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赤塚不二夫の漫画『おそ松くん』に登場する六つ子たちの大人になった姿を描いたアニメ『おそ松さん』が、2015年10月より放送スタートしてヒットを飛ばしている。わかりやすいイケメンキャラが登場しないのにも関わらず女性人気が非常に高いことを不思議がる声も多いが、"キャラ同士の関係性萌(も)え"である、いわゆる腐女子(男性同士の恋愛、ボーイズラブを描いた作品を好む女性)たちが『おそ松さん』を支持することは当然の結果なのだ。

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写真:アフロ


■ポスター付録のアニメ雑誌が発売5日で完売

『おそ松さん』は、赤塚不二夫の生誕80周年を記念した、アニメ『おそ松くん』から約27年ぶりに放送された新作。大人になった松野家の六つ子たちをめぐる騒動を描いたギャグアニメで、トト子やイヤミ、チビ太といったおなじみのキャラクターたちも登場する。

2016年1月29日発売のDVD第1巻の予約数はAmazon 売れ筋ランキングのアニメDVD部門で上位をキープし、今期放送のアニメ人気ナンバーワンの呼び名も高い『おそ松さん』。実はその人気を支えているのは女性ファンの力らしい。

2015年11月28日にアニメイト池袋店でアニメ資料などを展示したミュージアムの抽選入場を行った際、また12月4日のナムコ・ナンジャタウンでのコラボイベント(2016年1月31日まで開催中)開催初日は、どちらも女性ファンによる長蛇の列ができた。また『おそ松さん』ポスターが付録についた月刊アニメ雑誌『PASH!』2016年1月号は、発売から5日で約6万部が完売し、重版がかかったと報じられている。ちなみに同雑誌はアニメ雑誌の中でも女性をターゲットにしていることが特徴で、『おそ松さん』がこの雑誌で大々的に取り上げられたことからも、女性人気の高さがうかがえるだろう。

■2次創作BLが盛んな『おそ松さん』

『おそ松さん』を支える女性ファンには、いわゆる腐女子と呼ばれる人々が多いらしい。イラスト・漫画・小説コミュニティサイト「pixiv(ピクシブ)」に投稿された『おそ松さん』の2次創作BL作品の数は、なんと約1万4000件にも上る(2015年12月20日時点)。

しかし『おそ松さん』の絵のタッチは、過去の『おそ松くん』を踏襲した頭身の低いもので、ひと目でイケメンとわかるようなキャラクターは登場しない。ギャグとして乙女ゲーム風の頭身の高いタッチを挟むことはあるが、展開されているグッズのほとんどは、基本の『おそ松くん』を引き継いだ絵柄のものだ。そのためネット上では、男性らしきアニメ・漫画ファンが「イケメンが登場しないのに、なぜ人気なのか?」と不思議がる声がいくつも見受けられる。

イケメンが登場しないのに、なぜ『おそ松さん』は女性、とくに腐女子人気が高いのか? その理由には、櫻井孝宏や中村悠一といった人気男性声優の起用もあるだろうが、キャラクター同士の多彩な関係性も挙げられるだろう。

■イケメン不在でも人気の秘密は多彩な"関係性"

ところで腐女子をめぐる古典的なジョークのひとつに、「腐女子は消しゴムとエンピツでも妄想できる」というものがある。消しゴムとエンピツはイケメンどころか無機物でしかないが、それでも腐女子は「少しずつすり減っていく消しゴムを切なく見つめるエンピツ......」のように"萌(も)える"ことができるというのだ。

このジョークは腐女子の本質を突いている。つまり腐女子はモノとモノの間に自分なりの関係性を見い出し、楽しむ人々なのだ。そのため腐女子にとって整ったビジュアルは萌(も)えるための必須条件ではない。それよりも、いかに妄想の余地がある関係性が作中で提示されているかということが重要になってくる。

『おそ松くん』では6人でひとりのキャラクターのような扱いだった6つ子たちだが、『おそ松さん』ではひとりひとり性格が違っている。さらに「四男の一松は次男のカラ松には冷たく当たるが、五男の十四松には友好的」というように、兄弟間でそれぞれ相手によって微妙に接し方が異なるような描写がされているところや、ギャグの合間に時折キャラクターの内面に迫るようなシリアスなストーリーを挟むところなどが、腐女子の妄想心を巧みにくすぐっているのだろう。

ちなみにこれまで腐女子の間でブームになったとされる漫画『テニスの王子様』やアニメ『TIGER & BUNNY』、ゲーム『刀剣乱舞』といった作品は、どれも男性キャラが"よりどりみどり"と言っていいほど多数登場する。ひょっとすると腐女子人気が出ない作品というのは、イケメンキャラが登場しないのではなく、登場する男性キャラがひとりだけという作品なのかもしれない。

(文/原田美紗@HEW

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