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母に連れられて見知らぬ街をさまよう少女・千秋。ふと降り立った駅で見かけたポプラの木に何かを感じた二人は、その木のあるアパートで暮らすことにする。そこには不思議なおばあさんがいて、「天国に手紙を届けることができる」と千秋に告げるのだった。大好きだった父の突然の死で精神のバランスを崩しかけていた千秋は、手紙を書くことで明るさを取り戻していくが......。『夏の庭―The Friends』『岸辺の旅』の湯本香樹実原作のロングセラー小説の映画化。『家政婦のミタ』の人気子役・本田望結の映画初主演作で、中村玉緒が共演。監督は『瀬戸内海賊物語』でやはり少女の姿を生き生きと描いた大森研一。その大森監督に、映画化にかけた思いを聞いた。

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9月19日から公開映画『ポプラの秋』 大森研一監督
写真:トレンドニュース


ポプラの秋 プロモーション映像 劇場予告編>>


■撮影のためにポプラの木を移植!?

――もともと原作の大ファンだったそうですね?

 原作が発刊された当時、友人の勧めで何気なく読み始めて、すっかりハマってしまいました。その時からずっと自分の手で映画化したいと思っていましたが、すでにテレビドラマ化されていたこともあって「無理だろうな......」という思いもあったんです。そんな時、この映画のプロデューサーさんからお話をいただきまして。うれしかったですね。まさに運命の出会いでした。

――どんな点に魅力を感じたのですか?

 読んでいて絵が浮かんでくるんですよ。おばあちゃんと女の子が縁側に座っている光景とか。特に印象的だったのは、母親と二人でさまよっている雰囲気ですね。見知らぬ街を歩いたり、駅のホームにたたずんでいたり。頭の中にこうしたイメージができ上がっていたので、脚本はスムーズに進めることができました。

――舞台となるポプラ荘はどうやって見つけたのですか?

 原作では地名は書かれていないんですね。それでプロデューサーの出身地ということで飛騨高山を舞台にすることが決まって、そのあたりの物件はほとんど見たんじゃないですかね。庭があって縁側があって、というこのタイプの建物は意外にないんですよ。ようやく取り壊し予定の家を見つけまして、撮影後に更地にして戻すという条件で借りることができました。

――映画に登場するお店も実在するものばかりだとか。

 そうです。高山で撮るということで、原作の中に高山らしさを、あまりCMっぽくない感じで入れていきたいと思って脚本を書きました。その中で高山名物の「さるぼぼ」をストーリーに絡めることができて、ラストへの伏線のような使い方になったのはよかったな、と思っています。

――タイトルにもなっているポプラの木はよそから持ってきたとか...。

 都合よくポプラが生えている庭があるわけもないので、これに関しては撮影開始ギリギリまで悩みました。足元の部分だけ作り物を使って、上の方はCGで処理することも考えたし...。ポプラの木自体が少ないんですよ。しかし、あの存在感はどうしても必要だと思っていたら、幸い譲ってくださる方がいて。さすがに大きな木をそのまま運べないので、4~5mカットして大型トラックで移動させました。僕自身はその工程に立ち会ってはいないのですが、道が狭かったりして、けっこうな難事業だったようです。
 移植は専門家の方にお任せしたんですが、その方には「植えても3~4日で葉が落ちてしまうだろう」と言われていました。でも、毎日水をあげていたら、どんどん元気になって、根をはってしまったんです。とはいえ更地に戻す約束でしたから、元の場所に再度植え替え。なんとこれにも成功して、今も元気でいますよ。

■現場のムードメーカーだった本田望結

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9月19日から公開映画『ポプラの秋』 大森研一監督
写真:トレンドニュース


――前作『瀬戸内海賊物語』でも子役をお使いになっていますが、大人とは演出の付け方に違いはありますか?

