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"たけしイズムの継承者"――そんな言葉で形容されることが多いお笑いコンビ・東京ダイナマイト。さまざまな規制や批判をおそれてお笑い界全体が"優等生化"する中、時代に抗い刀を振り回し続ける彼らは異質の存在であることは間違いない。しかしそのネタを見たことがない人は、先行するイメージとは真逆の、ホンワカとした笑いに驚くだろう。舞台で繰り広げられるのは、むしろメルヘンチックとさえ言える牧歌的な笑いだ。鋭い牙とメルヘン、相反する2つが同居する彼らは、その視線の先に何を見据えているのか――。

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DVD「東京ダイナマイト 2Days BIG ROMANCE 2015」を8月5日に発売


■審査員の顔色をうかがって演るわけじゃない

「THE MANZAI 2013」で披露したネタ"まつもんた"は、芸人仲間やディープなお笑いファンをうならせ、視聴者にその存在を強烈に刻み込んだ。その"問題作"も収録したDVD「東京ダイナマイト 2Days BIG ROMANCE 2015」を8月5日に発売。3月に2日間に渡って行われた単独ライブの模様を収録したものだが、初日は全て新作コントを披露し、そして2日目は全編約70分間の漫才を繰り広げた。
これまでコントのイメージも強い同コンビだが、結成3年目で出場した「M-1グランプリ 2014」で決勝進出を果たすなど「漫才コンビ・東京ダイナマイト」は華々しい門出を飾ってきた。だが、それを単なる"ビギナーズラック"とツッコミ担当のハチミツ二郎は冷静に振り返る。

「決勝まで行けたんですけど、多分、荒削りな部分を含めた評価なんですよ。あの場所にはもっとキャリアを積んで練り上げてきた者たちの勝負があるので、あまりにも早く出すぎたかな、と」

好スタートを切ったかに見えたが、苦難の日々は続く。それでも漫才師として舵(かじ)を切った以上は逃げることなく果敢に挑み続けているが、表立って"漫才コンビ"の看板を高々と掲げてはいない。「ぶっちゃければ、THE MANZAIとかM-1のグランプリを獲ってないんで、隠しておきたいところもあって。それに、先にネタを見せちゃうと今はYouTubeにあげられちゃうので隠しておかないと。まつもんたのネタも準決勝で初めておろしたんです。誰もまだ見ていない状態で本番を演りたかった」(ハチミツ)――頭角も爪も隠して挑んだ「THE MANZAI 2013」。過激なネタだっただけに、審査員の評価は真っ二つに分かれた。観覧客の中にも"引く"人が少なからず居たという。しかし、そんな賛否もどこ吹く風だ。

「こっちは審査員の顔色をうかがってネタやるわけじゃないんで、あくまでもテレビの向こうの人に向けてやってるんでね」(ハチミツ)

■好きな事やってトップ獲るのがお笑いドリーム

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7月31日に最新DVD先行即売ライブ「プールイのシーン全カットだってよ!」を開催


飄々(ひょうひょう)と語る2人。しかし言葉の端々には、やはり反骨精神がギラリと光っている。世相をブラックジョークでぶった斬り、時には業界のタブーとされるような部分にも踏み込んで笑いに変えてしまう芸風。"たけしイズムの-"というようなフレーズは重荷ともなりそうだが、ハチミツは「順をおっていけばそうなるっていうだけのことです。ひょうきん族で(ビート)たけしさんがむちゃくちゃしてて、(西川)のりお師匠もむちゃくちゃしてて。そしてとんねるずやダウンタウンが出てきて、そういうのを追っかけてたから」と当然のように語る。ボケ担当の松田大輔も「ああいうことをやりたいと思って入ってきたからね」と、お笑い好き少年の顔そのままだ。

「若手はみんなおとなしくなっちゃった。なんか日和(ひよ)ってるな、って思う。これをやったら怒られるかな、とか。そうじゃなくて、好きなことヤってりゃいいんじゃないかと思いますけど。怒られることを気にしてるからダメなんじゃないですかね。何も作れなくなってくる。だって、自分の人生で、自分が選んだ職業で、自分がやりたいことをやるだけじゃないですか。怒られてナンボですから。怒られることを仕事にしてるんですから。(爆笑問題)太田さんやダウンタウンさん、とんねるずさんのように好きなコトやりながらトップ獲っていくっていうのがお笑いのドリームのはずなのに」

■"憧れ"が生んだ「たけしイズム」

彼らが継承するその"めちゃくちゃ"がテレビ出演の足かせになっていると当人たちは自覚している。「僕らの問題は、ビートきよし師匠とか、爆笑問題でいう田中さんが居ないことです。止める人が。コンビ両方でやっちゃうから。片方にストッパー役が居ないと難しいんですよね」とハチミツ。松田も「うちは、(お互いの暴走を)止めない、っていうのがあるんですよね、そこに憧れて入ってきたから」と同調する。彼らは"憧れ"に忠実だ。

憧れに忠実だからこそ、テレビに出るために芸風を変えて、というつもりは毛頭ない。「テレビが昔と変わっただけでね。おれは無理してまでは、っていうのがあります。若手は『こうやれば呼ばれるんじゃないか』なんて思ってますけど。呼ばれない時期は絶対に呼ばれないと思ってます」(ハチミツ)。とはいえ、テレビを拒絶するつもりも一切ない。「今は舞台に呼ばれているので舞台に出ている。それがテレビならテレビでやりますし。それだけのことです」と、泰然自若と構えている。自身の憧れるお笑いへの愛情をたっぷり込めたパンクスピリット。それを体現していることこそが"たけしイズムの-"と言われるゆえんだ。

記者は一ファンとして「もっとテレビで大暴れして欲しい」という願いをもっていた。しかし裏腹に「テレビにはあまり出てほしくない」という思いもあった。これは東京ダイナマイトファンの多くに共通する心理だろう。しかし、今回のインタビューを通じて少し考えが変わった。彼らには何の気負いもない。"ありのまま"の芸人だ。2人に座右の銘を聞いてみると、松田が「一球入魂」、ハチミツが「一期一会」だという。記者はそれらを「人事を尽くして天命を待つ」と勝手に解釈させてもらった。今与えられた仕事に魂を込めて全力投球、あとはどこかからお呼びがかかるのを待つだけ。「それだけのことです」――。今年復活する「M-1グランプリ」への参戦も表明した。ダイナマイトが爆発する日を楽しみに待ちたい。

■東京ダイナマイト
ハチミツ二郎(ツッコミ)、松田大輔(ボケ)それぞれ別のコンビを経て2001年結成。2004年、2009年の「M-1グランプリ」、および2013年の「THE MANZAI」で決勝進出を果たした。オフィス北野などを経て現在はよしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
7月31日に最新DVD先行即売ライブ「プールイのシーン全カットだってよ!」を開催。実質のライブが500円の太っ腹企画となっている。

(取材・文/花@HEW
(写真:トレンドニュース)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

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