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ダイナミックな"競技かるた"の魅力、等身大の高校生たちの熱き青春群像を描き、絶大なる人気を誇る末次由紀原作のコミック「ちはやふる」。2009年第2回マンガ大賞受賞、2010年「このマンガがすごい!オンナ編」第1位獲得、2011年第35回講談社漫画賞少女部門を獲得するなど高い評価を受け、コミックス累計発行部数1500万部(2016年1月時点)を突破した「ちはやふる」が広瀬すず主演で実写映画化。前編「上の句」(3月19日公開)、後編「下の句」(4月29日公開)という二部作連続での公開となる。

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映画『ちはやふる』前編「上の句」(3月19日公開)、後編「下の句」(4月29日公開)
(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


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末次由紀原作のコミック「ちはやふる」


メガホンをとるのは、『タイヨウのうた』『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の俊英、小泉徳宏監督。キャストも、主人公・千早役の広瀬すずを筆頭に、野村周平、真剣佑、松岡茉優、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也と次世代を担う若手俳優たちが出演。旬のスタッフ・キャストが集結し、"競技かるた"に情熱をかける高校生たちの熱い青春模様を描き出した。
そこで今回は本作の原作者・末次由紀に映画を観た感想、原作に込めた思いなどについて聞いた。

ちはやふる -上の句- 特別映像>>


ちはやふる -下の句- 特別映像>>


■広瀬すずちゃんは理想的なキャスティングだった

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広瀬すず[綾瀬千早・あやせちはや]&野村周平[真島太一・ましまたいち]
(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


――このたび広瀬すずさん主演で、しかも二部作での映画公開が決定したわけですが。お話を聞いた時はどう思いましたか?

末次: 「最初にお話を聞いた時は、本気だろうか? 無理なんじゃないか、実現しないんじゃないかとさえ思いました。でも監督さんやプロデューサーさんの頑張っている姿を見るうちに、本当にやるんだと実感しました。この映画の宣伝もすごく頑張ってくださっていて。友達からも、電車に大きな広告があったよとか、動画が流れていたよと言われるようになって。まさかそこまでのことになるなんて、というのが正直なところで。まだこの現実についていけていない状態です」

――映画化に際して、リクエストはありましたか?

末次: 「やはり実写化というと、原作ファンの方は身構えてしまうと思うんです。だから原作者のわたしが大丈夫だよ、面白いものになったよと言えなければ、皆さんの観る気がなくなってしまう。だから、脚本のたたき台の段階では、意見を言わせていただきました。映画は脚本が一番大事なので。ただ、逆にいうと、意見を言えるのは脚本まで。それ以降はわたしの手を離れていくものですからね」

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(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


――具体的にどのような意見を出されたのでしょうか?

末次: 「やはり映画を観たあと、楽しい気持ちで映画館を出てほしいなということですよね。最初に見せていただいた脚本が、わりと人間ドラマを重視した感じで、非常に切ない感じだったので。それよりも、もっと笑える感じのシーンを増やしてほしい、ということはお願いをしました。ただ、そういったコミカルな点は小泉監督が得意とされていることで、むしろ監督が自由にやってくださり、よかったなと思います」

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(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


――原作に敬意を払いながらも、映画としてのテンポを損なわない、いいアレンジが効いた脚本でした。

末次: 「映画で網羅されているのは、下の句を入れても、原作で5巻分くらい。それでも、映画を盛り上げるためには、原作のもっと後半の方に出てくるエピソードも、出し惜しみせずに織り込みました。原作を読んでくださっている方は、ここでこの展開を持ってくるのかと驚くと思いますよ」

――今回の映画に対して「マンガのファンの皆さんに伝えたいです。完璧でした。素晴らしい作品になっていました」というコメントを寄せていますが。映画を観た時はどのような気持ちでしたか?

末次 :「すごく緊張しました。うちの子は大丈夫かしらというような、まるで自分の子供の初舞台を観るような気持ちでした。でも実際に観てみたら、これは観ないともったいない映画だと思いました。マンガでは百人一首の速さ、音などについては、読者の想像に助けられている部分がありますが、映画では、"静と動"が表現されることにより、競技かるたの独特な緊張感とスピードをあらわすような、そんなマンガに足りない部分をきちんと補ってもらっていましたから。

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(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


わたしの友達で、マンガの実写化が嫌だという人がいます。その理由は、作品が面白くなくアレンジされて、原作を知らない人にガッカリされるのが嫌だと言うんですね。でも、映画が面白かった場合であっても、それによってマンガが面白いと感じなくなってしまうから嫌だと言うんです。そういう愛情もあるんだなと思ったんですけど、今のわたしはまさに後者の気持ちですね。マンガの連載はまだ続いているので、わたしももっと頑張らないといけないなと思いました」

――広瀬すずさんをはじめとしたキャスティングはいかがでしたか? 実際のキャスティングは1年半ほど前で、まだ広瀬さんが完全にブレークする直前だったと聞いていますが。

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(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


末次: 「やはり餅は餅屋なんですよ。監督をはじめ、映画を分かっている皆さんから『この子でいきたいと思っています』と言われたら、そうなんだろうなと思って。本当に、すずちゃんは理想的なキャスティングでしたね。かるたをしている時の千早は真剣なまなざしですが、その目力がすずちゃんにはあります。マンガから飛び出したように違和感がなくて、きれいな目をしているなと思いました。それから、わたしはカメラテストの時に初めて、新(あらた)役の真剣佑さんに会ったんですけど、彼の姿をモニターで見たとき、黒目が動いただけでカッコいいと思って(笑)。そんなことを感じたのは初めてだったので、これがスターというものかと思いました」

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(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


