズ時代の作品でした。

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「ココロ予報」ハイレゾ先行配信後、7月8日に配信シングルデビューする丸本莉子


■アナログライクな音楽こそ新しいデジタルマーケティングで

丸本 :私は高校二年生の頃から音楽活動を始め、4年前に上京してきました。地域活性化に積極的な事務所と契約して、全国の町おこしイベントなどで弾き語りをさせてもらってきました。子供からお年寄りの方々まで幅広く聴いてもらえるようなアーティストを目指しています。

今井 :私が初めて彼女の歌を生で聴いたのも、さいたまスーパーアリーナのイベント会場でした。素晴らしかったですね。歌い方、声質、肝の据わりっぷり......。お客さんが次々と入れ替わるショウケース的な会場にもかかわらず、堂々としていて。そんな彼女の個性的な歌声と佇まいが印象的で、レーベル第一弾アーティストを確信しました。 AndRecでは常に新しいことをやっていこうと思いつつも、何が新しいのかをずっと考えていたんです。そんなときに丸本莉子の歌を聴いて、「このアナログライクな音楽を、新しいデジタルマーケティングで展開したら面白くなるのでは?」と思いつき、その途端、これまでのモヤモヤした物が一気に晴れました。昔からビクターは、"歌い手さん"と呼びたくなるような生身のシンガーをたくさん輩出してきました。そんな会社なので、やはりレーベル第一弾アーティストは、しっかり歌が歌えるシンガーがいいなと。それに、CDの3倍以上の情報量があるというハイレゾは、彼女のアコースティックなサウンドとも相性がいいと感じました。

丸本 :自分の曲をCDとハイレゾで聞き比べをさせてもらったのですが、音量が変わってないのにグッと前に近づいた気がしました。ストリングスがどこで鳴っているのか、位置まで分かるくらいクリアでしたね。それに、私の声は特徴的なので、それがより引き立つように感じました。これからさらに自分の持ち味を出していきたいです。

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デジタル部門によるアーティスト契約・育成から音源制作までおこなう新レーベル
「AndRec」レーベル長・今井一成


■すべては素晴らしいアーティストの曲を聴くべき人に届けるため

今井 :AndRecでは、CD、ハイレゾからサブスクリプションサービスまで、リスナーの環境に合わせたメディアでのリリースを考えています。今、AWA、LINE MUSICやApple Musicなど、定額で音楽聴き放題の新サービスが話題になっていますよね。ハイレゾとはまた対極にあるサービスだと思います。一方で、弊社にはCDへのこだわりもあります。ただ、これからの時代を考えると、今の20~30代の若いアーティストは、育った環境が我々とは全然違うわけです。気がつけばケータイもインターネットもあった世代ですからね。彼らの目線で考えていくと、選択肢はCDだけじゃなく、いろいろあった方がいい。どれが生き残り、どれが衰退していくのかを考えてばかりいるのではなくて、その時々でニーズのある物に対応していくべきだと。

今後は映像配信ももっと進んでいくでしょう。そうなると、音だけでなくレコーディングしている映像やミュージックビデオも、楽曲と共に配信できるようになる。そんな時代だからこそ、新しい音楽の楽しみ方をどんどん提示していきたいと考えています。一方で、ミュージシャンにとっては曲を作り、スタジオでレコーディングしてライブで実演するっていう活動は変わらないと思いますし、変わってはいけないとも思います。そこを大切にしつつ、発信の仕方はその時代その時代で、レコード会社が真剣に考えなければいけない。せっかくいいアーティストでも、それを聴くべき人に届かないのが一番残念ですからね。

丸本 :音楽業界での初めての試みが、私の曲を通して広まっていくなら、これからもっともっといい曲を書かなければ! と思っています。好きなアーティストは安全地帯の玉置浩二さん。初めてお父さんと一緒にライブに行ったのが玉置浩二さんだったんです。声の存在感があって。自分が思っていることを素直に歌っているのがすごいなあと感動しました。私もそういう存在になりたい。自分がいなくなっても、作品が残っていくような、そんなアーティストを目指していきたいです。

2015年7月8日(水)1st 配信シングル「ココロ予報」ミュージックビデオ>>


● プロフィール

今井一成(いまいかずなり)
埼玉県生まれ。
1986年、日本ビクター株式会社入社。
1994年、ビクターエンタテインメント株式会社の現スピードスターレコーズ宣伝部所属。
1999年、スピードスターレコーズのタイシタレーベルでサザンオールスターズ宣伝を担当。
2009年、デジタルビジネス部 部長に就任。
2015年、AndRecのレーベル長を兼任。

丸本莉子(まるもとりこ)
広島県出身のシンガーソングライター。
いつも見知っている景色を、親しみやすいメロディーと言い得て妙な歌詞に置き換え、一度耳にしただけで印象に残る個性的な声で歌う丸本莉子。その本物の歌は、本物の音質である史上初のハイレゾ配信デビューという形で、2015年夏、世に送り出されることになった。
ハイレゾ先行配信を行ったメジャーデビューシングル『ココロ予報』は、「VICTOR STUDIO HD-Music.」「mora」「e-onkyo music」の初日デイリーチャートですべて第1位を獲得。新人としては異例の3冠を達成し、早くも注目を集める。8月19日(水)2nd 配信シングル「やさしいうた」、9月16日(水)1st ミニアルバム「ココロ予報~雨のち晴れ~」をリリース。


(取材・文/黒田隆憲)

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