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「月刊少年マガジン」で好評連載中、あだちとかによる大ヒットコミック「ノラガミ」。2014年1月~3月の第1期に続き、2015年10月~12月には第2期となる「ノラガミ ARAGOTO」が放送。2月19日にはDVD第1巻の販売も決定している。個性豊かなキャラクター、迫力のバトルシーン、ギャグとシリアスとの絶妙なバランスの上に成り立つテンポのいいストーリー展開、そして神谷浩史、内田真礼、梶裕貴、沢城みゆき、福山潤、井上和彦ら豪華声優陣の参加などでも人気を集めている。

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1月29日(金)からGYAO!にて「ノラガミ ARAGOTO」全話一挙に無料配信(~2月4日)
(写真:トレンドニュース)


「ノラガミ ARAGOTO」では、黒いジャージにスカーフ姿のマイナーな神様"夜ト(やと)"と、七福神がひとり最強武神"毘沙門天"がバトルを繰り広げる――。
このたび、1月29日から期間限定でGYAO!にて「ノラガミ ARAGOTO」全話を一挙に無料配信する。今回はアニメ版「ノラガミ」の監督を第1期、第2期ともに手がけているタムラコータロー監督に、そのこだわりのポイントを聞いた。

アニメ「ノラガミ ARAGOTO」全話一挙無料配信はこちら>>


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(C)あだちとか・講談社/ノラガミ ARAGOTO製作委員会


■豪華声優陣が集結

――当初から豪華声優陣も大きな話題に。これだけのキャストを集めるのは相当大変だったのでは。

実は自分は声優陣の知名度にはあまり詳しくないので配役した時点では豪華かどうかはわかっていませんでした。役に嵌りそうで実力のある方を探したところ、結果的に名のある方々が集まったという感じです。プロデューサーが頑張ってくれました。そもそも豪華なキャストで揃えようと思っても、皆さんお忙しい方たちなので、運が良くないと全員のアフレコスケジュールはそろわない。音響の方に、「このゴールドセイント(「聖闘士星矢」に登場する最高ランクの戦士)たちは狙ってそろえられるものじゃない」と言われました(笑)。僕は運が良かったんでしょうね。

――2月19日に発売予定の「ノラガミ ARAGOTO」DVD第1巻には封入特典として、あだちとか先生が描き下ろした新作マンガ「ノラガミ 紅(クレナイ)の傍に」がついてくるそうですが。

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2月19日に発売予定の「ノラガミ ARAGOTO」第1巻パッケージ
(写真:トレンドニュース)


これがすごくいいんですよ! 兆麻(かずま)と夜トの過去が描かれていて、麻の一族滅亡後から現在に通じる二人の関係性がよく分かる話になっています。「ノラガミ ARAGOTO」の前半にリンクした内容で原作に欠けている部分を補完したマンガなので、これはぜひとも読んでもらいたいですね。とても特典マンガとは思えないくらい力が入っている内容になっています(笑)。

■脚本に1年をかけたこだわり

――タムラ監督が思う「ノラガミ」の魅力とは?

シリアスもコメディも両立できるキャラクターが良かったですし、あだちとか先生が描かれる世界観が非常に面白いなと思って。神様を題材とした作品ですが、和風に寄りすぎなかった感じがいいですよね。主人公の夜トはジャージを着ていて、ブーツを履いてと、どちらかというとロックな格好じゃないですか。でも人に寄り添って生きている神様ってことを考えると一周まわって実はとてもリアルな感じがしたんです。
だからこの作品で描きたかったのは、単なるバトルというよりはキャラクターの内面の方だったりします。内面をきちんと描くというのは本当に難しいんですけれど。

――脚本を作るのに1年くらいかかったと聞きましたが。

マンガを映像の文法に置き換えるためにはどうしたらいいのかを、延々と話し合っていました。ふたつは似ているように思われがちですが、根本的に違います。だからそのまま映像化すればいいのかといえばそういうわけにはいかない。例えば、マンガって見開きのページで成立しているじゃないですか。だから読者を飽きさせないために、左下のコマで次のページをめくらせるための「引き」が必要、というのがマンガ文法の原則なんですが、例えばアニメで1分ごとにそれをやっていたらうっとうしいことこの上ない。

マンガは読者のペースで紙をめくりますが、アニメの場合は時間が流れるので、自分のペースでは読めない。だからこそアニメ化の際にはきちんと翻案しないと、マンガで表現されていた喜怒哀楽といった感情は伝わらないものなんです。脚本に時間がかかったというのはそういうことです。

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1月29日(金)からGYAO!にて「ノラガミ ARAGOTO」全話一挙に無料配信(~2月4日)
(写真:トレンドニュース)


――アニメ化で気を配ったことは?

