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アイドルグループ「NEWS」加藤シゲアキの小説デビュー作『ピンクとグレー』が実写映画化された。主演は加藤と同じジャニーズ事務所「Hey! Say! JUMP」所属の中島裕翔、メガホンをとったのは数々の話題作、意欲作を世に送り出してきた行定勲監督だ。「アイドルが書いた原作、アイドルが主演の映画。そう思うときっと『やられた』って感じると思う」と語った行定監督に、原作物を実写化する際のこだわりや本作の魅力を聞いた。

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2016年1月9日(土)公開『ピンクとグレー』 行定勲監督

・予告編も公開 公式サイト『ピンクとグレー』>>

■「ピンクとグレー」は映像化できる素材だと確信した

 『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)や『北の零年』(05年)の大ヒット作や、『GO』(01年)や『遠くの空に消えた』(07年)らの意欲作など、その時代にあった切り口で映像作品を作り上げている行定監督。そんな彼が原作を読んで「映画として成り立つ」と確信した。そして最新作『ピンクとグレー』が完成した。

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2016年1月9日(土) 全国ロードショー『ピンクとグレー』
(C)2016「ピンクとグレー」製作委員会


 「映画化の話をいただいて原作を読んだところからスタートしたのですが、まず自分が分かり得る領域のものなのか、もし分からなくても興味が持てるものなのかという視点で入りました」と語る。そんな中「主人公の少年が、友人を強く思う気持ちが貫かれていた。さらに気持ちは貫かれているのだけれど、その少年がどういう人間だったかが解明されていないまま話が進んでいく。『これだけで映画になる』と感じましたね」と原作を読んだ時の印象を述べる。

 一方で危惧することもあった。「芸能界が舞台なのがね......。日本の芸能界ものってちゃっちい印象がある。ハリウッドは裏側もショウビジネスとして取り込まれて表現されていて夢があるけれど、日本は芸能人という対象には憧れがありますが、芸能界自体は胡散(うさん)臭いところと思われているでしょ? そこを描くのはどうなのかとは感じました。小説では、加藤君がメタフィクション的に自分と向き合い、ある種、毒も含めて表現しているから伝わる部分が多いですが、映画ではどうなんだろうってね。だからちゃっちくならないように心掛けました」と本作へ取り組む際の課題を挙げた。

■原作物を映像化する上で大切なこと

 行定監督と言えば、原作物に大胆な解釈を加え映像化することに定評がある。本作も原作を読んでいる人間なら「おー」とうなってしまうようなアレンジに驚くことだろう。賛否を呼ぶことが多い原作からの映像化。行定監督のこだわりとは......。

 「原作者はゼロから登場人物たちを生み出しています。そこには意図があって語るべき事柄がある。映像化する時には、その人たちがたどった道とか心情と並走して、外れていないのかを常にフィードバックします。例えるなら、映像が凧(タコ)で原作にタコ糸でつながれている。途中で糸が切れてしまえば、どこかへ飛んでいって落下してしまう。そうすると『原作の意味ないじゃん』ということになる。それは嫌ですね。行定というフィルターを通して、どこまでタコ糸を伸ばせるか......それを2時間ぐらいの尺の中で語れるかということを大事にしていますね」。

 行定監督のアイデア、演出の妙で「ピンクとグレー」という原作は、見事な色合いで映像化された。「ピンクとグレー」というタイトルに秘められた解釈を鮮やかに表現したのが映画『ピンクとグレー』だ。「幕開けから62分後の衝撃!!ピンクからグレーに"世界が変わる仕掛け"に、あなたは心奪われる――」。行定監督が深部まで人物を掘り下げた結果、浮かび上がってきたテーマが、映画ならではの表現方法でスクリーンに映し出される。

■あえて「アイドルが書いた原作、アイドルが主演の映画って思ってほしい」

 本作の主演を務めたのはアイドルグループ「Hey! Say! JUMP」の中島裕翔。映画初出演にして主演という大役だ。「失礼ながら、彼が人気アイドルということは知らなかったんです」と行定監督は語る。「自分を批判的に捉えると、自覚はしてなかったけれどアイドルをどこか軽視しがちだったのかなって。実力で人気を集めているのだけれど、ビジュアルが人気なんでしょ? って少なからずそういう見方をしていたのかもしれない」と正直な胸の内を明かす。

 しかし、中島と接することにより「やっぱりそんなことはない」と反省したという。「ジャニーズ事務所のアイドルたちって単発で役者をやると、みんなおおげさじゃなく、淡々ときっちりこなすんです。自分たちを(役柄に)持っていってるんです」と脱帽する。そして、あえて「アイドルが書いた原作、アイドルが主演の映画って思ってほしい」と逆説的に提案する。「そう思って見たら絶対『やられた』って感じると思う。僕自身も、そう思ってもらえば反骨精神が沸いてくるし『手を抜かねーぞ』って気合も入るんです」。

■中島くんはすごく良かった

 そんな作り手の思いの一方で、中島自身に気負いはみじんもなかったようだ。「彼の何がすごいかというと、ただそこに立つ存在感、そして役に対するリアリティー。さらに僕の演出に耳を傾けることに対してすごく素直。しっかりと形で見せてくれる。いろいろ辛口なことを言う人がいるかもしれませんが、余計なことをして台無しにしている役者はいっぱいいるんです」。

 これまで数多くの作品を撮ってきた行定監督にとって好きな俳優とは――。「リアリティーのある俳優さんが好きですね。もちろん役に入っていなければいけないけれど、作られると目も当てれらない。役の中でちゃんとリアリティーを考えている人。根本的にこの人はどんな人か、どんな佇(たたず)まいをみせてくれるか。そこを見せてくれないとスタートできないですよね」と語ると「今回の中島くんはすごく良かった」と静かにほほ笑んだ。

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2016年1月9日(土) 全国ロードショー『ピンクとグレー』
(C)2016「ピンクとグレー」製作委員会


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2016年1月9日(土) 全国ロードショー『ピンクとグレー』
(C)2016「ピンクとグレー」製作委員会


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2016年1月9日(土) 全国ロードショー『ピンクとグレー』
(C)2016「ピンクとグレー」製作委員会


出演:中島裕翔 菅田将暉 夏帆 岸井ゆきの 宮崎美子/柳楽優弥
監督:行定勲 脚本:蓬莱竜太・行定勲 
原作:加藤シゲアキ「ピンクとグレー」(角川文庫) 音楽:半野喜弘
製作:「ピンクとグレー」製作委員会 
配給:アスミック・エース 


◆行定勲(ゆきさだいさお)
1968年8月3日生まれ。熊本県出身。初の劇場公開作品『ひまわり』(00年)で注目を集め、2001年公開の映画『GO』で、第25回日本アカデミー賞作品賞ほか多くの映画賞を受賞する。その後も『世界の中心で。愛をさけぶ』(04年)が興行収入85億円を記録し、この年の実写映画ナンバー1になるなど数々のヒット作を世に送り出す。自身の出身地である熊本県菊池市で行われている「菊池国際交流映画祭」のスーパーバイザーを務めるなど、映画祭の重要性を説くなど、さまざまな方面から映画文化に貢献している。

(取材・文・撮影:磯部正和)
(写真:トレンドニュース)

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