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多角的なデータによる日本国内の音楽チャートを提供している「Billboard JAPAN」。そのメインコンテンツである「Billboard JAPAN Hot100」は、本国アメリカの「Billboard Hot100」が掲げる"接触と所有"というコンセプトのもと、CDの売上枚数だけではなく、楽曲のダウンロード数やラジオでの放送回数など、複数のデータを組み合わせることで網羅性の高い楽曲ランキングを作り出している。そして今年1月には、チャートの網羅性をさらに高めるため、国内でも大きなシェアを持つ「GYAO!」の再生数を合算することを発表した。単に売上(=所有)だけでなく、試聴(=接触)も含めたチャートを作ることによって、われわれは何を知ることができるのだろうか。「チャートは本来、音楽をより楽しむためのプレイリストの役割を担っていた」と話す、「Billboard JAPAN」の高嶋直子さん、佐藤優太さんに話を聞いた。

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「Billboard JAPAN」佐藤優太さん、高嶋直子さん


■現在、7種のデータで形成される日本のヒットソング

ーー現在、「Billboard JAPAN Hot100」ヒットチャートの指標としているデータは?

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高嶋: チャート解析をご覧いただきたいのですが、まずセールスは、「シングルの全国推定売上枚数、楽曲のダウンロード数、歌詞表示回数から推定したストリーミング数の合算」です。ラジオは、「全国のAM/FMラジオによるエアプレイ数」をカウントしています。それから「パソコンによるCD読取数(ルックアップ)」。パソコンにCDを読み込むと、楽曲名やアーティスト名が表示されますね。その際グレースノートメディアデータベースにアクセスしているのですが、その回数を指します。また、「アーティスト&楽曲を両方ツイートした数」と、「国内においての動画再生回数」も計上しています。動画再生回数はこれまでYouTubeさんだけだったのが、2016年1月3日の計測分からGYAO! さんの視聴データ数も計上させていただくようになりました。

ーー本国アメリカの「Billboard Hot100」は、取り込む指標に違いなどあるのでしょうか。

高嶋:「接触と所有」というルールのもとに、さまざまな指標を取り込むという考え方は同じですが、「音楽の聞かれ方」という部分では日米で違いがあります。例えばストリーミングデータに関してアメリカは、日本よりもかなり早い段階で合算しています。逆にTwitterやルックアップというのは、日本独特の指標です。そして、何か新たな指標を合算する際には、必ずアメリカのチャートディレクターの承認が必要です。

ーーチャートに新たな指標を加えていくことで、過去のデータとの比較が難しくなるのでは、という考え方もあるかと思うのですが、そのあたりはどのようにお考えですか?

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「音楽の聴き方がより多様化されてきている」と分析


高嶋:私たちの考えとしては、一つの指標だけでチャートを作り続けていく方が、過去との比較が難しくなるのではないかと。例えば、昨年の年間ランキングを、他社(オリコン、レコチョク、有線、ラジオなど)と弊社で比較してみると、弊社のチャートがもっとも網羅性が高いというのがわかると思います。おそらく80年代、90年代でしたら、どこのランキングを見ても1位から10位まで大体同じで、「あ、この曲知っている」ってなると思います。しかし、その頃と今とでは、音楽の聞かれ方が全く違ってきています。となると、20年30年と同じデータだけでヒットチャートを作るのは、ちょっと無理があるのではないかと思うのです。

ーー今は、音楽の聴き方がより多様化されてきているということですね。

高嶋:はい。CDとラジオしかなかった時代から、今は動画もあるしストリーミングもある。となると、それらを合算した方が、流行を正しく追っていけるのではないかと。そうしたデータをなるべくスピーディーに反映させていくというのが、私たちの目標です。新しいサービスが始まったときには、それを取り入れるべきか長期間にわたって検討し、逆に今あるデータを今後削るべきか検討することもあり得ますね。

ーーチャート結果としての話題を提供するだけでなく、ユーザー自身でヒットを読み解く『CHART insight』も開示されています。これを見れば、チャートの内訳というか、「セールスの順位は?」「ラジオの放送回数の順位は?」と、ユーザーが知りたいデータも並べ替えて楽しむことができるのはうれしいですね。

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高嶋:例えば、「普段ラジオしか聞かない」という人や、「CDはレンタルするだけ」という人が、このチャート解析を使っていただくことで、自分にとってもっとも信頼性の高いデータを並べ替え、聴きたい音楽を探していただくということもできると思います。特に、ルックアップや、Twitter、動画ストリーミングのソングチャートを見られるのは、現状このサービスだけですので。

