ここから本文です

箭内道彦がメガホンを取った、本人いわく最初で最後の監督作品『ブラフマン』が、異例の大ヒットを記録している。結成から20年を迎える今もカリスマ的な人気を誇るロックバンド、ブラフマンの素顔に迫ったドキュメンタリー映画である本作が、ファンのみならず多くの人の心をとらえて離さないのは、苦悩や葛藤を抱えながら一つの作品を生み出すバンドの真摯(しんし)な姿勢を目の当たりにし、ただただ圧倒されるからだろう。それをたった1台のカメラで追い続ける箭内監督の"まなざし"は、時に優しく時に厳しく、そして時に無邪気。そう、これは箭内からバンドへ向けた愛の映画なのだ。

8月12日には、20th Anniversary Album『尽未来際』をリリースするブラフマン。そのボーカリストTOSHI-LOWに、作品へ向かう姿勢やこれまでの軌跡について大いに語ってもらった。

サムネイル

8月12日20th Anniversary Album『尽未来際』をリリースするBRAHMAN TOSHI-LOW


■迷ったときは、前のアルバムを聴くと大抵答えが書いてある

――『ブラフマン』は、そこにある対象を、ただ撮ってそのまま提示しているのが印象的でした。しかしそれも、あくまで箭内さんの目線で追っていて、そこがドキュメンタリーとしてかえって誠実だなと。

「いわゆるドキュメンタリーといわれるものでも、最終的には落としどころがあって、『いい人に見せたい』とか『悪い人にみせたい』とか、あらかじめ決めて撮っているものが多いじゃないですか。でも箭内に関しては、映画の落としどころ、オチを決めずに始めたと思うんですね。筋書きのないものを、ただ撮っている。でもちゃんと焦点を当てていると、何かそこにつながりが見えてくると思うんです。人間は一人で生きているのではなく、必ずつながりがあるように。そういう意味では、ちゃんと焦点を当てて(撮って)もらったのかなっていう気がします」

――映画の中でも描かれていますが、ブラフマンはやはり寡作なイメージがありますよね。1曲を体に染み込ませるために、何度も何度も演奏するなどして、レコーディングが終わったあとも、楽曲を更新し続けるそうですが。

「曲を作っているときって、どっちかというと少し背伸びしてるんですよ。自分ができることよりも、もう少し上のレベルに挑戦している。それが、何度も演奏して自分の体に収まってきたときに、初めて『あ、俺はこういうことがやりたかったんだ』っていうふうに、もう一度意味がわかってくる。歌詞においてもそうで、例えば自分が進むべき道に迷ったとき、前のアルバムを聴くと大抵そこに答えが書いてあるんです。『ああ、4年前に俺、このことを書いて歌ってたんだな』って」

サムネイル
8月12日20th Anniversary Album『尽未来際』をリリースするBRAHMAN TOSHI-LOW


――例えば受け手からのリアクションによって、曲の持つ意味に気づかされたり解釈が変わったりしていくこともあるわけですよね?

「そうですね。自分でも思っていなかったようなことを感じ取ってもらったり、あるいは誰かの大事な1曲になったりするのは、表現活動をしていく中でも究極的にうれしいことだと思う。俺、自分の曲が誰かの葬式でかける曲に選ばれたらいいなって思ってるんですよ。あるいは、墓場に持っていく曲の一つに選ばれたらすごく光栄だなって」

――映画の中で、箭内さんが「同志」とか「仲間」とか、そういうキーワードをTOSHI-LOWさんにメールで投げて、それをヒントに曲を作っていくシーンがあります。そんなことって、普段のブラフマンはきっとしないですよね?

「しないですね。あれは、『映画の主題歌を作ってくれ』ということからまず始まってて。映画の主題歌になるのだとしたら、その内容と全くかけ離れたものになってしまったらダメじゃないすか。勝手にラブロマンスの曲を書くわけにもいかないし(笑)。それで箭内からメールもらったんですけど、むしろ迷いましたね。そこまでストレートに言われたら、あれ以外書けないし、かといって『みんな手をつないで一つになって頑張ろうね』なんて俺が書いたら終わりじゃないすか」

――(笑)。びっくりすると思います。

「まあでも俺ヒネクれてるんで、『仲間? 同志? そんなのアホじゃねえの?』って思いつつ、最終的には期待に寄り添いたくなるんですけど。」

サムネイル
8月12日20th Anniversary Album『尽未来際』をリリースするBRAHMAN TOSHI-LOW


■"今"なら過去を変えられる

――今回、2枚組の20th Anniversary Album『尽未来際』がリリースされます。過去の自分の歌を振り返るとどんな思いですか?

