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「ほん怖」の愛称で親しまれ、夏の風物詩にもなっているヒット番組「ほんとにあった怖い話」が今年も8月29日(土)午後9時~放映。一般の人が体験した心霊実話をドラマ化し、日常に潜むリアルな恐怖演出手法を確立、「Jホラーの父」とも言われている鶴田法男監督に、24年前にビデオ映画から始まったこのシリーズの成り立ちについて聞いた。

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8/29(土)放送「土曜プレミアム・ほんとにあった怖い話夏の特別編2015」(フジテレビ系全国ネット)鶴田法男監督
写真:トレンドニュース


■小学生時代、実際に幽霊を目撃!? 

――そもそもの発想のスタートは何だったんですか?

映画会社のビデオ部門で仕事をしていた頃、毎日レンタル店から上がってくるデータを見ながら、ホラー映画というのは確かにヒット・ジャンルだけど「13日の金曜日」や「エルム街の悪夢」みたいな映画とは違うやり方があるんじゃないか、と考えていました。そんなある日、会社帰りの電車の中で、ふっと「昔は学校の林間学校なんかで怪談話が盛り上がったよなぁ......。あれを映画にしたらどうだろう?」と思いついたんです。
 その時は実際に動き出しはしなかったんですが、その数年後、フリーになって、ホラー好きの大学時代の友人と話をしていたら、「ほんとにあった怖い話」のコミックを教えられました。早速それを読んで、出版社とビデオ会社に企画を持っていったんです。レンタル店の回転率のデータを見ていると、単なる心霊スポット紹介ものやUFOの実録ものがけっこう高回転だったんですよ。だから、こういう題材に観客のニーズがあるんじゃないか、と思いまして......。

――ご自身で監督をしようと思ったのはなぜです?

 自分が見たいようなホラー映画を撮れる監督が日本にはいない、と思ったからです。じつは僕、小学校3年生の時に実際に幽霊を見た記憶があるんですね。家にいて、2階の自分の部屋に行こうと階段を登っていたら廊下を男の人が歩いている。後ろ姿しか見えなかったんですが、その時、父も兄も祖父も家にはいなかった。母に聞いたらお客さんも来てないという。部屋に入って「あれは幽霊だったんじゃ......」と思った瞬間に怖くなったんです。その後、いろいろな日本の怪談映画を見たんですが、幽霊が出るシーンで照明が変わったり効果音を出したりするのに違和感を感じまして......。だって僕が見た幽霊は音もなく普通の明かりの中を歩いていたんですから。そんな、血しぶきや特殊メイクがなくても怖さは出せるんじゃないか、という発想の人が当時はいなかったんですね。
 あと、大学生の時に「トネリコ」という30分ほどのホラー映画を作ったことがありまして、それを企画書と一緒にビデオ会社に持っていったら、「低予算で作れるならいいよ」ということで監督もやることになりました。

――91年にビデオ版の「ほん怖」が発売され、99年からはテレビに進出します。

 計3本出したビデオはかなりヒットしたんですが、発売会社の方針転換によって中断してしまったんです。その間に紆余曲折(うよきょくせつ)があって一時監督業を休んでいた頃、フジテレビさんから突然電話がありました。「『リング』がヒットしたからテレビでもホラーが作れるかもしれないので、相談に乗ってほしい」という内容で、結局深夜枠のレギュラー番組で企画を出すことになったんです。そうしたら、上司の方が「深夜じゃだめだ、ゴールデンの2時間特番で行こう」とおっしゃって......。正直とまどいました。深夜枠で無名のキャストでやるからこそリアリティが出るのに、ゴールデンだとそれなりの有名俳優を使うことになり、ドラマ性も高めなきゃならない。そうすると怖くなくなっちゃうんじゃないかという葛藤ですね。キャスティングも当初は難航しましたし......。でも、黒木瞳さんや稲垣吾郎さんが出ると言ってくれたことで流れが変わり、視聴率も18.8%と高かった。「翌年もまたやりましょう!」と言われて今に至っているわけです(笑)。

――ビデオ版の作品のうち数本がテレビでリメイクされましたね?

