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お笑いコンビ・ダイノジは本当に"お笑いコンビ"なのか? 大谷ノブ彦と大地洋輔、共に音楽好きとして知られ、音楽フェスやDJイベント「ジャイアンナイト」を主催するなど音楽のフィールドで多彩な活躍を見せている。しばしば芸人仲間に「本業がわからない」とイジられ、本人たちもネタにするところだ。

結成20周年を記念して行う公演は、なぜかお笑いライブではなく喜劇『テイラー・バートン~奪われた秘宝~』。8月18日~23日に東京・赤坂の草月ホールで上演される同舞台は、お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣が脚本を担当。さらにその脚本を、西野も含めた4人の演出家、ダイノジを含めた4組のキャストで4パターン上演するというものだ。20周年記念公演にも関わらず、ダイノジはメインではなく、なんとただのいちキャストに過ぎない。ふたりは、なにを目指しているのか?"芸人"という肩書をどうとらえているのか? その謎は20周年を迎えたコンビの、静かな、しかし熱い野望へとつながっていた――。

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結成20周年記念公演喜劇『テイラー・バートン~奪われた秘宝~』(8月18日~23日 東京・赤坂 草月ホール)


■今の時代、芸人としての正解がいっぱいあるはず

大谷「20周年を迎えて本当に感じるのが、芸人やることが手段じゃなくて目的になったんですよね。昔は売れるための手段としてお笑いやってたんですけど、今はどうやったら芸人を続けていられるか。とりあえずそのときそのときで面白いことをしていたら、芸人続けられるかなという考えですね」

大地「今は本当にやり続けるっていうことを一番大事にしています」

大谷「昔と違って今は正解がいっぱいあるしね。僕が10年前、DJ始めた頃は、芸人は芸人だけやってろって時代だったからたたかれたりもしたけど。でも今は『DJやられてるんですか?』って聞かれても、『又吉くんの小説みたいなものだよ』って言えばそれで納得してもらえるし(笑)。こんな芸人も、あんな芸人も、いろんなタイプがいていいって時代に変わったから。ゴールデンの冠番組やりたいとは言い続けるけど、ゴールデン=売れたって時代でもないと思うんですよ」

大地「僕らはお笑いでもコントと漫才両方やって、あとエアギターにDJに、本も出してみたり......っていろんなことやってきたけど。なにもできないから、逆にいろんなものに手を出した部分があるのかもしれません」

大谷「なにもできないからこそ、なんでもやるべきって感じかな。ジャンルにとらわれず、"楽しい"を作れるプロになりたいですね。今興味があるのが町おこし。俺たちがなにか楽しい場を作って、そこに人が集まって、観光して、お金落としてっていう流れが作れたらすごくいいなと。メインはもう俺らじゃなくてもいいんですよ。楽しいことができるなら、プロデューサーとかキュレーターみたいな立場でOK。本気で言うと、町おこしが一番の夢ですかね。ライバルはディズニーランド!」

■相方の成功に嫉妬した過去―― 今では自虐も笑いに変える

大谷「大地がエアギター世界一になったとき、俺が本気で嫉妬しちゃったんですよ。今だったら隣の自分を自虐するなりいろいろ笑いに変えられたんだろうけど。大地ばっかりインタビューで話振られるじゃん、みたいなね。だからせっかくテレビに出るチャンスがあっても先につなげられなかった。後悔してるし、反省もしていますよ。そのせいでまた2、3年ダメで、もう僕はやめて作家になろうかみたいな話もしました」

大地「でも惰性でもいいからライブ続けて......ってしていたときに、『めちゃ×2イケてるッ!』に出演できたんです。そのときスタッフの方に『ダイノジってかわいそうなとき面白いね』って言われたのがひとつ転機だったかもしれません」

大谷「かわいそうなときが面白いって言われてから、相方がエアギターで話題になって、むしろ俺おいしいじゃんって思えるようになれました」

大地「俺のほうは俺のほうで企画で家を買うことになって、またかわいそうな感じになって(笑)」

大谷「そうそう(笑)。"音楽わかってる人"とか、そんな感じの持ち上げられ方をしたくないんですよ。もう今は"イタいねダイノジ"ってイジられたい。昔、悪口だと思ってたものって、僕らが悪口にしちゃってただけなんですよね。そのときうまく立ち振る舞えば、笑いになってたかもしれないじゃないですか。だから、今は"DJやりすぎ芸人"として『有吉反省会』に呼ばれたいと思ってますし。そういう考え方になって結構気楽になりました」

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結成20周年記念公演喜劇『テイラー・バートン~奪われた秘宝~』(8月18日~23日 東京・赤坂 草月ホール)


■喜劇『テイラー・バートン』の見どころは"おじさんの無様さ"!?

大谷「コンビ20周年なにやるかってときに、とにかく人に甘えようって考えたんです。喜劇はずっとやってみたかったし、西野くんの書く戯曲が僕の理想にすごく近かった。それでまず西野くんに脚本を頼みました」

大地「今のところ僕ら以外の3チームの情報ってまったく入ってないんですよ。僕が演じる役を誰が演じるのかさえわかってない。だから僕らもほかのチームの公演普通に見に行きたいんだよね。西野くんのOKさえ出たら、脚本を変えるのもアリだから、ストーリーも全然違ってるのかも。ただでさえ面白い脚本を各チームがどう味付けていくのかっていうのは、僕たち自身も気になるポイントです」

大谷「劇作家の後藤ひろひとさんが言ってたんですけど、いい喜劇って全員被害者なんですって。加害者がひとりもいなくて、全員バカでなにか被ってしまっているのがいい喜劇だと。皆が巻き込まれているんです。今回の『テイラー・バートン』の登場人も皆まさに愛すべきポンコツたちです! あと見どころとしては、芸人20年やったおじさんがどれだけ必死になってやってるかっていうところですかね。無様ですよ(笑)」

大地「もうそこから笑いが始まっていますので(笑)。ぜひおじさんたちの無様な姿を見届けにきてください」


「とにかく売れてやる」「イタいのは嫌だ」......こういった気負いを捨てていき、コンビ20周年を迎えた今、「とにかく楽しいものを作りたい」という心境に至ったダイノジ。そんなふたりが記念公演として上演する『テイラー・バートン』は、まさに「楽しいことができるなら自分たちはメインじゃなくてもいい」という思いを具現化した舞台のようだ。


◆ダイノジ
大地洋輔と大谷ノブ彦からなるお笑いコンビ。1994年結成。大地は1972年7月13日生まれ、大分県出身。大谷は1972年6月8日生まれ、同じく大分県出身。大地は2006年・2007年と連続で「エアギター世界選手権」優勝。大谷は、「大谷ノブ彦 キキマス!」(ニッポン放送)などラジオパーソナリティとしても活躍。
座右の銘は、大地が「子分道」(清水ミチコから言われた言葉。なにかあったとき周りに助けてもらえる"子分"の人生を極める)、大谷が「DJ道」(DJであり、ダイノジの略である)。

(取材・文/大木信景@HEW
(写真:トレンドニュース)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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