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BSスカパー!で放映がスタートした『恋の時価総額』。マンガ『気まぐれコンセプト』や映画『私をスキーに連れてって』などで知られるホイチョイ・プロダクションズの馬場康夫が手がけた、株式投資に関する知識とラブコメを合体させた新しい感覚のドラマだ。その馬場氏に、発想の原点などを聞いてみた。

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『恋の時価総額』製作総指揮:ホイチョイ・プロダクションズ 馬場康夫氏


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■株は怖くない、面白いものなんだと知ってほしい

――ドラマの中で実在の企業名が次々と出てくるのにまず意表を突かれました。

「企画の段階で、『スカパーにしかできないドラマってどういうものがあるか』という話をしていて、『株をテーマにして、ガンガン実際の株価を言っちゃうドラマってどうだろう?』と思ったのがきっかけです。株には以前から興味を持っていて、ちょうどその話をしたのが約1年前、株価がうなぎのぼりに上昇していた時期だったというのもあります。あの頃は、株を持ってさえいれば儲(もう)かるという感じでしたから」

――ただ、株がテーマと言っても、いわゆる金融・経済ドラマではなく、ラブコメとの合体というのが新鮮だと思います。観客の笑い声を入れるなど、シットコム(アメリカのテレビドラマ、シチュエーション・コメディの通称)を意識されたんですか?

「じつは僕、シットコムオタクなんです......(笑)。これも企画会議の時に『ビッグバン・セオリー』(アメリカの人気シットコム。IQ高めの物理学者コンビが向かいに住む美女らと繰り広げるラブコメ)っていいよね、という話になって、この物理学の部分を株に置き換えられないかと考えたんですね。株に関するマンガを描いていた関係で株の専門家に何人も会った経験上、あのドラマの登場人物みたいな人が実際にいっぱいいるのを知っていましたから」

「ドラマの舞台が涼介(田中圭)やユキト(波岡一喜)の住む部屋と、ノリコ(木南晴夏)や愛莉(中村静香)の部屋、この2カ所で展開するのもシットコムの基本なんです。僕はドラマ作りに関しては株の担当なので(笑)、キャラクターや恋愛問題の展開については脚本家チームにお任せしたんですが、ギャグにはこだわりました。シットコムってまずギャグありきですから。」

――シリーズ全体の構成に関してはどのように?

「全10話なのですが、各回に株に関する知識ワードを割り振っていきました。まずテーマを決めて、それに関係したお話をはめ込んでいく。第1話は『遠いものは避けよ』で、身の回りのよく知っている商品の銘柄を買え、ということ。第2話は『卵は一つのカゴに盛るな』で、いわゆる分散投資に関する話です。特にこのドラマは、後半になるにつれてどんどん面白くなっていきますから、楽しみにしていてください」

――ユキト(デイトレーダー。株で3億円儲(もう)けたエキスパート)役の波岡さんが、毎回株価の数字をよどみなく語る長セリフがあるのがすごいですね。

「これに関しては顔合わせの段階から、みんな波岡さんに同情していました(笑)。しかし、全部頭に入っているんですよね。じつはこのドラマ、3話を2日かけて収録するというかなり強行スケジュールで撮っているのですが、そんな状況でも、完璧に(セリフを)入れてくる。舞台劇1本分、それも4人出ずっぱりの芝居1本分のセリフを毎週覚えているわけですから、本当に感心しました」

――ただ、どうしても「株に手を出すと怖い」というイメージを持っているという人も多いかと思います。今後、株の危険な面を描くエピソードなどはあるのでしょうか?

「極端に危険だという描き方はしません。なぜならば、危険だと考える人の方が日本では一般的だから。日本人はバブル崩壊やこの前の上海ショックで『株って危ない』と思っている人が多いですが、僕はリーマンショック前から株をやっていますけど、あの時でさえ大損はしていないんです。株価が下がると言っても、今は一日で半分になるような暴落はなかなかしません。何パーセント下がったら売る、何パーセント上がったら売るというルールを自分で決めていれば損失は最小限に防げるし、逆に正しい知識を持っていれば、大儲(もう)けはしないかもしれませんが、着実に利益を出せると思います。売り買いだけでなく、ドラマの中でも描いていますが、株主優待とか配当といった利点もありますしね。『株って面白いものなんだ』ということを、このドラマを通して感じてもらいたいんです」

■常に考えているのは「ターゲットが何を求めているのか」

――ところで、今回のドラマでは演出されていないのですが、ご自身の監督作については?

