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1985年に上演された舞台を古屋兎丸が漫画化した、『ライチ☆光クラブ』。野村周平を主演に迎えて実写映画化、2月13日に公開される。陰鬱とした工場町の秘密基地で繰り広げられる少年たちの愛憎うごめく狂気に満ちた世界――。息詰まるような緊張感、少年ならではの脆(もろ)さを鮮烈な映像描写で彩ったのは、若手注目株の内藤瑛亮監督だ。『先生を流産させる会』で長編映画デビュー以降、強い作家性で個性を発揮する内藤監督に本作の製作秘話や今後の目標などを聞いた。

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野村周平主演 2月13日公開『ライチ☆光クラブ』内藤瑛亮監督


醜い大人になることを拒む14歳の少年たちの愛憎と裏切りを描いた、古屋兎丸のコミックを実写映画化>>


ライチ☆光クラブ プロモーション映像 特報>>


■作品の根底にあるものは「中二病」

 『ライチ☆光クラブ』は、醜い大人になることへの嫌悪感をはじめ、複雑な感情をもつ少年たちが織りなす愛憎劇。登場するキャラクターのバックボーンを深堀りすれば、そのテーマは無尽蔵に広がる。作り手の解釈によって大きく作風が変わる魅力的でもあり危険な原作だ。

 「これまで僕が作ってきた作品とテーマが通底するなと思ったんです。少年少女の鬱屈(うっくつ)とした感情が過剰な暴力に結び付く、「中二病」的な感覚。それがキーワードでした。少年たちが大人になることや社会を否定し崇高な理想を掲げつつも、作り上げたロボットが少女を誘拐するためだけの目的という幼児性......、少年たちが思考を停止して、支配的な存在を妄信し、抗う者は排除する......こうした精神の幼さゆえに、排他的・独善的になるところって現代性があるなと思いましたね。これって、ネット空間で10代の子たちが繰り広げる、大げさに言うと愛憎劇ということなのかもしれませんが、それをフィクションで表すとこうなるんだろうなと」とアプローチ方法を語る。

 映像にもこだわりをみせた。「製作規模の関係でセットを一から作ったり、グリーンバックですべてCGにするのは難しいので、実際にあった廃製紙工場全体を螢光(けいこう)町に見立てて、秘密基地は大きな倉庫をベースに作っていきました。ライチというロボット造形も、町で拾ってきた廃材で作れるもの、中学生が考える格好良さがありつつも、つたなさもあったり......。そういうバランスは大事にしました」。

■過激な描写も「人の死をすんなり受け流してはいけない」

 原作同様、映画の中にも陰惨とした暴力シーンや性描写シーンが多数ある。作品には「R-15指定」がついた。「プロデューサーにはギリギリまで攻めたいとは言ったんです」と内藤監督は口を開くと「目をふさぎたくなるような残酷さが原作漫画のテーマであり、彼らは人間の死に対して鈍感になってしまっているのですが、その暴力が実際痛々しくて、恐ろしいものであるということはしっかり観客に伝えなくてはいけないと思ったんです。人の死をすんなり受け流せるものであってはいけないんです」と持論を展開。

 当然、映倫(=映画倫理委員会)との攻防があったという。「性描写シーンも、実際演じている役者さんは20歳を過ぎているのですが、設定上中学生なので、はっきりとは言わないのですが『児童ポルノ法が~』みたいな意見もありましたね。ギリギリのラインでBL(=ボーイズラブ)シーンも描きました。性的に交じり合うゼラとジャイボって、愛や性に対する欲望のあり方が違うんです。そのズレがドラマとして意味のあるところなので、性描写を守れて良かったです」。

