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今年で結成27年目に突入したピロウズが、通算20枚目となるアルバム『STROLL AND ROLL』をリリースする。全編にわたってシンプルなロックンロールが鳴り響く本作は、結成時のオリジナルメンバーである上田健司をはじめ、GLAYのJIROや髭の宮川トモユキ、第二期ピロウズを支えた鹿島達也(元SUPER BAD)、VOLA & THE ORIENTAL MACHINEの有江嘉典など、所縁のあるベーシスト5名が参加し楽曲に多彩なグルーヴを詰め込んでいる。

バンドメンバーについて前回のインタビューでは、「僕らは最初から仲良くない」「最初は仲良くしようとしたけど、無理だって気づいてからはドライな関係を続けてきました」などと語っていた、ボーカル&ギターの山中さわお。あれからバンドの状態はどのように変化したのだろうか。

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the pillows(ザ・ピロウズ)ボーカル&ギターの山中さわお


20thアルバム『STROLL AND ROLL』より先行配信シングル「カッコーの巣の下で」>>


ーー今年27年目に突入したピロウズですが、今の状態はいかがでしょう?

山中: ここに来てメンバー全員が仲良しっていう、まさかの事態(笑)。初めてですね、これは。19年ぶりに3人で飲みに行きました。アルバムの打ち合わせだったんですけど、ドラムのシンイチロウは話し合いの内容を一切覚えていないくらいベロベロに酔っ払いましたね。まあそれはそれで楽しかったですよ。活動休止前は、僕が極端に神経質になっていた部分があったんですけど、そのときとはえらい違いです。

ーー活動休止をしたことで、気持ちがリセットできた部分も大きかったのでは。

山中: 僕は長年、自分の生き方っていうのは、常に具体的な目標がハッキリとあって。そこに向かっていくために、何をすべきか、キツイ障害物があったとしても、歯を食いしばって絶対にたどり着いてみせるっていう、熱い気持ちで歩んできたんですね。でも、今はそれとは随分違う心境になっています。

人がどう思うかは別として、僕は「なりたいもの」になれたんですよ。これからどうしたいっていうのも、セールス的にも欲は1ミリもないし、ファンとの信頼関係も築けているから、よっぽどのことをしない限り失望されることもないと思っているんですよ。痴漢で捕まったりしたら別ですけど(笑)。今の状況に満足しているというか、気に入っているのかな。もう、新曲を作らなくてもいいと思っているくらい。とはいえ、日常的に曲を作っているから、いい曲ができれば録音したいし、完成すれば皆んなに聞いてもらいたいし、そうやってできたアルバム。「リリース日が設定されているから、締め切りに向かって曲をそろえる」とかそういう感覚ではない。だから、10代の頃のバンドマンのような感覚で作ってます。

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the pillows(ザ・ピロウズ)ボーカル&ギターの山中さわお


ーー今作は、ライブで盛り上がりそうな曲が並んだアルバムですよね。

山中: このアルバムを作るまでに、デモの段階でこの3倍くらい書いているんですよ。まったく無作為に書いているので、いろいろなジャンルの曲ができるんですけど、その中から「ツアーを回るんだったら、この曲かな」っていうモノをセレクトしていきました。今までのアルバムでは、ライブでは再現できないような「レコーディングアート」的な曲が詰まったものもあったんですけどね。

ーーサウンド的には新たな試みはしていますか?

山中:サウンドプロダクションには常に興味があって、いろいろなスタイルに挑戦したい。もちろんピロウズがEDMを取り入れる、なんてことはないと思うんだけど(笑)、例えば「デス・キャブ・フォー・キューティって、どうやってあんなにクリアなまま迫力のあるロックサウンドを作っているんだろう」とか、「またローファイをやってみたい。しかも2016年に鳴らすローファイは?」とか。そういうブームが自分の中で常にあるんです。

ーー「Subtropical Fantasy」はちょっとストーン・ローゼズっぽい雰囲気がありますよね。

山中: ピロウズを結成した80年代末~90年代初頭は、とにかく僕らストーン・ローゼズが好きで。(当時のメンバー、上田健司含む)4人全員が好きだったバンドは少なかったけど、彼らのことは全員大好きだった。でも、当時はマスタリングの状態が良くなくて、ペラッペラの音になってしまっていたんですよね。だから、当時の彼らのサウンドを今の音で聴いたらどうなるか? っていうことは考えました。

