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近年、「ローカル局の番組が面白い」と言われるようになって久しい。低予算を逆手にとったアイデアや、温かみを感じさせる内容への注目度は高くなってきている。そんなローカル局が盛り上がりを見せる中、九州エリアを中心に熱い注目を集めているバラエティー番組が、FBS(福岡放送)毎週月曜深夜0時54分から放送中の『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』だ。
視聴者からの超個人的な調査依頼を「あなたの願い叶えます!」というキャッチフレーズのもと、独自に解決に導く――。素人参加型バラエティーとなる本番組は、「25歳の私の反抗期を終わらせて」や「お化け屋敷かと見間違える老朽化した自宅をなんとかしてほしい」などユニークな相談の数々や、福岡在住のお笑い芸人 斉藤 優(パラシュート部隊)による涙あり笑いありの県民いじりなどが特色だ。深夜放送にもかかわらず最高視聴率8.0%(占拠率34.9%)を記録し、3人に1人が見ているという愛されぶり。ネット配信でも動画再生回数が100万回を超えるなど、九州のみならず、いま全国的にファンを増やしている。

今回は同番組を立ち上げた福岡放送の藤谷拓稔氏に、ローカル局の番組だからこそ生まれた"発見らくちゃく!"の魅力について聞いた。

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『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』プロデューサー兼ディレクター福岡放送の藤谷拓稔氏


「一緒に演奏してあげれば良かった! 天国のおじいちゃんと孫との共演! おばあちゃんに贈るラブソング」>>


■解決は、依頼内容の深層心理を探ることから

――自分がガンで死んだ後、ひとり残されるおばあちゃんが寂しくないように未来のラブレターを書き続け、それを部屋のあちこちに隠していたおじいちゃんの姿を追った「天国からのラブソング」が今年8月に放送されました。放送後も視聴者の賞賛が止まず、FBSには再放送を求める声が多数寄せられ、放送2カ月後には異例の早さでアンコール放送が行われるなど、大変な反響を集めたそうですね。

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『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』奇蹟のコラボ!!天国からのラブソング
(C)FBS


「地元視聴者の願いをテレビの力でかなえる」という本番組ですが、毎回の企画はどのように決めているのでしょうか?

藤谷:基本的には依頼者からのお悩みメールから始まります。それらを全部読んだ上で、毎週30人~40人くらいに電話をかけます。ただ、結局はメールもきっかけでしかないと思っています。見ず知らずの人間に、勇気を出してメールを送ったとしても、その思いがすべて言葉で現れているとは限らない。深層心理には、別の悩みがあるのではないか。だから1個の依頼が形になるまでには、何度も依頼者とコミュニケーションを重ねていくようにしています。

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FBS(福岡放送)毎週月曜深夜0時54分から放送『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』
(C)FBS


――話し合うことで、依頼者の悩みを探っていくと。

藤谷:そうですね。そして、その人自身のことも聞き出します。例えばこれまでの依頼で、ただ一言だけ、「腕立て伏せができるようになりたい」と送られてきたことがありました。最初、スタッフは誰もそれに見向きもしなかったんです。でも、ちょっと考えてみてほしいんですが、夜中の2時とか3時に「腕立て伏せができるようになりたい」、ただそれだけメールを送ることってあるでしょうか? そこには何か別の理由があるんじゃないかと思ったんです。

――そこで電話をかけるわけですね。

藤谷:話を聞いてみたら、「何をしていてもダメで。女の子からカッコいいと言われたことがない」というんですよ。だから「腕立て伏せができるようになりたい」んだと。そこから「一度でいいからカッコいいと言われてみたい」という依頼に変わりました。彼と話を積み重ねていくうちに、ゲームの「太鼓の達人」がものすごくうまいことが分かってきた。それだけは誇れるんだと。だったら本物の太鼓のパフォーマンスをやってみたらどうかと提案して。そこで激しい太鼓のグループに彼を入門させて、意中の女の子に見てもらうことにしたんですよ。「100%フラれるだろうけど、カッコいいとだけは言わせようぜ」と言って送りだしたんですが、結果的になんと彼らは付き合うことになっちゃいました。そういう風に、依頼内容の心理と解決策を一緒に見つけていく、というスタイルでやっています。

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『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』女子大生に大人気!西鉄バス運転士鈴木さんの素顔を知りたい!
(C)FBS


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ナンデモ特命係 発見らくちゃく! 19歳の親不孝娘!!初めての母孝行SP
(C)FBS


――取り上げるかどうかはどこで見極めるのでしょうか?

藤谷:依頼者が依頼を書いている背景を想像します。特にメールが送信された時刻は気になりますね。例えば送信時間が朝5時だったりすると、番組を見終わってから、おそらく4時間くらい考えに考えてやっとボタンを押したんだろうなと想像するわけです。「相当勇気がいったでしょ」と聞いたら、やはり「めっちゃドキドキしました」という返事でした。
たとえそのときは採用できなかったとしても、1カ月、2カ月くらいたってから、そういえばあの人はどうしているかなと思い出すこともあります。そんな時はすぐに「元気?」と電話をかけるんです。途中経過を聞くうちに、その人に好きな人ができたり、新たな悩みが起こったりして。そういった流れで後から依頼を採用したケースはたくさんあります。

――この番組は、視聴者と制作者の距離が非常に近いように思うのですが。

藤谷:やはり今までこの番組に出てくださった依頼者の姿を見て、「この番組だったら自分の話を聞いてくれるんじゃないか」と信じてくれているんだと思うんです。そこを怠ったら、番組として成り立たないと思っています。

■視聴者に届けたいのは「リアルな喜怒哀楽」

――解決方法も一筋縄ではいかない時もあるのでは?

