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『イヴの時間 劇場版』の吉浦康裕が原作・脚本・監督を務めた、アニメーション映画『サカサマのパテマ』。2013年に公開された本作は、底なしの「空に落ちていく」という幻想的映像ワールド、つまりすべてがサカサマ(逆)の世界で生きる2人を描いた作品。第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞し、第7回アジア太平洋映画賞最優秀アニメーション映画賞にノミネートされるなど、話題を集めた。
今回GYAO!にて無料配信されることを記念し、改めて吉浦監督に見どころや当時の思い出などを語ってもらった。

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GYAO!にて、映画『サカサマのパテマ』を無料配信
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013


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映画『サカサマのパテマ』ポスタービジュアル
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013


■「サカサマ人間が空に落ちる」......スイッチングの瞬間が本作最大のキモ

――この映画の企画が生まれた経緯は?

とても幸運なことに、前作『イヴの時間』が劇場版も含めて非常にご好評いただいたんです。その際に、「新作アニメを提案できるこの絶好のタイミングを逃してはならない」と即座に考えまして(笑)。それで、常々やりたかった劇場オリジナル企画を実行に移したのですが、自分がストックしているアイデアの中でも特に"映画オリジナルならでは"の要素が強い「サカサマ人間が空に落ちる」というコンセプトで企画書をまとめました。
この作品の場合、テーマや想いというよりは「"サカサマ人間"というアイデアが面白そう」というエンタメ思考が制作の大きな動機です。また、それまでは室内での会話劇がメインの作品ばかりを創ってきたこともあり、アニメらしい活劇を制作したい欲求もあったのだと思います。

――作品の特色、見どころは?

やはりタイトルの通り、"サカサマ"に関連した描写の数々だと思います。地上人にとっては何てことのない屋外の風景も、サカサマ人であるパテマにとっては"底なし奈落"の青い空が眼下に広がる恐怖の世界です。自分よりも重い物や人に捉まっていなければ落下してしまう......そんな世界が、ひとたびカメラを180度回転させることによって出現する。そのスイッチングの瞬間が本作最大のキモでは無いかと思います。
また、そんなサカサマの要素を、そのままメインキャラクターらの心情とリンクさせている点にも注目していただきたいです。「互いに同じ場所にいるはずなのに、見ている風景は全く違う」自分と自分以外の他者の間に存在する、普遍的なテーマではないでしょうか。

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地底世界の「掟」を破った少女、パテマ
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013


――制作時に印象深かったエピソードなどを教えてください

人間も風景もサカサマで描写されることの多いアニメですので、作画チームも美術チームも「上下サカサマでもちゃんと絵として魅力的に見えるだろうか?」と不安になることが、特に制作を開始した当初に多かったようです。僕自身も演出家として、具体的に画が完成しないと確信を持てない部分があり、冒頭のパートが出来上がるまでは戦々恐々でした。
でも冒頭パートを完成させた結果、試写室で見たサカサマ描写が予想以上にうまくいっており「よし、これは行ける」と自信を持てたのが良かったです。パテマはサカサマでもかわいかったし、空が眼下に広がる高度感と恐怖感もよく表現されていました。これは本当に各スタッフに感謝ですね。

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映画『サカサマのパテマ』
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013


――今、振り返ってみて、この作品はご自身にとってどのような作品として位置づけられますか?

いわゆる「王道」なドラマへと歩み始めたという点で、本作は自分のターニングポイントとなった作品です。それまでの作品でも、個人的にはベタと呼ばれるようなドラマを創っていたつもりだったのですが、恐らく作品のビジュアル的な見栄えが原因で、ややエッジーなものを制作してる......と捉えられていたように思います。
逆にこの後に続く作品は、いろいろな要素がありつつもドラマ的にはより王道に、「当たり前に面白い」ことを究極の目標として創作を続けている気がしています。

■絵柄から声の演技に至るまでこだわった"パテマのかわいさ"

――公開時の思い出、反響は?

とにかくうれしかったのは、「パテマやエイジを応援しながら見ることができた」「パテマがかわいかった」「悪役のイザムラが良かった(笑)」といった、極めて根源的で当たり前な、しかしとても大事な感想を頂けたことです。特にヒロインのかわいさは、絵柄から声の演技に至るまで常に気にしていたポイントだったので、まさにドンピシャな感想をいただけて嬉しかったですね。
あとは映画鑑賞後、感想と共にサカサマの風景写真をTwitterなどでアップしてくださるのが流行ったり......。作品を見た後で、受け手から何らかのアクションを返してもらえるのはやはりテンションが上がりました。

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映画『サカサマのパテマ』
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013


――吉浦監督が子供の頃に札幌の空を見上げていて、上下がサカサマになってしまう感覚をモチーフにしたのが今作ということですが、その他に子供の頃の原体験で映像化、作品化したいと考えているモチーフはありますか?

サカサマの空というアイデアは僕の原体験に由来しますが、こういった系統のアイデアは確かに他にもいろいろと持っています。そして当然それらは今後の作品の核となりますので、まだ秘密ということで(笑)。
でもそれらは、必ずしも見た風景でなくとも、例えば人から言われた印象的な言葉だったり、当時見たり読んだりした絵本だったり小説だったりと、あらゆる体験が何かしら今の創作の血肉となっているのは間違いありません。

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映画『サカサマのパテマ』
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013


■"もし"の部分に、あらゆるワクワクの可能性を感じる

――吉浦監督自身が考えるSFの魅力、近年のもので特に印象に残っているSF作品はありますか?

自分が創作する際に大事にしているのは、とにかく見ていて"ワクワク"を感じられる作品にすることです。そして僕にとって、そういった感情を込められる最適な手段が「日常の中に存在するちょっと非日常な要素」だと考えています。「もし、こんなことが実現したら」「こんなことが出来たら」......その"もし"の部分に、自分はあらゆるワクワクの可能性を感じるんです。
また、自分はかなりの古典SF好きではありますが、最近ですと『ウール』『火星の人』といった海外SF小説がお気に入りです。......あれ、やっぱり古典主義者ですね(笑)。

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映画『サカサマのパテマ』
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013


――現在新作準備中とのことですが、「サカサマのパテマ」を制作した上で活かされてる点はありますか?

パテマで王道にチャレンジできた経験を生かし、その後もさまざまなジャンルに体当たりすることができました。続く『アルモニ』ではリアル目なクラスカースト描写と紅テント風ファンタジー、『PP33』では巨大怪獣バトル、『ヒストリー機関』ではシリアスな作画でのシチュエーションコメディといった具合に。
そして現在制作中の最新作は、それら全ての経験があって初めて制作可能になった内容だなと強く感じています。具体的にどこがどう......といったことはその新作の発表に代えさせていただきますが、ジャンルの殻を破ってチャレンジの大海に飛び込むキッカケとなった『サカサマのパテマ』無くして、今の自分が無かったことは間違いないです。

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原作・監督・脚本を務めた吉浦康裕氏
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013


――最後に座右の銘をお聞かせください

『継続は力なり』
とにかく続けることだと思います。過去の継続が今の創作に、新たな創作が継続となって次の創作へとつながってゆく......そんなサイクルを感じます。この座右の銘は、恐らく今後ずっと変わらないだろうな、と思っています。

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