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黒いジャージにスカーフ姿の"夜ト(やと)" は、まつられる社のひとつもない貧乏でマイナーな神様。そんな彼が、七福神のひとりで最強武神である"毘沙門"から命を執拗(しつよう)に狙われ続ける。ふたりの間に秘められた過去とは......?

「月刊少年マガジン」で好評連載中、コミックス累計500万部を突破した、あだちとか原作のコミック「ノラガミ」。2014年1月~3月にアニメ化され、神を題材にしたユニークなキャラクター、設定が人気を集めたが、そのアニメ化第2弾となる「ノラガミ ARAGOTO」が2015年10月2日よりMBS・TOKYO MX・BSフジにて放送開始となる。そこで今回は「ノラガミ」の担当編集者であり、「月刊少年マガジン」副編集長の高見洋平氏にその魅力について聞いた。

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10月3日放送「ノラガミ ARAGOTO」担当編集者、「月刊少年マガジン」副編集長の高見洋平氏


「ノラガミ ARAGOTO」プロモーション映像 予告編 >>


■アニメの脚本作りには1年を費やした

――昨年2014年1月から3月に放送された「ノラガミ」に続き、10月2日からアニメ版第2期となる「ノラガミ ARAGOTO」の放送が開始されます。第2期では主人公の夜トと、彼に恨みを抱く武神・毘沙門との過去の因縁がストーリーの中心になるのでしょうか?

そうですね。第1期では、ふたりの因縁について具体的には触れられていなかったので、当然、第2期はそこが大きな盛り上がりのひとつになります。第1期以上にバトルシーンが盛り込まれる予定なので楽しみです。アニメ版第1期を終えた時に、またこのキャスト・スタッフの皆さんとお仕事ができたら最高だと思っていたので、本当に夢みたいです。

――オリジナル要素が第1期にはありましたが、第2期でも入るのでしょうか?

第2期に第1期のようなオリジナルのキャラクターは出てきません。ただし、構成などを変えている部分はあります。原作は道なき道を行くかのごとく作っているのですが、アニメはその道を整理しながら作ることができるので、非常にわかりやすく楽しめると思います。

僕はまだ1話しか観ていないんですが、キャストの皆さんの力が加わって、原作とはまた違った魅力が出ていると思います。特に夜ト役の神谷浩史さん、毘沙門役の沢城みゆきさんといった超一流の声優さんによる芝居が胸に迫ってきて、すごいなと思いました。毘沙門とのバトルもワクワク感や爽快感がありつつも、その中に悲しみやせつなさといった、感情が揺さぶられる物語があるのですが、それを的確に表現できる声優さんって本当にすごいなと思います。声だけ聞いていても泣いてしまう時がありますからね。

――高見さんはアニメ版の脚本作りにも積極的に参加したと聞きましたが。

僕は原作担当という立場で参加させてもらいました。ただ、本当に長い道のりでしたね......。第1期の時は全12話だったんですが、脚本を作るためにボンズ(アニメ制作会社)に1年ぐらい通い詰めました。だから第2期をやるよと言われた時も、スタッフは同じメンバーだからさすがにもっと早く終わるでしょと言っていたんですが、結局、脚本作りには第1期と同じ12カ月くらいかかってしまいました。1話あたりで一番多くて10稿(10回目の改訂版)、普段でも8稿というのは当たり前でしたね。

■原作を大事にしてくれたスタッフ

――具体的にどういったことに時間がかかるのでしょうか?

とにかくひとつひとつのシーンの精度を、ひたすら高めていくということ。まるで日本酒を造るように、米を磨いて、磨いてといった感じで。そういったことを延々とやっていました。監督をはじめ、原作をとても大切にしてくださるスタッフなので、そこにアニメならではの醍醐味(だいごみ)をどうやって付け加えていくのか、といったところですね。会議はほぼ毎週。ボンズさんに集まって、1回あたり5、6時間は話し合っていました。それが1年間ですからね。原作サイドとしても安心できる形で進めていただきました。本当に丁寧に作っていただいたのでありがたかったですね。

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10月3日放送「ノラガミ ARAGOTO」担当編集者、「月刊少年マガジン」副編集長の高見洋平氏


――あだちとか先生の感想は?

第1期放送の前週くらいまで、アニメ化になるということを信じてもらえなかったんです。「本当はやらないんでしょ? 壮大なドッキリなんでしょ?」と。こちらも「そんなドッキリをして、誰得なんですか」なんて返してはいたんですが。実際に放送が始まったら、「夜トさんかっこいい」とか、いちファンとして観ていたようですね。それでも第2期が決まりましたよと言ったら、あだちとか先生は「またまた~」と。こちらとしては、またそこからですか。いい加減、信じてくださいよ、という感じなんですが(笑)。

――あだちとか先生の作品の魅力は?

