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ハードボイルド作家・逢坂剛の代表作で、累計240万部を突破した警察小説「百舌」シリーズをヒットメーカー・羽住英一郎監督が実写化したドラマ「MOZU」が映画化され、全国東宝系にて大ヒット公開中だ。シリーズ最大の謎「ダルマ」との対決を描き出す今回の劇場版には、警視庁公安部の捜査官・倉木にふんした主演・西島秀俊をはじめ、香川照之、真木よう子、池松壮亮、長谷川博己、小日向文世らが続投。さらに最強のラスボス「ダルマ」をビートたけし、その配下のテログループメンバーを伊勢谷友介、松坂桃李ら豪華キャストが参加している。

個性的な人物たちが多数登場する「MOZU」シリーズの中でも特に、長谷川博己ふんする謎の男・東和夫は絶大なる人気を誇っている。劇中でエキセントリックな怪演を見せた長谷川を、西島はどう見たのか。今回は二人の対談形式でお届けしよう。

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『劇場版MOZU』長谷川博己(左)、西島秀俊(右)


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ーー 「MOZU」関連のインタビューを拝見すると、西島さんが長谷川さんのことを話す時は非常にいきいきしていて。そういうインタビューを見るたびに、本当に長谷川さんのことが大好きなんだなぁと感じるのですが。

長谷川: それはうれしいですね(笑)。

西島: 長谷川君とは「MOZU」の前にも(大河ドラマ「八重の桜」で)1年間ずっと一緒にお仕事をしてきたので。だからその後の彼の仕事もずっと見てきているし。どこか自分にとっては特別な存在なんですよ。

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『劇場版MOZU』長谷川博己(左)、西島秀俊(右)


長谷川: 僕も、大河の時の役がらもあって、西島さんを義兄弟的に感じているところがあります。プライベートでも先輩としていろいろ教えていただきましたし、仕事に対するスタンスなども見習わなくてはいけないところがたくさんあります。西島さんは懐が深い方なので、いろいろなことをやっても許してくれるという安心感があって(笑)。今回の東という役は西島さんがいなかったらできませんでしたので、感謝しています。

ーー エキセントリックなトリックスターとして自由な演技で暴れまわる東(長谷川)と、抑えた演技の倉木(西島)との対比が、非常に奇妙な空間を作り上げていました。

西島: 長谷川君との芝居をやる時は「長谷川劇場」をいち観客として見るという感覚でしたね。やはり劇場版でもテレビシリーズでも、東の反響がものすごく大きくて。東のスピンオフを作ってくれという声も大きかったですからね。今回の劇場版をたくさんのお客さんが観てくれているのは長谷川君の力がすごく大きいですよ。

長谷川:そんなことないですよ(笑)。

西島:この物語の中で東の登場シーンがこんなにも爆笑できるわけだから。それはやはり長谷川君の役作りの力なんですよ。やはりみんな、長谷川君や吉田鋼太郎さんの芝居を見て、松坂桃李君をはじめとした悪役の皆さんがこれくらいやってもいいんだと触発されたわけだから。皆さんが想像力をふくらませて、いろいろなアイデアを現場に持ち込んだことが「MOZU」シリーズを豊かにしたんだと思う。それは長谷川君のおかげだと感謝しています。

ーー 大杉(香川照之)のスピンオフも制作されたんだから、東のスピンオフがあってもいいのでは、という意見はありそうですが。

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『劇場版MOZU』 西島秀俊


西島: 個人的には、ぜひ見てみたいですね。今回の映画版でも、東の本当の思いや過去が見え隠れするんで。まわりからもその反応がすごく大きくて。例えば大杉が刑事を辞めるというスピンオフのストーリーがあんなにもヘヴィーなものだったんで、きっと東にもそういったストーリーがあるはずだと思うんです。東にはきっと正義に燃えていた時期があっただろうし、それが一気に闇に落ちる瞬間があったはず。彼がなぜそうなったのかというところは見てみたい。それと過去の話ということになれば、きっと吉田鋼太郎さんも出てくるだろうし。本当に作ってくれないかなぁと思いますよ。それはいち観客として観たいですね。

長谷川: でもそれをいち想像としてとどめておくというのもいいのでは?