藤谷:以前、告白系の悩みで、「最強のダサ男」という企画がありました。彼は容姿がイケてないと悩んでいたので、まずは美容室に行って髪を染めようということになったんですが、急に小さな声で「うちのオヤジが許さないかもしれない。お父さんはガテン系で怖いんです」と言い出した。容姿をいじれない......、僕らの頭の中にはお蔵入りの文字が浮かびました。通常の番組なら、事前にお父さんに連絡してオッケーをいただいてから、予定調和で進めるんでしょうけど、僕らは、お父さんに電話するところからカメラで撮ることにしたんです。全員が緊張したんですが、お父さんの返事は「茶髪にしてもええんやないか」。その瞬間に男の子の目からは涙があふれてきて。お父さんとの電話が切れた後は「茶髪にできるぞ!」と一同拍手が起こりました。

そのときにこういうことなんだなと思ったんです。他人から見ると小さい悩みでも人の一大決心は大切にしたいし、それをファーストリアクション、つまり「喜怒哀楽」にひっかかったものだけをそのままの形で届けたいと思っています。僕らも人間だし、テレビで見たいのは人間ですから。
実はお蔵入りもけっこうあります。基本的にローカル局では、採算のことを考えるとありえないことなんです。でも予定調和は力のない番組になる。だからお蔵入りしてもいいからやろうよと言って、やっています。

――番組を作るうえで気をつけていることはありますか?

藤谷:依頼者本人の姿をどう誤解なく伝えられるか、ということは考えますね。これを見た後に、依頼者はどう思うのか。依頼して良かったと言ってもらいたいという気持ちはあります。

■番組を通じて伝えたいこと

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FBS(福岡放送)毎週月曜深夜0時54分から放送『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』


藤谷:僕らは依頼者の中に自分を見ているわけです。彼らに頑張ろうぜと励ましているんですが、我が身を振り返ることが多々あって。だからすごく勇気をもらっています。放送も200回を超えたんですが、採用されなかった人も含めたら、ものすごい数の人と触れあうことができた。オンエアが終わっても、彼らから励まされることもありますし、逆に相談に乗ってもらうことも。人とのつながりがこれほどに深くなっているということに泣きそうになるんですよ。僕は世界一温かい番組を作りたいなと思っていますから。

■夢は「日本一、全国版にしたいローカル番組」と言ってもらいたい

藤谷:実は僕らローカル局には基本的にゴールデン枠が割り当てられることはありません。もちろん系列にもよるんですが、基本的には差し替え不可能な枠だったりします。だからいつの日か、「日本一、全国版にしたいローカル番組」と言ってもらえるようになったらいいなと思っています。でも最近、動画配信を始めて北海道からも連絡が来るようになったんです。何の依頼だろうと思ったら、「次の新作まだですか?」と。そういう声が大きくなって、全国のテレビ局が動いてくれたらいいなと思っています。

――番組作りでつらいなと思うことはないですか?

藤谷:めちゃくちゃしんどいですよ。うちのスタッフはみんな家庭崩壊するんじゃないかと心配しています。だから僕は、スタッフの家族からめちゃくちゃ嫌われています(笑)。なかなかゴーサインを出さないから。この間も、ディレクターの娘さんから「お父さん、次はいつ家に帰ってくるの?」と連絡が来たらしくて。「え? 何かあった?」とのんきな返事をしたなんて言っているから、さすがに僕も「いや、今日はもういいから家に帰りなさい」と言いましたけど。いつの日か、スタッフの家族から番組宛てに依頼が来るかもしれないですね(笑)。

※「テレビの力を信じたい」と語る藤谷氏は、「一度見ただけで忘れられてしまうものではなく、いつまでも残るものを作りたい」「1日の最後に見て、気持ちよく寝られる深夜番組を作りたい」という思いから、『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!」の企画を立ち上げたという。この番組のメッセージは「君はひとりじゃないよ」。視聴者と制作者の距離感の近さ、フットワークの良さ、といったローカル局の番組ならではの味わいが、注目を集める秘密だと言えそうだ。

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FBS(福岡放送)毎週月曜深夜0時54分から放送『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』


藤谷拓稔(ふじたにひろとし)
山口県下関市出身。大学卒業後の2004年に福岡放送に入社。放送管理部、スポーツ部などを経て、制作部に異動。「ズームインスーパー」「めんたいワイド」などを経て、2011年に『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!」を立ち上げ。現在も同番組のプロデューサー兼ディレクターを務める。
座右の銘:「テレビって人間そのものだ」

(取材・文/壬生智裕)
(写真:トレンドニュース)

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