「そろそろ映画を作りたいな、と思って企画は進めています。なにしろ僕は8年に1本の男なので......(笑)」

――初監督作(87年の『私をスキーに連れてって』)の頃はいろいろとご苦労があったかと思いますが......?

「当時は作家や歌手など異業種から映画監督に参入する風潮がありまして、北野武(ビートたけし)さんもその中の一人と見られていた時期でした。そんな中、僕は高校、大学と8ミリ映画を作り続けていたし、社会人になってからも16ミリを撮っていた。だから映画を作っている側の人間だと自分では思っていたんですね。しかし、いざ現場に行ったら自分が"外の人間"だということを思い知らされました......。
当時32歳で、サード助監督より年下なぐらいですから。そんな位置づけです。現場でのあつれきも多々ありましたし、助監督に殴られたなんてデマが流れたことも......。しかし映画がヒットしたおかげで周りの見る目も変わってきて、3本目ぐらいから大手を振って現場に行けるようになりました。今なら......、もう巨匠扱いですかね(笑)」

――そんな馬場さんの「座右の銘」は何ですか?

「業界に入った時に先輩に言われたことで、本当にその通りだと思ったのが『おまえ、(自分が)人と違うと思ってるだろ?』という言葉です。これからは『人と何が同じか考えて生きろ』と。確かに自己主張の激しい人間で、周りがロックを聴いている時にジャズ、みんながサイケな服を着ているのならアイヴィーという具合でしたから。でも、広告の仕事にはターゲットがあって、その相手の考えにならなきゃならない。これはマーケティングの基本です。しかし、クリエイターの中にはそれができない人がいるんですよね。『自分がどう思うかより、人がどう思うか』これが座右の銘ですね」

――ご自身の作品の場合で言うと?

「たとえば僕は自分がスキーの映画でデビューするとは、これっぽっちも思っていませんでした。スキー・オタクではないし、『いつかはスキーの映画を撮るんだ』なんて思いはまったくなかったんです。ただ、『今、映画にして当たるのはスキーですよ』という企画を出しただけ。『主題歌はユーミンでなければダメ』ということにもこだわりましたけど、これだってユーミンの特別大ファンだったからではないんです。映画の後で大ファンになりましたけど。なにしろ元々はコール・ポーターやガーシュウィンの人ですからね(笑)」


『恋の時価総額』は、株式に関する知識とラブコメを合体させた"カブコメ"。浮気が原因で妻に離婚され家を追い出されたテレビマンの栗野涼介(田中圭)は、友人の浜崎ユキト(波岡一喜)のマンションに転がり込む。ユキトはデイトレーダーで、株で3億もの利益を出していた。そのユキトは隣室に住むOL辰巳ノリコ(木南晴夏)に片思い中。そこにノリコの後輩で、涼介好みの巨乳美女・赤葉愛莉(中村静香)がやって来たことで4人は複雑な四角関係に...。BSスカパーでオンエア中。製作総指揮をホイチョイ・プロダクションズの馬場康夫がつとめ、毎回株に関する貴重な知識が披露される。

プロフィール
馬場康夫(ばば・やすお)
1954年8月13日、東京都出身。成蹊学園在学中に仲間とホイチョイ・プロダクションズを設立。81年から『ビッグコミックスピリッツ』で『気まぐれコンセプト』を連載。映画監督作品に『私をスキーに連れてって』(87)『彼女が水着に着替えたら』(89)『波の数だけ抱きしめて』(92)『メッセンジャー』(99)『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』(07)がある。『見栄講座』『極楽スキー』『東京いい店やれる店』『女子高生株塾』などの 書籍のほか、広告、テレビ、ラジオなどでも幅広く活躍中。


(取材・文/紀平照幸)
(写真:トレンドニュース)

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