とにかく、生み出すキャラクターがすごくいいですね。どれもカッコいい/かわいいんですが、それでいて深いキャラクターが描けるのも魅力です。それから、先生のキャラクターを見つめるまなざしがとても温かいですね。ご本人の人柄がにじみ出ています。

■これからもきっと面白いマンガが出てくる

――ところで話は変わりますが。現在はコミック雑誌の販売部数も減少傾向にあると聞いていますが、そんな現状をどう見ていますか?

マンガや出版に限った話ではなく、今はどの業界も変革期なんだと思うんです。そんな中でわれわれの強みは何だろう。それを生かす道は何だろうと考えているところではないかと。もちろん昔は黙っていても本が売れたという時代もありましたが、だからと言って、昔は良かったと言っても仕方がない。逆に、新しいことにチャレンジできる時代なんだとポジティブにとらえるしかないと思っています。

――新人発掘についてはどうお考えですか?

われわれにとって新人発掘をするということは、畑を耕すことと一緒で、非常に当たり前のこと。僕らはオリジナルのものを生み出す制作者として『第一次産業』みたいなものだと思っているので、そのやり方を変える必要はない。そこにこそわれわれの強みがありますし、これからも絶対に面白いマンガが出てくる、ということに関しては何の疑いも持っていないですね。もちろんデジタルにどう対応するか、どういう層に届けるのか、ということは、そのタイトルごとにきめ細かく誠実に考えて届けていくしかないと思っていますが。

――映画やアニメなどの世界では、小説やコミックの原作があることが重視され、オリジナルの企画が通りにくいと言われています。そういう意味でコミックを第一次産業に例えるのは面白い指摘です。

マンガの世界にも原作ありきのコミカライズといった作品もあります。二次的なものがオリジナルに比べてレベルが低いわけではないですし、そこに上下はありません。ただ、われわれの世界ではオリジナルの企画が通らないということは絶対にないですし、ゼロからものを生み出せるということに関しては楽しい仕事だと思っています。

――ゲーム、アニメ、映画など、最初からメディアミックスを狙って作るということはありますか?

こればかりは本当にケース・バイ・ケースですね。作家さんや、編集者によっては、最初からメディアミックスを前提でやるぞという人もいますけど。僕個人としてはあまり考えたことがないですね。もし考えたとしても、捕らぬたぬきの皮算用になってしまうように思うんです。

20年くらい前なら、「映像不可能」と言われる作品もたくさんありましたが、今はもうそんな作品はないんじゃないかと思うんです。ゲームやアニメ、実写の世界にも、すばらしい才能を持つクリエーターの方がたくさんいます。だからこちら側としては、多少形がいびつであっても、おいしい素材(オリジナル原作)を作りさえすれば、世界には才能あふれるシェフ(クリエーター)がたくさんいるので、きっと最高の料理を作ってくれると信じているんです。

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10月3日放送「ノラガミ ARAGOTO」担当編集者、「月刊少年マガジン」副編集長の高見洋平氏


――最後に。座右の銘は?

「真実は常に中間にある」ですかね。何かひとつのことを考える時には、その真逆のことも考えてみると、だいたい答えはその中間に見つかります。何かに向かって突っ走る時はどうしても視野が狭くなりがちなので、なるだけバランスをとるように心がけています。


※本作のヒロインは、交通事故に遭いそうになった主人公・夜トを助けようとしたことがきっかけで"半妖(魂が抜けやすい体質)"となった良家の令嬢・壱岐ひより。高見氏は「最初の構想から、設定が一番変わったのはひよりちゃんですね。『ノラガミ拾遺集』という本の巻末に初期設定集が載っているんですが、ひよりって今みたいなお嬢さまという設定じゃなくて、最初は猫っぽかったんですよ。でも、ひよりは、夜トと雪音を一般人の目線から見ているカメラの役割なんで、あだちとか先生と話し合っていく中で次第にお嬢さまのようなキャラクターになっていったんです」と振り返る。高見氏によると、編集者の役割は、読者の代表として、疑問や気になる点などを作者にぶつけて、質問をしていきながらより良い作品に仕上げることだという。縁の下の力持ちとして、編集者の役割を想像しながらマンガを読んでみるのも面白いかもしれない。


高見洋平(たかみようへい)
1998年講談社入社。以来「月刊少年マガジン」編集部に在籍。主な担当作品に『ノラガミ』『アライブ 最終進化的少年』『BECK』『RiN』『ボールルームへようこそ』『Q.E.D.-証明終了-』『龍狼伝』など。

(取材・文/壬生智裕)
(写真:トレンドニュース)

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