ーー「エリオットの悲劇」は、エリオット・スミスのことを歌っているのでしょうか。

山中 :お、すごい! それは半分正解です。というのは、僕はいつもタイトルを最後につけるんですね。歌詞を書いたときにはエリオット・スミスのことはまったく考えていなくて、自分の脳内で作り上げた主人公を動かしながら作ったんです。で、タイトルをちょっと映画っぽくしたいなって思って、「~の悲劇」っていうのはどうだろう? って思ったときに、自殺したミュージシャンをいろいろ思い浮かべていたらエリオット・スミスが頭をよぎった。彼のアルバムをよく聴いていたこともあったし。だから、自分の中でこっそりエリオット・スミスのことをつなげているんだけど、歌詞の内容は関係ないんですよね。

ーー先行配信された「カッコーの巣の下で」はどのようにできた曲ですか?

山中: 僕自身はごくごく普通の家庭で育ったんですけど、世の中には想像を絶するような過酷な環境で育った子供たちがいるということを、ある人と話したことがあって。例えば育児放棄や虐待とか。しかも、地域全体がそういう率が高い場所とか。荒んだところで育ち、まともな愛情を受けないまま大きくなった人っているわけですよね。そこに対して、何かメッセージがあるとしたら、安易な慰めソングなんかではなく。「過去は変えられなくとも、未来を選択することはできるんだ、そのために今を生きよう」っていうことでしかないと思ったんです。そういう思いで書いた曲ですね。

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the pillows(ザ・ピロウズ)ボーカル&ギターの山中さわお


ーー今回、複数のベーシストをゲストに迎えたことで、何かサウンドに変化はありましたか?

山中: それはものすごくありましたね。ベーシストが変わるだけで、こんなにも違ってくるものなのかと。これまでは、サポートミュージシャンという形でピロウズにはベーシストが加入していたんですけど、その場合っていうのは、僕の頭の中にあるサウンドをできる限り忠実に再現してもらうことを優先していたんですね。でも、「ゲスト」という形で関わってもらう以上は、彼らから出てくるアイデアもなるべく受け入れるようにしたんです。そしたらもう、面白くてね(笑)。こういうアプローチって、今までのピロウズでもなかったことなんじゃないかな。

ーーインタビューの冒頭で、「ピロウズとしては状況に満足している」っておっしゃっていましたが、その地点に到達したからこそ、どんなことでも受け入れる強さや揺るぎない自信がついたということですかね?

山中: そうだと思いますね。そのときは「大ごと」だと思っていたことが、振り返ってみたら大したことなかったっていうのが山ほどあって。もちろん取り返しのつかないこともあったけど、ほとんどは取り返しがついたなと(笑)。「これがラストアルバム」っていうふうになったら、また取り組み方も変わってくるかもしれないけど、今のところまだ死ぬ予定も解散する予定もないので(笑)、なんかいろいろ楽しみたいなって。失敗したとしても、それを楽しめそうな気がします。

◆ the pillows(ザ・ピロウズ)
1989年9月結成。1991年シングル『雨にうたえば』(ポニーキャニオン)でデビュー。2005年には海外での活動を本格的に始動させ、2009年結成20周年記念日となる9月16日には、初の武道館ライブを大成功に収めた。2012年トライアル・ツアー終了後、バンドのメンテナンス&リハビリのため活動休止。翌2013年8月の再始動後は精力的に活動を展開。2015年8月、山中さわおはTHE PREDATORSの活動を経て、12月レア曲中心の選曲となる" LOSTMAN"ツアーを約2年ぶりに開催した。2016年3月2日にはB-side Collection『Across the metropolis』、4月6日には20th album『STROLL AND ROLL』をリリースし、5月からは"STROLL AND ROLL TOUR"(全国27公演)を開催する。
座右の銘:チャップリン「人生は願望だ、意味じゃない(Life is desire, not meaning)」

(文/黒田隆憲)
(写真:トレンドニュース)

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作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

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