西島: いや、僕はやっぱり観たいですね。やりたくない?

長谷川:ストーリーがどうなるかですよね。

西島: 例えば警察学校を卒業した時を舞台にするというのは? 東は倉木と同期で入っていたとか。そこのシーンは若手の誰かにやってもらうとして...。

長谷川: 僕も(「MOZU」と同じ羽住組が手がけた)「ダブルフェイス」は大好きでした。あの時の二人の関係性はいいなと思っていました。「ダブルフェイス」では主人公の二人ももともとは同期で、そこから片方は警察に、片方はヤクザの世界に入っていくという設定でしたので、それに近いものが東と倉木にもあったらいいなと思いますよね。実はドラマ版で東を演じた時は、そういった設定を勝手に想像しながら演じていました。もしくは東は人間じゃない、存在しない何かであるという可能性もあるなと思っていました。

西島: それは羽住監督も言っていて。実は東は、倉木の頭の中にだけある存在なんじゃないかって。でも、その割にはロケットランチャーを撃ったりしているから、あれは誰が撃っていたんだという話になるだろうけど(笑)。

長谷川: そういう意味では、スピンオフをやらない方がいろいろと想像できていいのかなという気持ちもありますが。でも、もしスピンオフをやることになったら、ぜひやってみたいですけどね。

西島: 「MOZU」ってひとりの人物が、一本道で決着をつけるような話ではないんで。それぞれのキャラクターが主人公であり、その男たちがうごめいている話だと思います。だから、池松壮亮君はテレビシリーズのもうひとりの主役と言える存在だし。大杉もスピンオフが作られた。シーズン2も明星(真木よう子)の話だった。だから当然、東のスピンオフがあってもいい。何の違和感もないですね。それぞれの物語が集まって、「MOZU」という1個の世界になっていく感じはします。

ーー 東といえば、テレビシリーズなどでの去り際に「チャオ!」と叫ぶ姿が大きな話題を集めました。

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『劇場版MOZU』 長谷川博己


西島: テレビドラマのファーストシーズンで、東がヘリコプターで去って行くシーンがありましたが、僕はそこの「チャオ!」が決定打だったと思います(笑)。今だから言えますけど、ヘリで去って行くあの時は笑いが止まらなかった。笑い死ぬかと思いました。オッケーが出ないんじゃないかというくらいに笑いましたね。

長谷川: あのシーンはかなりスリリングだったのを覚えています。あの時は雨が降っていましたし、命綱を付けるくらいの高さで芝居をしなければならなかったので。

西島: これは何度も言っていることですが、長谷川君が「チャオ!」と言う時は命がけなんですよ(笑)。

ーー 今回の劇場版のフィリピンロケにおける東の登場シーンも話題になっています。車に乗った東が、お面を外しながら「倉木ィー」と叫び、ロケットランチャーを撃つシーンは命がけのシーンだったと思うのですが。

長谷川: あのシーンでは大爆発があったじゃないですか。でも、監督からはカメラ目線で芝居をして欲しいと言われて(笑)。

西島:あの時、相当離れたクレーンの下でその現場を見ていたんですけど、あれだけ離れていたのに、それでもものすごい熱風が飛んで来たんですよ。

長谷川: 破片も飛んできましたしね。背後から熱風が飛んで来る中で僕も芝居をしていたのですが、あの時はとてもスリリングでしたね。「本当に爆破するんですか?」と聞いたら、「はい、やります」と。みんなサラッと言うんですよ。「急ブレーキも本気でかけますから、どうなるか分かりませんよ」と言われて。何でそんな怖がらせるようなことを言うんだろうと思いながら(笑)。とにかくすごい緊張感の中でやった記憶があります。

西島: ただ、実際に終わったら、「いやぁ楽しかった」なんて言っているんで。いい度胸をしているなと思いました。

ーー 羽住監督といえば、俳優に全力を求めて追い込むことで有名です。

西島: 羽住監督も、普段は笑顔で穏やかなんですけど、絶対に限界以上のことを求めるという。それは俳優部だけじゃなくて、どのパートであっても追い込みますね。ただし、追い込むと言ってもその追い込み方は穏やかな感じなんで、こちらもついつい乗せられちゃうといったところがあるんです。男が男にほれるというか。この人が撮りたい画のためなら、自分も限界まで挑戦しようという思いにさせられてしまいます。

長谷川: でもそれは、座長である西島さんが、監督から言われたことをさらに上乗せしてやるというか。真摯に作品に取り組む姿があったからこそ、まわりの人達も影響を受けるんだと思います。その姿を見ていて本当に勉強になりました。

ーー 俳優として、「MOZU」以前と「MOZU」以降で変わったことはありますか?