行間を大事にすることですね。アニメの場合、すべて描きすぎると冷めてしまうということがありますから。小説なら文章の間で読者に想像させることができます。マンガなら吹き出しもありますし、背景には白飛ばしやスクリーントーンなどを使うことで、キャラクターの内面世界に入ることができる。アニメにもイメージカットという抽象的な絵作りは存在するんですが、多用すると絵空事に見えかねない。

リアルな映像作品の場合、ほとんどのカットに背景を描かなくてはいけない。誰がどこに立っていて、キャラクター同士はどれくらいの距離感があるのかということが視聴者に把握できるように作るんです。しかしそれを厳密に描きすぎると逆に冷めちゃうこともある。
例えば本作でも「天の神様たちが攻めてくる」という描写があります。しかし地上と雲の上、その距離感がハッキリ分かってしまうと会話を交わした時に嘘っぽくなって、見ている方は冷めてしまう。だから映像では徹底して地上にいる人物と雲の上の人物を同時に見せるのを避けてるんですよ。アニメ化って、何となく原作通りにやればいいじゃんと思われがちなんですが、マンガそのままを映像にした瞬間に冷めた、想像の余地がある方が良かったのに、ということが多々あるので、そのバランスをどうとるのか、ということに最大限気を配りました。

■状況説明よりも登場人物の感情にあわせたカット割を

――「ノラガミ」ならではの難しさはあったのでは?

あるキャラクターのつらい状況があったとしたら、その他のキャラクターのつらい状況をリンクさせていく、といったことをやっています。つまりカット割りも誰がどこにいて、という状況説明をするよりも、キャラクターの内面や感情に合わせてカット割やシーンつなぎをしたということです。
例えば、藍巴(あいは)という、結果的に主人の毘沙門を裏切ってしまう女の子が登場します。彼女は、毘沙門が「私の神器に裏切者などいない」と叫んでいる影で「わたしはなんてことをしてしまったんだ」と涙を流すんですが、そこに野良(のら)というキャラクターの「とんでもない裏切り者ね」という声が入ってくる。これは兆麻(かずま)がひよりに過去の因縁を語る回想シーンのセリフを先行させたものなんですが、藍巴(あいは)の回想ではないので普通に考えたらつながらないシーンです。でもこうすると藍巴のモノローグに頼らずに藍巴の陥った状況が伝わりますし、過去の兆麻と今の藍巴の心情がリンクしますよね。他にも「ノラガミ」は回想シーンの中に違う回想シーンを織り込んだりと、かなり複雑な構成をしているんですが、どんな時も必ず話の意味や感情はリンクするようにしてあるんです。

■観客のテンションを途切れさせない演出術

――「ノラガミ」に一気にのめり込むことができるのは、キャラクターたちの感情が同じ方向を向いていて、観客のテンションを途切れさせないように意識してあるからということでしょうか?

「ノラガミ」は結果的に群像劇になっているのですが、みんなばらばらの場所にいたとしても、結果的に同じ気持ちや気分を共有している。そしてその共有している感情こそが視聴者に一番抱いてほしい感情なんです。だから誰かがつらいシーンになると、ほかの人物にカメラを寄せていっても、そのつらいという気持ちが補完されるようになっている。
「ノラガミ」の音楽はメロディアスな曲が多いので、複雑な気分や感情をあらわすのにとても向いているんです。だからひとつのテーマに合わせて同じベクトルを持ったバラバラのシーンをつなぎ合わせて、ひとつの気分、すなわち音楽に集約するように全部組み直しているわけです。ですから選曲作業の時も、音響監督から「監督は非常に難しいことを要求されてますよ」と言われたんですが、「分かっています。でもこの作品で目指すのはそこなんです」とお願いしました。

――しかしそんな複雑なことをしていたことに気づかない人も多いのでは?

キャラクターの感情を理解してもらえればそれでいいんです。演出というのは大きく分けると2パターンあります。ひとつは派手に見せるための化粧としての演出、そして視聴者に気づかれないように印象を操作する演出。僕がノラガミで目指しているのは、どちらかというと後者のことが多いです。どうしても演出というと「ビジュアルショック」といわれるような派手なものに目がいきがちなのですが、僕はむしろ初見では技術的なことには気付いてほしくないと思ってしまうタイプですね。見ている人に共感してもらって、いつの間にか気分がのせられていたと言われる方がうれしいですね。

――となると、あのシーンを見ていつの間にか泣いていたよ、なんてお客さんに言わせられれば「してやったり」という気分なのでは。

そう言っていただけるとすごくうれしいですね。でもそういう時に褒められるのはたいがい原作と役者なんですが(笑)。でもそれでいいんです。

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アニメ「ノラガミ ARAGOTO」とは プロモーション映像



タムラコータロー
1980年福岡県出身。高校卒業後、グループTACに入社し、アニメ業界へ。その後、フリーの演出家として独立。「HEROMAN」や「GOSICK」オープニング、「エウレカセブンAO」や「絶園のテンペスト」のエンディングなどを手がける。その後、細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』に助監督で参加後、「ノラガミ」で監督デビュー。座右の銘:「作品で動かすのは人の感情」

(取材・文/壬生智裕)


トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

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