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全世界累計5000万部を突破、いま最も熱いコミック『進撃の巨人』がついに実写映画化。世界中のファンが注目するこの超話題作の樋口真嗣監督に、その製作の裏側を聞いてみた。

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映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』樋口真嗣監督(前編8月1日公開、後編9月19日公開)


映画・アニメ・特撮のプロたちが集結して挑んだ実写化>>


■エレンを主人公として立てるために物語を再構築

――映画化するにあたっての、原作者の諫山創さんから何か注文はありましたか?

 原作はまだ連載が続いているものなので、そのタネ明かし的なものにならないようにしてほしい、ということですね。最初はまったく違った内容で、たとえばジャンを主人公にした物語にできないか、とも言われましたが、それでは『進撃の巨人』にならない、やはりエレンの物語でないと、ということで話し合いを重ねていきました。

――キャラクターや設定も微妙に変わっています。たとえばエレンの両親は映画には出てきませんね。

 原作ではエレンは母親を目の前で巨人に食われたことで巨人と戦う決意をします。しかし、彼を中心にした一本の映画で考えると、それでは単なる報復物語であって、動機としては弱いんじゃないか、と。エレンを主人公としてきっちり立てるには、彼から一度すべてを奪って、最終的にすべてを取り戻す話にしたほうがいいんじゃないかと考えたんです。

――それで原作とは違って、ミカサと子供の頃に引き離されるのですね。

 エレンにとって何を失うのがイヤか、と考えた時に、一人の男としてはやはり好きな女の子が奪われてしまうことではないかと思いまして。これを筆頭に、どこまでエレンの地獄巡りを浮き彫りにしていけるかに頭を絞りました。

――実写映画に先駆けてアニメ版がテレビ放映されましたが、ご覧になりました?

 もちろん見ました。脚本の作業中に放映が始まって、見たら時系列に従ってストーリーを再構成してるところが、まったく同じだったんです。「ちくしょう、先にやられた!」と思いましたね(笑)。同じことをやるのでは映画化する意味はないですし、アニメのほうが自由さもある上、あのシリーズはかなりがんばって作っていました。それを焼き直すことなどできない。ならば自分たちに出来ることはなんだろう? そういう観点からもう一度話し合って、エレンを中心にした物語に再構築していくことにしたんです。

■巨人にとって人間は踊り食いのエビみたいなもの

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映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』樋口真嗣監督(前編8月1日公開、後編9月19日公開)


――アニメ版とは違い、生身の人間を使った巨人の描き方が独特で効果的でした。

 これも諫山さんからの要望だったのですが、「巨人を使って怖がらせないでくれ」と。人を食うからといって、牙をむいて襲いかかるような描写はしない。そうじゃない描き方で気味悪くできないか、いろいろ考えました。原作の絵の印象からしても、ここにあるのは単純な恐怖じゃないですから。
 たとえばわれわれがエビの踊り食いを食べる時にも、別にエビを怖がらせようと思っているわけではないですよね。単純においしい。なんだ、こんなにうまいんだったら、もう一口食べよう。そういう気分で巨人は人を食べているんじゃないか。だから巨人を演じる人たちには「こんなにごちそうがいっぱいあってうれしい」という気持ちで演じてもらいました。

――前編のクライマックスで登場人物が巨人化するシーンは特撮ヒーローものに通じる興奮がありました。

 原作を最初に読んだときに衝撃を受けたのが、まさにそこで、こういう形で描けば21世紀にも変身ヒーローものの着地点があるのかもしれないと感じて惹(ひ)かれたんです。

――他にも原作の描写で魅力を感じたことは?

 主人公たちが悪あがきしている感じですかね。10代~20代の視点で見た、社会との関係性と言いますか...。悪意に満ちた周囲からどうにか抜け出そうとする人々。そこから感じた「若さ」が最大の魅力だと思いました。

――撮影後に世界遺産に登録された軍艦島でロケが行なわれたのも話題になっています。

 別の用事で軍艦島に行った時に、あまりにもスゴい場所なんで圧倒されて、いつかはここで映画が撮りたいなと思っていたんです。『進撃』の話が来た時に、それが結び付けられるんじゃないかと考えました。原作が持つヨーロッパ的な世界観ではないものを、ここなら作り上げることができると。じつは後編を見ていただけると、なぜここが選ばれたのかの真の理由がわかるような作りになっています。とはいえ、撮影時にはすでに世界遺産になるかもという時期だったので、交渉は難航しました。本当にいつダメになってもおかしくない状況だったんです。

――見せ場のひとつである立体機動ですが、あの装備は重くてとても苦労したと俳優さんたちが語っていました。ワイヤーで吊(つ)るしての飛行シーンでも重装備のままだったのですか?

 基本的には同じものです。軽いプロップを使うとバレやすいので...。転んだり動きの激しいシーン以外では、重装備のまま何度もブルーバックの前を飛んでもらいました(細かくカットを割るため)。せっかくの美しい顔を撮影中汚しっぱなしにしたりで、俳優さんたちには本当に申し訳なかったと思っています(笑)。

――後編に向けて、観客へのメッセージをお願いします。

 前編は、基本的に原作を再構築して作ったつもりです。コントラストは付けていますが、展開もほとんど同じ。しかし、後編では原作がまだ終わっていない話にどう決着をつけるかが見どころになります。かなり映画のための新しい要素が出てきますし、謎の覆面の人物やミカサの変貌、シキシマの意味ありげな発言の真相など、前編に散りばめた謎にも回答を提示していきます。『進撃』という道具立てを使ったまったく新しいものを作る、このキャラをどうダイナミックに動かすか、ということに気を配りました。前編のラストで後編の一部を見せていますが、あれだけを見て「こんな展開だろう」と想像していると、「そんなのアリかよ!」と裏切られますよ。エレンが簡単に幸せになることなんてありえませんから(笑)。彼にとって最悪なことが、これでもか! と降りかかっていきます。でも、その果てにこそ、最後のカタルシスがあるんです。


映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
 諫山創が2009年から「別冊少年マガジン」誌に連載を開始、圧倒的な迫力で世界的に人気となったコミックを、日本映画界が誇るクリエイターたちが集結して実写版映画化。100年以上前、突如現れた巨人たちに人類の大半は食われ、文明は崩壊した。わずかに残った人々は高い壁を築き、その中で平和な暮らしを送っている。だが、そんなささやかな日常は、想定外の超大型巨人の出現によって崩れ去った...。果たして人類に反撃の日は来るのか? 監督は樋口真嗣。主人公エレンに三浦春馬、ミカサに水原希子、アルミンに本郷奏多が演じるほか、映画版 新キャラのシキシマに長谷川博己。他にも三浦貴大、桜庭ななみ、石原さとみ、ピエール瀧、國村隼などが出演。原作とは違った、予想外の展開に驚がくすること必至。前編が8月1日、後編は9月19日から連続公開される。

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映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』樋口真嗣監督(前編8月1日公開、後編9月19日公開)


プロフィール
樋口真嗣(ひぐち・しんじ)
1965年生まれ、東京都出身。『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)に始まる平成ガメラ三部作などで特技監督をつとめ、2002年に劇場用監督デビュー。主な監督作に『ローレライ』(05)『日本沈没』(06)『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(08)『のぼうの城』(12・犬童一心と共同監督)がある。最新作は来年公開予定のゴジラの新作(総監督は庵野秀明)。
座右の銘:「腰は低く、押しは強く」

(取材・文/紀平照幸)


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