 じつは映画化をもくろんで脚本を書いていたこともあって、オリジナルには手をつけたくなかったんですが......。ドラマ化しやすい原作が限られてくるのと、ビデオを作った時の不満な点がいろいろ出てきたのでリメイクすることにしました。特に「赤いイヤリングの怪」は天窓に人が落ちてくる、というのが見せ場なんですが、当時は予算がなかったのでアクリル板に俳優が倒れこむという撮影法しかできなかったんです。ちゃんと表現しようと思ったらセットを組まなきゃならない。「短編でそれは無理ですよね?」とフジテレビのプロデューサーに聞いたら、あっさりと通っちゃった(笑)。さらにビデオ版ではイヤリングが大きすぎてブローチにしか見えないという苦情もあったので、それも修正できました。

■「恐怖」は人間に必要な感情なんです

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8/29(土)放送「土曜プレミアム・ほんとにあった怖い話夏の特別編2015」(フジテレビ系全国ネット)鶴田法男監督
写真:トレンドニュース


――そんなオリジナル版が特集上映されるそうですね。

 8月24日(月)に、僕の母校である和光大学のポプリホール鶴川で、夏休みホラースペシャルとして上映会&トークショーがあります。12時半からの昼の部では「ほんとにあった怖い話」ビデオ版全作が一挙上映。17時半からの夜の部では映画「トーク・トゥ・ザ・デッド」が上映されます。夜の部には重要な脇役を演じた女優の桜井ユキが来ますし、サプライズも用意してあります。Jホラーの原点と言われるオリジナル版「ほん怖」を大画面で見られるのは、たぶん最初で最後だと思いますので、自分でも楽しみにしています。

――今年のテレビ最新版「ほん怖」の見どころを教えてください。

 今までのフォーマットだと、怖い系の作品に、不思議系や感動系の作品を混ぜているんですが、今回はがっつり怖い作品ばかりを詰め込みました。夏の映像のお化け屋敷として楽しんでいただけると思っています。

――そんな鶴田監督が作り出し、いろいろな映画やドラマに引用されるようになった「Jホラー」演出について。

 少年時代から心霊写真やつのだじろう先生のマンガなどを体験してきて、どうしてこれが怖いのか、考えていたんです。たとえば心霊写真だと、人間が写っているのに立ち位置が変だったり、みんなが楽しそうにしているのに一人だけ表情が違ったりということに違和感を感じるんです。ビデオ版の「踊り場のともだち」という作品では、少女が階段を駆け上がるロングのショットからアップに切り替わった瞬間に、そこにいないはずの人物が写りこんでいます。このシーンを編集している時に、オペレーターさんが「おおっ!」と声を上げた。その時「やった!」と思いました(笑)。特撮のいらないシンプルな演出で誰でもできたはずなのに、今まで誰もやってこなかった手法です。でも充分に怖い。それを微妙に、気付くか気付かないかのところに仕込むわけです。心霊写真の怖さは、まさにそれなんですよね。
 
――では、人はなぜ恐怖を求めるのでしょうか?

 僕は常々、人間には喜怒哀楽に加えて恐怖の感情が必要だと考えています。恐怖心がないと平気で火の中に手を入れてしまうし、崖から飛び降りてしまうかもしれない。そうしないのは恐怖がストッパーになっているからなんです。映画や小説のように、自分に直接被害がおよばないところで恐怖体験をしてストッパーを磨いておくことで、現実の恐怖に素早く対応できるし、それが幸福をもたらすと思っているんです。

「ほんとにあった怖い話」

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ピース・又吉 自身初のホラー出演=8/29(土)放送「土曜プレミアム・ほんとにあった怖い話夏の特別編2015」(フジテレビ系全国ネット)
(C)フジテレビ


 鶴田法男監督によって91年にビデオ版としてスタート、99年からはフジテレビ系で放映が開始され、今年で16年目を迎える人気ホラー・シリーズ。一般の人々が実際に体験した心霊現象を再現ドラマ化し、リアルな恐怖感が人気を集めている。出演は玉森裕太(Kis‐My‐Ft2)、又吉直樹(ピース)ほか。8月29日(土)午後9時~フジテレビ系でオンエア。

プロフィール
鶴田法男(つるた・のりお)
1960年12月30日、東京都出身。和光大学卒業後、ビデオ会社・映画会社勤務を経て91年ビデオ「ほんとにあった怖い話」で監督デビュー。映画の監督作品に「ゴト師株式会社」(93)「リング0~バースデイ~」(00)「案山子」(01)「予言」(04)「おろち」(08)「トーク・トゥ・ザ・デッド」(13)「Z~ゼット~果てなき希望」(14)などがある。
座右の銘:「人との出会いが人生最大の宝」

(取材・文/紀平照幸)

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