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『秒速5センチメートル』(2007年公開)、『言の葉の庭』(2013年公開)といった意欲的な作品を数多く送り出し、ポスト宮崎駿、ポスト細田守と称される気鋭のアニメーション映画監督・新海誠の最新作『君の名は。』が2016年8月に公開されることが決定。東宝配給で、新海監督作品史上最大規模での公開が予定されている。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉(みつは)が夢で見た、東京に暮らす男子高校生の瀧(たき)。世界の違う2人の隔たりとつながりから生まれる「距離」のドラマを唯一無二の映像美と圧倒的なスケールで描き出す。

キャラクターデザインを務めるのは、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の田中将賀。大反響を呼んだZ会のCM作品「クロスロード」に続くコラボレーションが実現した。また、作画監督に『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『思い出のマーニー』などを手がけた安藤雅司を迎えるなど、日本最高峰のスタッフが集結した。今回は、新作を鋭意製作中の新海監督に、新作にかける思いなどについて聞いた。

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2016年8月に公開 新海誠の最新作『君の名は。』


2016年8月に公開 新海誠の最新作『君の名は。』 予告編>>


――最新作『君の名は。』で、ジブリ作品や細田守作品などに連なるラインである東宝メジャー作品を手がけることとなり、これまでより大規模公開作品となるわけですが。

実は東宝とは『言の葉の庭』に続き、2回目のタッグとなります。このときスタッフの皆さんが僕の作品を今までと違ったお客さんに届けようと全力で取り組んでくださるのが分かったし、見事にその結果もついているという実感もありましたので、非常に楽しく、幸せな経験だったんです。だから「何年後になるか分からないですが、次回作も一緒にやりたいですね」なんて話をしていました。その流れがあって今回の話になったわけです。

ただ今回は『言の葉の庭』よりもはるかに大きな規模で公開される予定です。これは最初から決まっていたわけではなく、話を進めていくうちに決まったこと。ですから本当にいいのかなという気持ちも確かにありますが、自分たちのできることは全力でいい作品を作ることしかないと思っています。だから気負いのようなものはないですね。

――今回は、今まで以上に幅広い層に向けた作品になるのでしょうか?

今回のプロデューサーは(『告白』『悪人』『モテキ』などを手がけた)川村元気さん。「メジャー作品を目指しますから」といった言葉は確かに出ましたけど、基本的には、僕がやりたいことをいかに引き出すかという方向で進めてくれたような印象が強くて。だからメジャーな規模の公開作品ということであっても、苦労した覚えはまったくないですね。むしろ話し合っていくうちに、自分がやりたい方向性はこういうものだったのかとか、この物語にはこういうポテンシャルがあったのかといったことを気づかせてもらうことの方が多かったですね。

――本作のキャラクターデザインには「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」『心が叫びたがってるんだ。』のアニメーター 田中将賀さんが参加しています。

田中さんとは『言の葉の庭』の後にZ会のCM作品「クロスロード」というCMを作ったんです。あこがれの人だった田中さんに声をかけさせていただいて。それが僕にとっては本当に楽しかったですし、評判も良かった。だからもう少し長い作品をやってみたいという思いがあり、今回お願いしました。

――新海監督が田中さんのキャラクターの琴線に触れた部分は?

田中さんの描くキャラクターには、一種の普遍性があります。アニメーションの絵柄で普遍性を持つというのは、実は難しいことなんです。絵には、流行り廃り(はやりすたり)もありますし、個人の好き嫌いもありますからね。でも田中さんのキャラクターは、たとえ普段はアニメに興味がない人であってもなじみやすいものがある。宮崎駿さんの絵に代表されるジブリ作品であったり、エヴァンゲリオンや細田守作品の貞本義行さんだったりとか、そういう力のあるキャラクターの代表例はいくつかあると思うんですが、田中さんの絵は、そういう流れに連なる絵だと思っています。それが一番強い。だからこそ今回は田中さんの絵柄でやりたいと思いました。

――資料には「夢で見た少年と少女が経験する恋と奇跡の物語。世界の違う2人の隔たりとつながりから生まれる「距離」のドラマ」とありますが。

具体的な物語についてはまだ言えないのですが、これまでに描いてきた作品と同じ要素もいくつかあります。例えば、10年以上前に制作した『雲のむこう、約束の場所』(2004年公開)という作品があるのですが、テーマ的にはやや連続性があるかもしれない。あの作品は、夢の中で出会う男女の特別なつながりを描いた作品なんですが、自分の力不足もありまだまだ語りきれないものがありました。そういう部分を今回はきちんと描けたらと。

それから直近で作ったZ会のCM作品「クロスロード」などで描かれた2人の距離感。違う場所で暮らしている男女なのに、それでも知らない間にお互いのことを見ていたのかもしれない、という描写はもっと膨らませられるんじゃないかなと思いました。もちろん、この2本と今作はまったく違う物語ですが、『君の名は。』のベースとなったと言えるかもしれません。

青春映画ですがスペクタクルの要素もありますし、もちろん日常的な要素もあります。演出やテンポや語り口も、とにかく観客に楽しんでいただけるよう練り上げています。(まだ制作中なので、)とにかく今は夢が広がっています(笑)。でもきっとそういう作品になっていると思います。

――この作品を手がけることで、ポスト宮崎駿という周りの声も大きくなるのではないでしょうか?

