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「ヤーガ」と呼ばれる未確認生物(UMA)を追い求め秘境を探検する撮影クルーの面々を描いた映画『探検隊の栄光』(10月16日公開)。この短いプロットだけでも80年代に人気を博した「川口浩探検隊シリーズ」を思い浮かべる人は多いだろう。お茶の間でテレビを囲み「そりゃないだろう!」と突っ込みを入れる親の横で"謎の原始猿人バーゴン"にワクワクした子供たち。そんな絵が浮かんでくるような映画を作りたい――。メガホンをとった山本透監督に本作に込めた熱い思いを語ってもらった。

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10月16日公開映画『探検隊の栄光』 山本透監督


探検隊の栄光 プロモーション映像 劇場予告編 >>


■キーワードは"お茶の間"感覚

 本作の原作は『ちょんまげぷりん』など個性的な作品を世に送り出している荒木源氏の小説。未確認生物ヤーガを探しに行くというテーマは同じだが、ゲリラや闘争部分も色濃くかなりビターな内容。本作のザ・エンターテインメントとは大きく違う。

 「映画にはいろいろあっていいと思いますが、僕はハッピーエンドで終わる作品が好きで、鑑賞後、どれだけ気分よく映画館を出てもらえるかという部分で勝負したい作家。ハッピーで底抜けに明るく『ありえないよ!バカじゃないの !』って、家族一緒にお茶の間でテレビを囲んで集まるような......、そんな楽しい気持ちになってもらえる映画を作りたかったんです」。

 ビターな内容を、底抜けに明るいテーマに変えてまで、この原作を映画化した理由を問うと、「自分自身が20年以上映画業界にいて、クルーものをやりたいという思いがあったんです」と語る。「映像の世界って若者からおっちゃんまでさまざまな人がいますが、一つのシーンを撮るために、みんな死にもの狂いでやっている姿って、はたからみると遊んでいるようで滑稽だけれど、引いてみるととても格好良く見えたり、魅力的なんですよね」。

■「昔は良かった」という説教くさい映画にはしたくなかった

 「底抜けに明るく、楽しい気持ちになる映画」というテーマの一方、コンプライアンスという言葉のもと「やらせ」や「過剰演出」などに過剰反応する「おかしみのない現代」へのアンチテーゼも裏テーマとして内在されているように感じる。
「最初の設定では、そういう部分も含めようという意図はあったのですが、考えれば考えるほど『昔は良かった』って説教くさくなってきちゃうんですよね」と、あくまでエンターテインメントに特化した作品であることを強調する。

 山本監督の言葉通り、劇中では、ただひたすら「面白いものを提供しよう」という一心で、バカがつくほど真っすぐに悪戦苦闘する人々たちが、コミカルに描かれている。そんな中でも、前述したような「アンチテーゼ」が恩着せがましくなくスッと入ってくるのは、山本監督の絶妙なさじ加減から来るのだろう。説教臭くなく、自然と心にノスタルジックな気持ちが沸いてくるのだ。

 「とは言っても、僕自身『昔はもう少し自由だったな』と感じることはあります。作り手と視聴者との信頼関係というか『楽しんでもらいたい』という思いが、いろいろなことでなかなか伝わりづらくなっていますよね。作る側も見る側も解釈が狭まってしまっていて、昔よりも閉塞感を感じているのは事実ですね」。

■藤原竜也をあて書きした主人公

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10月16日公開映画『探検隊の栄光』
(C)2015 「探検隊の栄光」製作委員会 (C)荒木源/小学館


 登場人物のキャラクターの愛らしさと絶妙なバランスも本作の魅力の一つだ。主演の藤原竜也をはじめ、ユースケ・サンタマリア、小澤征悦、田中要次、川村陽介、佐野ひなこ、岡安章介(お笑いコンビ「ななめ45°」)など個性派が勢ぞろい。中でも、探検隊長を務めた藤原は"落ち目の俳優役"というこれまでのイメージとは違った役柄で、劇中ではじけている。

 「巻き込まれ型の主人公。『インディ・ジョーンズ』みたいな冒険に参加すると思って撮影に来たら、クルーは5、6人だし、ムチャクチャなことをやらされる。"熱い役"がヒットしたから世間から"熱い人間"とレッテルを貼られている俳優が『俺って本当は熱くないのにな~』と自覚しつつ、結局はムチャクチャ熱くなっているという役者バカ......。藤原さんは最高のキャスティングだなと」。

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10月16日公開映画『探検隊の栄光』
(C)2015 「探検隊の栄光」製作委員会 (C)荒木源/小学館


 山本監督が練りに練った脚本。藤原とは面識がなかったというが、「本を見せたら面白いしやってみたいって言ってくれたんです」とオファー当時を振り返る。「それからは完全に主人公は藤原さんをイメージしたあて書きでした。今はなかなか難しいのですが、準備稿が上がった段階でキャスト全員に集まってもらって本読みしたんです。それを見てさらに直しを入れたりしたので、藤原竜也の魅力がより一層際立った主人公になっていると思います」と劇中さながらの一体感が作品のクオリティを上げていることを明かしてくれた。

■モノ作りへのこだわり、映像作品への思い

 山本監督が最も大切にしていること――それは「鑑賞するお客さんに伝わっているかどうか」だと語る。
「撮影中のアドリブなどは、現場ではウケることも多いですが、その場にいるノリで面白いだけで、お客さんとは温度差があるかもしれないという視点は常に持ちながら撮っています」。その意味で、本作は緻密な演出のもと、どうやって視聴者に伝わるか、「バカじゃないの!」と突っ込んでもらえるような間も計算されているという。

 岡安演じる胡散(うさん)臭い現地通訳マゼランが操る架空言語・ベラン語も映画に合わせて制作した。「どんなに芝居がうまい人でも、適当な言葉をしゃべると会話しているように見えないんです。なのでタイやベトナムなどのアジア方面の言葉をミックスした言語を演出部と作り、主語、述語は日本語と同じように並べて会話を成立させたんです」。

 こうした「視聴者の視点に立ったモノ作りへのこだわり」は作り手としては当然のことなのかもしれないし、山本監督自身も劇中、あえて強調していない。しかし、藤原が「過酷を極めた」と語るような極限の状態の中、「おかしみ」を持ってまい進するクルーの滑稽かつすがすがしい姿が「鑑賞者に伝わる映画」という山本監督のこだわりを代弁している。「僕自身、映画に圧倒的なパワーをもらってきた。『難しく考えず、気楽に行こうぜ!』っていう映画をこれからも撮り続けたい」。この思いが山本監督の映画作りの原動力なのだろう。

(取材・文・写真:磯部正和)
(写真:トレンドニュース)

◆山本透(やまもととおる)

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10月16日公開映画『探検隊の栄光』 山本透監督


1969年生まれ。東京都出身。2005年に映画『幸せになろうよ』で監督デビューを果たす。2008年には『キズモモ。』、2012年には大泉洋・麻生久美子を迎えた『グッモーエビアン!』で監督を務めるかたわら、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010年)、『夫婦フーフー日記』(2015年)、『アンフェア the end』(2015年)では助監督・監督補として作品に参加。待機作に杉作が原作のほのぼのコミックを実写化した『猫なんかよんでもこない。』(2016年1月30日公開)が控えている。座右の銘は「あると思えばある ないと思えばない」。

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