佐藤:例えば、ルックアップで年間チャートを並べ替えると、また全然違ったランキングになります。1位になったSuperfly「黒い雫」は、若い人たちがレンタルショップで借りたり、友達同士で貸し借りしながら聞かれているのではないか、と分析もできるんです。

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日本特有のレンタル動向等をフォローする「ルックアップ」 若年層をコアとしたアクティビティ分析に有効


ーー佐々木俊尚さんがコラムで、「このチャート解析は新しい音楽とつながり新しいミュージシャンを知る良いきっかけになると思う」と書かれています。届くべき人のところに音楽が届くキッカケになったらいいですよね。

高嶋:そうですね。チャートに説得力があった時代は、チャートが「プレイリスト」の役割を果たしていました。チャートの中から自分の聴きたい曲を見つけて、そのアーティストを好きになっていくというような。それが、音楽の聴き方とチャートリストがどんどん乖離(かいり)していった結果、誰もチャートを見なくなってしまったと思うのです。私たちはこの「HOT 100」が、音楽との出会いの場になっていければと考えています。

ーーユーザーの聴き方が多様化する中で、届ける側の打ち出し方、プロモート方法も変化してきていますよね。

高嶋:ええ。戦略も多様化してきていて、例えばパッケージのリリースと同じタイミングでYouTubeでの公開もストリーミングも一斉に始める方もいらっしゃいますし、YouTubeはショートバージョンのみという方もいらっしゃいます。ストリーミングの時期を少し後ろにずらすなど、それぞれ試行錯誤されている時期なのでしょうね。ただ、ストリーミングが始まったことで、パッケージが売れなくなったのかというと、そうとも言い切れない。

例えば2015年の年間チャート1位には、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「R.Y.U.S.E.I.」が入っています。彼らはYouTubeにも動画をアップしていますが、2014年リリースの曲であるにも関わらず、2015年も売れ続け、そこからYouTubeやTwitterで浸透していった結果、セールスもさらに伸びています。「その楽曲に力があり、触れる機会が多ければ多いほど売れるのだ」ということを証明したと思います。もちろん、この戦略が全てではなく、アーティストや楽曲によっても変わってくるとは思うのですが。

ーーストリーミングや動画配信に消極的なアーティストは、これからは売れなくなる、とは一概には言えないということですね。

高嶋:そうですね。そして、そういうアーティストによる動向の違いを確認できるのが、弊社のチャートなのかなって思います。

ーー今後、取り入れることを検討しているデータはありますか? 例えばカラオケのデータなどはいかがでしょう。

高嶋:具体的にはお話しできないのですが、ユーザーのアクティブな動向を足していけたら面白いかなと思っています。今、足しているものの中ではルックアップがそれに近いのですが、「買う」とか「借りる」だけでなく、「所有と接触」というテーマでいうと、さらにそこからもう一歩進んだところの動きですね。そこにはカラオケも入ってくるかもしれません。カラオケの場合はすごく古い歌も歌われているので、そのまま取り込めるかどうかの検討は必要ですが。もちろん、聞くだけでなく歌われるというのは、楽曲としてより愛されている証の一つだと思いますので、(カラオケデータも)上手に取り入れていくことができれば良いなと考えております。

ーー最後に、「Billboard JAPAN Hot100」と、そのチャート解析の楽しみ方を。

高嶋:YouTubeのリンクも盛り込んでおりますので、それですぐに試聴できるというのも、今回このサービスを作る上で重要視した部分です。気になったらどんどん聴いていただいて、その曲をクリックしていただくと、折れ線グラフや円グラフでチャート動向を確認したり、そのアーティストに関連したニュースを見たりもできます。ニュースとチャートの動向を照らし合わせると、「なぜ、このアーティストがこのタイミングでランク急上昇したのか?」なんていうことも見えてきて楽しいと思います。

佐藤:並べ替え機能などを使って、ご自身の好みのチャートに並び替えていただいて。自分が好きな曲が今どの順位にあるのか。その前後の楽曲はどんな曲かを確認していただき、新しい音楽を知るキッカケとなる、先ほど申し上げた「プレイリスト」として楽しんでいただけたらうれしいですね。
また、2月から新しくApple Musicにプレイリストを提供することになりました。チャートデータを使ったプレイリストも公開していますので、こちらも、是非お楽しみください。

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2月から新しくApple Musicにプレイリストを提供


(文/黒田隆憲)
(写真:トレンドニュース)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

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