■野村周平と古川雄輝は真逆のタイプ

 内藤監督の作品には若手俳優たちが出演することが多いが、「自由にやらせてもらえる」、「優しい」という声をよく聞く。「僕はイメージを押し付けたくないんです。役者本人が思い描くイメージが大事だと思っています。役柄をつかむとき、役者本人の内側から出たものじゃないと、本質的なものにはならない。そのためにオープンな雰囲気を作ってあげることが僕の役割だと思うんです」と演出方法を語る。それでも「若い俳優のマネージャーさんには『怒ってください』とか『泣かしてください』って言われることがよくあるんですけど、それがストレスですね。怒って泣かす監督はエライって考えがウザいんです」と苦笑い。

 本作でも、野村周平や古川雄輝、間宮祥太朗、中条あやみなど注目の若手俳優が顔をそろえる。「それぞれアプローチ方法は違うので、その人なりのやり方を尊重しました。古川さんは自分で演技プランをきっちり作ってくるタイプだったので、自由にやってもらい、それを膨らませるという方法でした。間宮さんはジャイボというキャラクターの感情に寄り添う感じ。ジャイボの感情的にこうしたらどうか、といろいろ提案してくれました。ジャイボの気持ちは間宮さんに聞けば分かるって感じで信頼しました。」

 一方で野村は真逆のタイプだという。「彼は直感で演じるタイプ。現場にポンと立って感覚で演じる。古川さんとは対照的でした。テイクを重ねると輝きを増していく感じでしたね」と魅力を表現。紅一点のヒロイン・中条については「オーディション会場に入ってきたときから『この子だな』と思いました。古屋さんの描く女性ってお人形さん的な非現実感があるのですが、中条さんにはそれがあったんです。一方で、実写なので生身感も欲しい。話をしてみるとすごくしっかり自分の意志を持っていたので、そういう部分でもバランスが良かったです。」と絶賛した。「彼女は経験が浅かったので、役柄の背景についてじっくり話し、現場では動きを具体的に示しました」

■公開規模が大きくなることへの葛藤

2012年に 『先生を流産させる会』で長編デビュー後、着実にステップアップしている印象がある内藤監督だが、公開規模が大きくなることにより良い面も悪い面もあると感じているようだ。「多くの人に見てもらえるというのは大切なこと」と語る一方で「製作の規模が大きくなると、いろいろな方面から声が飛び交う。その中で自分の作りたいものをいかに守っていくかが戦いですね」と胸の内を明かす。

 本作でも「戦い」はあった。「出資を集める際に、中学生が人殺しをするということが問題視されたことがあったんです。『中学生は義務教育だから、高校生に変えられませんか』という提案がありました。もちろん中学生が人を殺してはいけません。でも高校生になったら殺していいわけではないんです。だからそこが問題視されること自体が倫理的にもおかしいと主張しました。物語上大事な設定だったので、守れて良かったです。」。「醜い大人になることへの嫌悪感」というテーマでは中学生から高校生への設定変更は譲れない部分であることは明白だ。

■キラキラした青春を送ってない人たちに見てほしい!

 現在33歳、映画業界ではまだまだ"若手監督"と位置付けられるだろうが「これまで罪を犯す少年少女を描いてきましたが、今度は大人の社会側から罪を犯してしまう少年少女とどう対面したらいいかを描いてみたい」と今後のビジョンを語った内藤監督。

 「キラキラした青春映画って日本では多く作られていますが、キラキラしていない青春を送っている人ほど、映画って必要だと思うんです。そういう人たちにとって、黒い煙と赤い血に染まったこの映画は救いになると思います」と見どころを語ってくれた。

(取材・文・撮影:磯部正和)
(写真:トレンドニュース)

◆内藤瑛亮(ないとうえいすけ)
1982年12月27日生まれ。愛知県出身。2012年、愛知県で実際に起こった事件をもとにした映画『先生を流産させる会』で長編映画デビュー。2014年には夏帆主演のサスペンス映画『パズル』のメガホンをとるなど注目の若手監督だ。森川葵・小関裕太主演オリジナルホラー『ドロメ』が3月26日公開。座右の銘は「偶然は準備のできていない人を助けない」。

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。
 

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