西島: 僕のことはさておき、長谷川君に関して言わせてほしいんですが。大河ドラマを一緒にやっていた時に、長谷川君のことを知っているいろんな先輩の役者さんが、「あいつはもちろん繊細でナイーブな役もできるけど、全然違うことができるやつだから」と言っていました。

長谷川: そんなことがあったんですか。

西島: それからの長谷川君はありとあらゆる役柄にチャレンジして、ものすごい活躍で。でも、舞台の長谷川君のことをよく知っている人にとっては、それは当然のことだったようで。それを予見している俳優さんは何人かいらっしゃいましたね。僕は長谷川君の活躍をすごいなと思いながらずっと見ています。どの役も全然違うから毎回楽しみだし、刺激を受けますよ。

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『劇場版MOZU』長谷川博己(左)、西島秀俊(右)


長谷川: でも、「MOZU」の東をやらせてもらってからというのはありますよね。映像で、こうやって自由に浮遊できたというか。

西島: 確かに「MOZU」以降だよね。園子温監督の『ラブ&ピース』にしても自由な感じだったもんね。

長谷川: 当然、どの作品でもその都度、変化はあるんですよ。今は、前みたいなナイーブで、少し落ち着いた役をやりたいなと思う時もあります。でもそういう役を続けてやっているうちに、また次はもっと自由なものがやりたくなるんだろうと思います。それは仕事をするうえで常に思っていることで。そういうのがひとつひとつ積み重なって扉を広げてくださっているんで。今はすごく充実していろんな役をやれている気がします。

ーー 最後に『劇場版 MOZU』をご覧になる方にメッセージを。

西島: 「MOZU」を観た人から、映画の中のあのシーンはどういうことなの? といったことをよく聞かれるんですが、それって本当にうれしいことなんです。そういった疑問も作品の中に答えがありますから。ぜひ劇場に足を運んでもらいたいですね。それから何度観ても、長谷川君の登場シーンが衝撃的なので。ぜひ劇場の大きなスクリーンでチャオを見ていただければと。本当にすごい爆破の中でやっていますから。ぜひ命がけのチャオを観ていただきたいですね(笑)。

長谷川: 僕のチャオはいいですから(笑)。それよりもやはり劇場版は「MOZU」の集大成ですから。日本映画もここまでやれるんだぞということを知らしめてくれる作品だと思うんです。ぜひご覧ください。

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『劇場版MOZU』長谷川博己(左)、西島秀俊(右)


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西島秀俊
にしじまひでとし
1971年生まれ。東京都出身。1994年の『居酒屋ゆうれい』で映画デビュー。2002年には北野武監督の『Dolls ドールズ』に主演。その後、「大奥 第一章」「純情きらり」「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」「ダブルフェイス」「八重の桜」などのテレビドラマに出演し、お茶の間でも人気を博す。その他の主な出演作品として『サヨナライツカ』『CUT』『ストロベリーナイト』『風立ちぬ(声)』などに出演している。また、公開待機作として『女が眠る時』『クリーピー』がある。

長谷川博己
はせがわひろき
1977年生まれ東京都出身。2002年の「BENT」で初舞台。「カリギュラ」「ヘンリー六世」「海辺のカフカ」など多数の舞台作品に出演するかたわら、「セカンドバージン」「鈴木先生」「家政婦のミタ」「雲の階段」「八重の桜」「MOZU」「デート~恋とはどんなものかしら~」など話題のドラマに出演。映画出演作としては『地獄でなぜ悪い』『舞妓はレディ』『海月姫』『この国の空』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 前後篇』などがある。2012年にはエランドール新人賞、第35回日本アカデミー賞新人俳優賞、橋田賞新人賞などを受賞している。

(取材・文/壬生智裕)
(写真:トレンドニュース)

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