 最近の子役の演技力はなかなかすごいですからね。でも、あんまり事前に説明してやると、その通りに演じてしまって発展性がなくなるんです。だから一度は自分の感覚でやらせてみて、方向性の軸がぶれていたら修正する、ということにしています。

――映画初主演の本田望結ちゃんはいかがでした?

 普段はすごく元気。とてつもなくはしゃぎまわっていました。もちろん、切り替えはしっかりしているので、本番になったら一気に役に入り込んでいくんですが。彼女は撮影がない日にも現場に遊びに来てくれて、スタッフを和ませていました。彼女が演じる千秋はお父さんに毎日手紙を書いていますが、望結ちゃん自身も手紙を書くのが大好きで、みんなに渡していましたね。ムードメーカーの役割をきっちり果たしていました。

――この映画のここを見て欲しい、という部分を...

 ポプラ荘の不思議な空間ですかね。一本のポプラの木と少女とおばあちゃんと、そう、木も出演者の一員なんですよ。そこでの二人の目線の交わりを面白く描けたんじゃないかと思っています。

■芸大卒業後に夜間学校で映画を勉強

――監督ご自身が映像作家になった経緯を教えてください。

 昔から、あれもこれもしたい、というタイプだったんです。で、総合芸術である映画だったら、その中で何でもできるんじゃないかと。それに、劇場の中で何百人もの観客が感情を共有している感覚が好きなんです。自分の作品でそれができたらいいなと思い、ずっと映画を撮りたいと考えていました。しかし現実的ではないという判断もあって、大学は大阪芸術大学なのですが、僕は映像学科ではなく建築科で、図面を引いていたんです。ところが映像学科の同期に熊切和嘉(『鬼畜大宴会』などの監督)や山下敦弘(『リンダリンダリンダ』などの監督)なんかがいて、彼らの映画を手伝っているうちにやっぱり映画が撮りたくなってしまった。それで卒業後に、昼間は新聞記者みたいな仕事をして働きながら、夜間の映画学校で勉強して、短編映画を撮り始めたんです。

――今後、手がけてみたい企画はありますか?

 あくまでもエンターテインメント、大衆向け、ということにはこだわっていきたいですね。今考えているのは、幕末の、まだネタとして拾われていないものを取り上げていけたら、ということです。面白いものができる予感はあります。

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9月19日から公開映画『ポプラの秋』 人気子役・本田望結の映画初主演作で、中村玉緒が共演
(C)2015『ポプラの秋』製作委員会


映画『ポプラの秋』は、湯本香樹実のロングセラー小説を『瀬戸内海賊物語』の大森研一監督が脚色し映画化した感動作。父を突然亡くし、失意の母(大塚寧々)と二人でポプラ荘に引っ越してきた8歳の千秋(本田望結)。小さな心を痛めている彼女にアパートの大家(中村玉緒)は、天国の父に手紙を書くように勧める。大家さんは「天国に手紙を届けることができる」というのだ。熱心に手紙を書き続ける千秋は、アパートの住人たちとの交流の中で明るさを取り戻していく。やがて時は流れ、大人になった千秋(村川絵梨)のもとに、ある知らせが届く...。他に藤田朋子、宮川一朗太、山口いづみ、内藤剛志らも出演。9月19日から公開。

大森研一(おおもり・けんいち)
 1975年、愛媛県出身。大阪芸術大学卒。短編映画で数多くの賞に輝き、2010年『ライトノベルの楽しい書き方』で劇場用長編を初監督。『恐怖新聞』(11)やテレビのオムニバスドラマ『水木しげるのゲゲゲの怪談』(13)を手がけた後、エンジェルロード脚本賞でグランプリを受賞した自らの脚本「笛の伝言~瀬戸内海賊物語」を映画化した『瀬戸内海賊物語』(14)を発表。本作『ポプラの秋』(15)は長編4作目の監督作品となる。
座右の銘:「為せば成る」

(取材・文/紀平照幸)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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