■脇のキャラクターにもどんどん愛情がわいてしまう

――かるたを題材とした作品を描くにあたって、取材も相当されたと思うのですが。

末次: 「かるた大会には、名人戦だけでなく、小学生、中学生などが出場する小さい大会にも行かせてもらいました。どの年代であっても、かるたに対する真剣さは変わらないですね。負けるとボロボロ泣いていて。畳に涙が落ちていて。皆さん、そこまで入り込んでいるんだということを感じました」

――「ちはやふる」のテーマの中心として、団体戦があります。

末次: 「かるた大会ではどうしても個人戦がメーンなので、そもそも団体戦の試合がそれほどないんです。中学や高校の団体戦は夏の大会のみですし。それも大人たちから見ると、『盛り上がっていてかわいいね。でも主戦場は個人戦だけど』というように見なされてしまう。だからこそ、団体戦をやる中高生たちはたった3年しかないチャンスにかけている。それこそ高校選手権の全国大会では、一回負けたらそれっきりなので、負けたチームの女子が、神社の片隅なんかで涙を流していたりするんですよ。そういう姿を見ると、わたしは声をかけられないですけど、マンガの中でその思いを晴らしてあげたいなと思いました」

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(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


――末次先生のアイデアの源は? 行き詰まった時などはどうしていますか?

末次: 「やはり取材ノートを見直す、ということですね。いろいろな人のエピソードや、この試合でこんなことがあった、こんな人がいた、過去にこんな選手がいた、といったことを書き留めているので。それを読み直して、新たなアイデアを考え出します」

――原作も、クライマックスの構想はすでにあるそうですね。

末次: 「そうですね。クライマックスを含めてだいたいの大筋は見えています。やはり最後は盛り上げないといけないので、そこに向かう道筋で、このネタはとっておこうとか、ここで伏線を張っておこうとか、俯瞰(ふかん)で見ながらバランスを考えています。ただ、最近は登場人物もどんどん増えてきて。描き始めるとやっぱりみんなかわいく思えてきてしまうので、そういった人たちのエピソードを描くことが増えてきました」

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(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社


――「ちはやふる」は、脇のキャラクターたちにもきちんとスポットを当てていて。末次先生の視線が優しいなと思うのですが。

末次: 「このマンガを描いていて思ったのは、主人公と同じ目線で読んでいる方はそれほどいないということですね。どちらかというと、主人公の友達の目線で、千早は頑張っているなとか、太一は大変だなといった具合に思いながら読んでいる方が多いんだと感じています。だからそういった立ち位置に近い、ヒョロくんや机くん、肉まんくんといったチームメイトだったり、脇のキャラクターだったりに脚光が当たると、皆さん喜んでもらえるんですよね。そういうことに、単行本が30巻出た時点でようやく気付きました(笑)」

――原作は単行本が30巻まで発売される長期連載となっていますが、それでも末次先生の中では、まだまだ描きたいことがたくさんあるのではないでしょうか?

末次: 「そうですね。脇のキャラクターにスポットを当てても、そんなことしなくてもいいのにと言う人がそんなにいないということが分かったので、また調子に乗って、いろいろと描きたいなと思っています」

――個性的なライバルたちが戦いを通じて友情を育み、仲間になっていく様子が、どことなく少年マンガっぽくも感じるのですが。

末次: 「そこまで底意地の悪い人ってそんなにいないんじゃないかと思うんです。みんな自分の都合で一生懸命頑張っていて。はたから見ると、お前、自分のことばっかりだなということになるけれども、その人のことを知れば知るほどに、そうなるのも仕方ないなと思ってしまう。その人の弱さやずるさなんかも分かってしまう。だから癖のあるキャラクターほど魅力があるんだなと思うんです」

――末次先生はどのキャラクターに自分を投影していますか?

末次: 「太一は自分自身だなと思います。反対に、新や千早に対しては、あこがれの気持ちがありますね。きっとまわりにいたら迷惑だけど、大好きだと思っちゃうんだろうなと。そんなにがむしゃらでどこに行くの? と目が離せないんだろうなと思います」

――映画を観て、あらためて原作を読もうと思う人がいると思うのですが。そんな方におすすめポイントを教えてください。

末次: 「映画が素晴らしすぎるので、難しい質問です。でも、原作では、映画では描ききれなかったキャラクター、エピソードがたくさん出てくるので楽しいと思います。わたしとしては、どうにか21巻で(千早たちの師匠である)原田先生が戦うところまでは読者にたどり着いてほしいんです。そこまで読んでいただければ、もう逃げられないと思います(笑)。そして映画版でちょっとしか出なかった(ライバル・北央学園の)ヒョロくんが、ものすごく頑張るエピソードが29巻にあるということも忘れないでほしいですね。わたしのヒョロくんへの愛情を感じていただければと」

――最後に末次先生の座右の銘を教えていただきたいのですが。

末次: 「原稿を描いている時に、わたしを叱咤(しった)激励するのは、(テレビドラマ『トリック』に登場する上田教授のセリフ)『なぜベストを尽くさないのか』という言葉ですね。あと一歩、踏ん張りどころというところで、この言葉に励まされています(笑)」

(取材・文/壬生智裕)

◆末次由紀(すえつぐ・ゆき)
福岡県生まれ。1992年「太陽のロマンス」で第14回なかよし新人まんが賞佳作を受賞、同作品が「なかよし増刊」(講談社)に掲載されデビュー。2007年から講談社の雑誌「BE・LOVE」で「ちはやふる」の連載を開始。2009年、同作で「第2回マンガ大賞2009」を受賞するとともに「このマンガがすごい!2010」(宝島社)オンナ編で第1位となる。2011年には「ちはやふる」で第35回講談社漫画賞少女部門を受賞した。

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