どうでしょうか......。宮崎駿監督が長編映画からの引退を表明されて、スタジオジブリが制作部門を解体して、そんな中で細田守監督が国民的作家として確固たる地位を築きつつありますよね。そういう土俵に自分も立つことが出来るとは、とても思えません。ただ、今作には作画監督の安藤雅司さんをはじめ、ジブリ経験者が確かに多いんです。細田守監督の『バケモノの子』が終わってからこちらに合流したスタッフもいらっしゃいますし、これからはそういう方々の力をどうやってお借りしていくのか、どう自分の作品に活かせるのかが、僕の個人的な課題の1つだとは思っています。

――そういった中で新海カラーをどうやって織り込もうとしているのでしょうか?

そういう方々とご一緒しているわけですから、今までの日本のアニメーションの伝統を内包した作品にはなると思います。ただ、キャラクターに色が塗られて、背景の上に立たされていくうちに、それはもう僕の作品のタッチになっていくんだと思います。完成映像はジブリ作品や細田作品とはずいぶん手触りの違うものになりますし、ストーリーも、東宝と10ヶ月にわたって磨き上げてきた、他とは違う魅力があるという手応えも自信もあります。

――本作の声の出演には、東京に暮らす男子高校生の瀧(たき)役に神木隆之介さんが、山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉(みつは)役に上白石萌音さんが抜てきされましたが、お2人の印象は?

神木さんはとにかくステキな人ですね。多くの方のイメージ通り、とても可愛らしい方なんですが、格好良くて男っぽくもある。瀧という役に必要な部分を全て持っていました。それに、きっとアニメ全般がお好きなんだと思うんですが、『秒速5センチメートル』の聖地巡礼も行きましたと言ってくれて。僕の作品も観てくださっているというところも含めて、この人なら安心できるなという気持ちもありました。やはり僕にとっては大規模公開作品は初めてのこととなるわけで。アニメファンではなく、一般の方でも「この人が声をあてているなら観てみようかな、という人が必要じゃないか」というのが川村さんの意見であり、それは僕もそうだなと思いました。そういう中で、神木さんは最適だった。僕の過去の作品のテイストを知っていてくれて、かつ誰もが知っている役者さんであり、実力も申し分ないですから。

――上白石さんはどうですか?

彼女は『舞妓はレディ』という映画の主役で周防正行監督と仕事をしてらっしゃるので、もちろんすでに堂々たる女優であるわけですが、それでも偉そうな言い方をさせてもらうならば、発見したという気持ちです。今回オーディションをさせていただき、素晴らしい声や技術を持っている方もたくさんいらしたのですが、上白石さんの声を聞いた瞬間に、「これは三葉だ」と強く思いました。その年齢(1998年生まれの17歳)からすると演技力はずばぬけている。きっと彼女のことを知らない人が聞いたら、驚くと思います。彼女にとっての初アニメーション主演作としてご一緒できるのもうれしいですね、

※ 映画監督の岩井俊二からは「アニメという絵筆と言葉で現代を描く絵師であり詩人」と評される新海誠監督。"新海ワールド"ともいうべき主人公の心情に寄り添った美しくも緻密な風景描写、人と人との距離感が生み出す繊細な物語などが高く評価され、多くのアニメファンに支持を集めてきた。そんな"新海ワールド"が新作でどのような進化を遂げるのか。GYAOで明日12月11日から期間限定で配信される過去作品『雲のむこう、約束の場所』(2004) 『秒速5センチメートル』(2007)『星を追う子ども』(2011年)『言の葉の庭』(2013)をチェックしつつ、最新作を想像してみたらどうだろう。

新海誠
しんかいまこと

1973年生まれ、長野県出身。2002年、個人で制作した短編作品「ほしのこえ」でデビュー。新世紀東京国際アニメフェア21「公募部門優秀賞」をはじめ多数の賞を獲得。2004年公開の初の長編映画『雲のむこう、約束の場所』では第59回毎日映画コンクール「アニメーション映画賞」を受賞した。その後、2007年に『秒速5センチメートル』、2011年に『星を追う子ども』を発表し、大きな話題を集める。2013年に全国公開された『言の葉の庭』では、自身最大のヒットを記録。ドイツのシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭にて長編アニメーション部門のグランプリを受賞した。
座右の銘:「千里の道も一歩から」。

(取材・文/壬生智裕)
(写真:トレンドニュース)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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