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90年代の邦楽界を制したアーティストは、10代の少女たちだった――。デビュー時の平均年齢はほんの13.5歳と子供だったにもかかわらず、その後ミリオンセラーを連発したSPEEDの伝説は今なお輝く。

まさに恐るべき子供たちといえたボーカル&ダンスグループ・SPEED。メンバーの今井絵理子は、当時をどう振り返る? 邦楽界の頂点に立った少女たちの目に、時代はどのように写っていたのだろうか?

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「90s TV(ナインティーズティーヴィー)」インタビュー 今井絵理子


■恋人たちがうらやましかった

「実はあまり90年代の記憶がないんですよね。何かに夢中になっているときって周りが見えなくなっちゃうじゃないですか。上京して周囲の環境がガラッと変わりはしたけど、とにかく歌とダンスに夢中だったし、今思い出そうとしてもちょっと記憶がぼんやりと......(笑)。ただ初めて出演した音楽番組が『THE夜もヒッパレ』だったんですけど、局に入ったときに、夜なのに皆が『おはようございます』ってあいさつしていたのは今も印象に残っています。自分はこういう世界に入ったんだと幼心に感じました。

あとは修学旅行に行きたかったのに行けなくて寂しかったのも覚えていますね。我慢しないといけないことはいろいろありましたが、やっぱり普通に男性と手をつないでデートしてみたかったな。メンバーたちと冬に表参道をドライブしていたとき、皆で『ここにいるすべての恋人たちへ!』って窓開けてスピーカーで『White Love』を流したら、マネジャーさんに『閉めなさい!』って叱られちゃったりね。恋人たちがすごくうらやましかったんでしょうね。当時は4人全員、恋は片思い止まりだったんじゃないんでしょうか。たとえ両思いになれる状況になったとしても、やっぱりSPEEDっていう意識があるからストップしたと思います」

■「Body & Soul」MV撮影で倒れた

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「90s TV(ナインティーズティーヴィー)」インタビュー 今井絵理子


「確かにCDの売れ行きはすごかったかもしれないけど、私たち4人は全然気にしていませんでした。そこがグループの強みでもあったし、スタッフさんが苦労したところだったんじゃないかな。ビジネス的じゃないのがSPEEDなんです。だから金銭感覚が狂ったりなんかもなく......。月3万円くらいお小遣いとして渡されていました。だけどお小遣いもほとんど貯金していました。とくに買いたいものもなくて、ご褒美がプッチンプリンだったというような生活でしたから。

お仕事は楽しかったけど、唯一つらかったのは『Body & Soul』のMVを撮影したときかな。サンフランシスコとかで撮ったんですけど、砂漠で撮影していたら熱中症で倒れちゃって(笑)。あれだけはもう二度とやりたくない(笑)。悔しかったのは、日本レコード大賞をとれなかったこと。新人賞はいただいたんですけど、大賞はとれていないんですよ。

オフの日も9割はメンバーが相手。仕事も遊びもずっと一緒でした。だからライバルであり、友人であり、ファミリーでもあるという関係。それは今も変わりません。(新垣)仁絵ちゃんのアイデアで月1会議っていうのを皆でやっていたんですよ。ストレスをためないようにそこではお互い不満をぶつけあおうって。私はヒロちゃん(島袋寛子)に『パンの耳だけを食べるのやめて』って言われました(笑)。そういうささいなことも伝えるようにしていたから、メンバーと大きなケンカをしたことは一度もありませんでした」

■90年代は"夢がたくさん叶(かな)った年"

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「90s TV(ナインティーズティーヴィー)」インタビュー 今井絵理子


「今年ヒロと"ERIHIRO"っていうユニットを組んだんですよ。ふたりで一緒に歌うのは、2、3年ぶりかな? やっぱりSPEEDの肩書があるときはSPEEDっぽく歌わなきゃっていう気持ちがあるので、ERIHIROでは肩の力を抜いて今の私たちを表現しています。お互い歌い方も昔と変わっているし、『ヒロはどういうアプローチをしてくるだろう?』なんてワクワクしながら歌っています。

もうSPEEDって私たちだけのものじゃないですから。"SPEEDの今井絵理子"として歌うとなると、自然と背筋がピーンッとするんですよね。だからSPEEDの肩書を背負うとなったら、リラックスした感じではできません。SPEEDってそういう特別な存在なんです。

90年代はものすごい勢いで過ぎていきました。今一言で振り返ってみるなら、"夢がたくさん叶(かな)った年"ですね。自分が歌手になりたいと思ったのが5歳で、そこからトントントンと夢への階段を上っていって、叶(かな)ったのがあの時代。SPEEDだから我慢したこともあったけど、それでもSPEEDでいてよかった。今はメンバー4人それぞれ違うことをやっていますけど、また何か機会があったときは、4人で背筋ピーンッとさせたいですね。グループがなくなったわけじゃないですし、すてきな楽曲はそのまま輝いていると思いますから、歌えるタイミングがあったらまた皆で歌いたいですね」


大人になった少女は、めまぐるしく過ぎていった日々を懐かしげに振り返る。今井にとって、そして90年代を生きた誰にとっても特別なグループ・SPEED。4人がそろってまた"背筋をピーンッ"とさせる日は来るのか。誰もがその奇跡を夢見ている。

今回インタビューを実施した「90s TV(ナインティーズティーヴィー)」は、 音楽・映画・バラエティ......日本のエンタメ黄金期1990年代当時のコンテンツと共に振り返る、大人のエンタメチャンネル。9月度は、牧瀬里穂が演じる沖田総司が話題を集めた映画「幕末純情伝(1991年)」や赤塚不二夫生誕80周年記念として「平成天才バカボン」、90's J-POPを象徴する槇原敬之のヒット曲など一時代を形成した90's コンテンツを無料配信中。

◆今井絵理子(いまい・えりこ)
1983年9月22日生まれ、沖縄県出身。沖縄アクターズスクール出身で、1996年にSPEEDのメンバーとしてデビュー。2000年にグループが解散し、2008年再結成。ソロアーティストとしても活動を続ける。今年8月26日、島袋寛子との新ユニット・ERIHIROのデビューシングル「Stars」を発売。

(文/原田美紗@HEW
(写真:トレンドニュース)

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