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1984年に「一世風靡セピア」のメンバーとしてデビューしてから、芸能生活は30年以上。1990年の『ネオチンピラ・鉄砲玉ぴゅ~』から、2015年の『Zアイランド』まで、111本もの作品で主演を務めてきた俳優・哀川翔に、「俳優としての哲学」「遊びと仕事へのこだわり」について語ってもらった。

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哀川翔が語る「俳優としての哲学」「遊びと仕事へのこだわり」


■俳優として余計なことはしない、させない

――演じる上で大事にしていることは。

哀川: 「脚本の中の役を完璧に完成させたい。アドリブは未完成なまま突っ切ってしまうようで好きではないんです。役の設定はするけれど、役づくりはしない。撮影に関してもコミュニケーションは大事で、俺は監督の言うことをちゃんと聞きます。監督は、作品に対してじっくりと向き合っているわけだから、そういう人に文句は言えないなと思う。自分が監督をした時も(1995年の『BAD GUY BEACH』)、台本すべてしっかりと頭に入っていたので、特にそう思います。」

――とはいえ、時には疑問に思うこともあるのでは?

哀川: 「いや、やっぱり監督が一番すごいと思っているから、監督には逆らわない。監督と議論したところで、良いことなんか1個もないよ(笑)。もし議論をするなら撮影に入る前。演技の履き違えをしちゃいけないから、読み合わせの時なんかにしっかりと話し合う。でも基本的に細かい演技プランというのは何もやらないですよ。ほとんど言われるがまま」

――哀川さんは俳優の仕事をどうとらえていますか?

哀川: 「車を作るパーツみたいなものだよね。料理だったら具みたいなものだから、あまり余計なことはしない方がいい。各パーツがきっちり合わさることで初めて1台の車が完成するわけだから。例えば、雪道を走るタイヤとかみたいに、自分がより正確で高性能な部品になることで、全体がもっと良くなると思うから俺はそっちを心がけている。でも若いやつなんかだと、ちょっと慣れてくるとすぐに余計なことしたがるでしょ。それは阻止した方がいいよね、というのは(俳優の)古田新太と同じ考え。あいつも余計なことをするやつは阻止すると言ってた(笑)。古田とは考え方も芝居も全然違うんだけど、そういうところは共感するね」

――仕事に対する肩の力の抜け具合が非常にいいなと思うのですが。

哀川: 「だから111本できたんじゃないかな。ガチガチじゃないから、監督と意見があわないことがない。あとは、やはり経験と慣れがないとね。セリフはどういう風に覚えるんですか、と聞かれた時には、俺は"慣れ"だと答えるわけ。完璧に覚えなくても現場に行くと役の設定ができているから言えてしまう。現場に慣れる、人に慣れる、作品に慣れていくということはとても大事になってくる。そういった勘は研ぎ澄まさないとダメ。じゃないと前に進まないから。ただし、慣れで良くないのは、なあなあになること。そういう慣れあいはダメだと思う」

――そういう意味では、新人よりベテランの方が俳優として良いということ?

哀川: 「というよりも、新人をよりうまくやらせてやるのがベテランの使命なんですよ。そうすれば作品全体のグレードが上がるから。俺たちベテランはある程度まで勝手にやるけど、新人はやれない。どこまで才能と力を見いだしてやれるかというのが、ベテランがやるべき作業だと思う。さっき言った通り、余計なことやらせないというのもそのひとつだしね」

■俺が働くのは遊ぶため。だから手を抜かない

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「働くのは遊ぶため。だから手を抜かない」と語る哀川翔さん


――哀川さんのコミュニケーション能力は非常に高いなと感心してしまうのですが。

哀川: 「実は、俺は知り合いが少ない方。きっと一覧表にしたら他の人よりも少ないと思うけど、遊び仲間とは深くつきあう。そういった遊び仲間が後々になって、仕事につながることもある。30年ぐらいやると、自然とそうなるんだよね。仕事をしてから友達になるというケースの方があまりない。やはり遊びが前提で、そこから絆を深める方が大きい」

――遊びと仕事。オンとオフの切り替えは?

哀川: 「仕事をしていない時は、とにかく遊ぶ。仕事は遊ぶため、そのために働いている。遊んでばかりいたらお金もなくなるしね。もともと俳優という仕事はあまり好きじゃないんですよ。セリフとか、覚えなくちゃいけないこともたくさんあるし。でも俺にとって、俳優は仕事だと思っているからこそ、手は抜けない。趣味じゃないわけだから。仕事がなくなったら遊べなくなるじゃない(笑)。

仕事のオファーを待つ間は、遊ぶことにしているんです。ただ待っているだけじゃ不安になっちゃう。だから遊ぶんです。遊んでいる最中にオファーが来ると、うれしいわけだから。」

――釣りやゴルフ、虫など多趣味な哀川さんを見ていると楽しそうです。

哀川: 「俺だって時には1カ月くらいずっと仕事している時もあるよ。でも子供からは、遊んでるようにしか見えないって言われちゃうんだけどね(笑)」

――哀川さんのように、仕事も遊びにも全力で取り組む大人になりたいと憧れる人もいそうですが。

哀川: 「たまに俺みたいになりたいという若いのが来るんですよ。でも1カ月もたないで、熱を出しちゃう。無理しちゃうみたい(笑)。俺は、現場でバーッとしゃべって、よくうるさい! と怒られる。でもいいんです、言われたらやめりゃいいんだから。まわりの様子をうかがいながら大丈夫かなと心配するよりも、何でも自分の好きなようにやればいいと思う。怒られたら次はやらないよ、やめればいい。今まで俺は『悪いことはしない』ということだけを守ってきて、基本は真面目なんだけど、やりたいことはやりたい。その方が面白いし、長続きすると思う。みんな難しく考えすぎなんですよ」


今回、女性向け映像スクール『ラブストーリー・クリエイター・スクール』に特別講師として登壇し、「演じる側から見た魅力的な脚本とは」など俳優としての哲学を自身の経験を交えて解説した哀川。脚本家・映像クリエイター志望の受講生たちに、熱いメッセージはきっと届いたであろう。

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30年を超える芸能生活を支えた"遊び"の大切さとは


■プロフィール
哀川翔(あいかわ しょう)
1961年鹿児島県出身。1984年に「一世風靡セピア」のメンバーとしてデビュー。その後、俳優としても活動をはじめ、テレビドラマ「とんぼ」、映画『オルゴール』などで注目を集める。1990年には、東映Vシネマ『ネオチンピラ・鉄砲玉ぴゅ~』で初主演。その後も『勝手にしやがれ!』『借王<シャッキング>』『修羅がゆく』など次々にヒットシリーズを生み出し、"Vシネマの帝王"と呼ばれる。2005年の『ゼブラーマン』では、日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した。

(取材・文/壬生智裕)
(写真:トレンドニュース)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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