「もちろん、今聴けば技術的には拙いし、恥ずかしいなとか、ここはこう書けばよかったなとか、後悔もたくさんあります。ただ、映画で見ていただいたように、俺、曲をサクッと作ることができないので、そのときの自分の全てを注ぎ、ベストを尽くしていたことも覚えているんですよね。そういう意味では、『ああ、よく15年前にこんな曲を、見栄張ってやってたな』とも思います(笑)」

――当時のTOSHI-LOWさんは、まさか40過ぎてもブラフマンをやってるとは......。

「考えてもいなかったっすね(笑)。ブラフマンを始めた頃に横山健(Hi-STANDARD)が6つ上で、『27でまだバンドやってるよ 恥ずかしくね?』とか言ってたから」

――きっと、今のTOSHI-LOWさんにしか書けない曲があり、この先もさらに道なき道を切り開いていくのでしょうね。

「でもブラフマンって、最初からものすごく変わった音楽をやってたので、どこにも属せなかったんですよ。疎外感が強くて、それが逆に自分たちを強くしてくれた。『俺らもう、はじめっから1位だけどビリだわ』って思って、他と競争してなかったし。もちろん、張り合ってはいましたけどね、同世代のバンドとは。そうすると先なんて見えないから、常に一瞬一瞬を張って生きていくしかない。過去を振り返ったり、未来を設定してたりしたら、やっていけなかったと思う。......俺、未来の予定を立てることって、すごく残酷なことだと思ってるんですよ」

――というのは?

「だって、『また会おう』って言って、会えなくなるのも知ってますからね。それって嘘じゃないですか。約束、破ってるじゃないですか。『また飲みに行こう』って言ってたのに、なんで二度と会えないんだよって。......だから、『また会おうね』っていうのは、簡単に言っちゃいけないんです。言ったらちゃんと、会う努力をしなきゃダメなんです。」

――きっとTOSHI-LOWさんは、自分の言葉への責任感が人一倍強く、これまで何度も言葉で傷ついてきたんでしょうね。

「いやあ、いい加減な人間なんすよ。いい加減なんすけど......でも、やっぱり寂しいじゃないですか」

サムネイル
8月12日20th Anniversary Album『尽未来際』をリリースするBRAHMAN TOSHI-LOW


――では最後に、座右の銘をお聞かせください。

「(しばらく考えて)『今』、ですかね。過去は変えられないですよね。歴史もそうだし、自分の中の過ちも。だけど、今一生懸命やること、その生きざまで過去をとらえ直すことができるっていうか。『あんなこと、なかったら良かったのに』って悔やんでいたことも、『今、ここにあるために、あのことがあったんだ』って思えるようになれたなら、過去は変えられる。てことは、今の生きざまが未来を形作っていくわけですよね。今回、映画『ブラフマン』と『尽未来際』をきっかけに改めてこの20年を振り返ってみて、そのことに気づけたのが一番の収穫ですね」

・・・・・・・・・・・
BRAHMAN(ブラフマン)
1995年、東京にて結成。メンバーは、TOSHI-LOW(Vo)、KOHKI(G)、MAKOTO(Ba)、RONZI(Dr)。ハードコアと民族音楽をベースにしたミクスチャーサウンドが特徴で、結成以来カリスマ的な人気を誇る。国内のみならず、アジアやヨーロッパでも積極的にライブ活動をおこなう。2015年7月4日に箭内道彦が監督を務めるドキュメンタリー映画『ブラフマン』が公開。同月、主題歌となったシングル『其限』をリリース。8月には20th Anniversary Album『尽未来際』をリリースする。

(取材・文/黒田隆憲)
(写真:トレンドニュース)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

「其限 ~sorekiri~」>>


「CAUSATION」>>


「ARRIVAL TIME」>>

Facebookコメント
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。
PR

最新記事

rss

もっと見る

本文はここまでです このページの先頭へ