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『僕街』の愛称で知られる人気コミックス『僕だけがいない街』が実写版で映画化。その公開を機に、原作の連載を完結させたばかりのマンガ家・三部けいに、映画版について、また創作の裏側について語ってもらった。

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3月19日から公開 映画『僕だけがいない街』

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■素晴らしい映画版のキャスティングに、ただただ感謝!

――映画化の話が出たのはいつごろでした? その時のお気持ちは?

 ちょうどコミックスの2巻が出る少し前だったと思います。正直言って、途中で立ち消えになる企画だろうと思っていました(笑)。まさか実現するとは......。

――映画のストーリー作りにはどのような形で関わったのですか?

 打ち合わせは何度もやって、この先どう話が進んでいくかは説明しました。映画化するにあたって「この部分は変更したい」と向こうから先に言っていただいたので助かりましたね。自分からはほとんど注文は出しませんでした。

――映画は原作とは違う映画オリジナルの展開ですね。

 そこにも自分は口出ししていません。平川(雄一朗)監督を信頼していましたので、自分のものと全然違っていてもいいと思っていました。映画を見たあと、マンガで言うところの"読後感"さえ大きく変わらなければまったく構わない、平川監督ならば極端に違うものは作らないだろうと思っていましたし、実際に完成品を見てみたら良かったですしね。

――映画版のキャスティングはいかがでしたか?

 これもすごく良かったです。そもそも自分の中に具体的なイメージがなかったんですよ。よく仲間のマンガ家さんと話すと、実写にしたら誰? とか、(アニメになったら)声優は? という話題になることがあるんですが、俺はそういうことを考えたことがないんです。だからプロにお任せして、その結果は......喜びしかなかったですね。
 特に子役の子たちは素晴らしかったです。雛月加代役の鈴木梨央ちゃんの演技は鬼気迫るものがありましたし、中川翼くん(少年時代の藤沼悟役)もふとした瞬間に大人の悟を演じた藤原竜也さんが乗りうつったような表情を見せるんです。本当に感心しました。

■『僕だけがいない街』――そのタイトルの意味

――発想の原点は何ですか?

 最初はただのタイムスリップもので、1回だけ過去に戻る話を考えていました。ストーリーを練りこんでいくうちに、失敗したからもう一度やる、というふうに何度も行き来したほうが面白いんじゃないかと思うようになったんです。

――『僕だけがいない街』というタイトルも印象的です。

 アイディアが固まって、キャラ設定とかの細かいことより先にタイトルが出てきたんです。作中で「主人公だけが不在の時間帯ができる」ということについて考えていた時にポンと浮かんだ。それを担当さんや奥さんに聞かせたら「これで行こう!」ということになりました。

――その段階でラストは決まっていたんですか?

 確定版とまで言い切れるほどのものはなくて、読者が読み終わった時にこう感じていてほしい、ということだけは考えていました。もちろん描いていくうちに面白いシチュエーションは思いつくし、自分のスキルも上がっていくので、そこは完全に決めつけてしまわないで乗っけていく、というやり方をとっていました。

――サスペンスでもあるので、伏線などが大変ですよね?

 そんなに長い話じゃないので、なんとかなるのではないかと......(笑)。意外に、過去に自分が描いたものの中にヒントが落ちていることがあるんですよね。ですから読み返しの作業は何度も繰り返しおこなっています。

――少年時代の描写にはご自身の少年時代が反映されていますか?

 さすがに事件を追いかけたりはしませんでしたが(笑)。基地を作ったりはしましたね。子供って危ないところが好きだから、俺たちの場合は廃車置き場にアジトを作って、でも見つかって怒られて、追い出されて立入禁止になるなんてことがありまして......。でも楽しかったですね。子供の頃楽しかったことは作中でも生かしています。

――描いていて当初の予定以上に動いてしまったキャラクターなどはいますか?

 悟の母親(藤沼佐知子=映画では石田ゆり子)でしょうか。いなくなった時の悟の喪失感を描いているうちに動き出した感じです。悟にとっては常に自分を肯定してくれる存在だし、こう言ってほしいと思うことを言ってくれる。働いているのにちゃんと毎朝早起きしてご飯を作ってくれるところとか、ある意味理想の母親像を投影した部分もありますね。

■夢を諦めなかったから、今の自分がここにいる

――連載中の毎月の引きもお見事ですが、コミックス1冊ごとのラストの引きがまた強烈で、すぐに続きが読みたくなります。そのあたりの計算は?

 1巻のラストをこうしたら? と担当さんが提案してくださって、やってみたら評判が良かったんです。自分たちでも出来がいいと思ったんで、これは続けようと。だいたいこんな感じかな......と毎回手探りで進めながら、ラストが見えてきたところで、そこに向かっていく、というやり方です。

――連載中から高い評価を受けてきた作品ですが、そういう声は励みになりますか?

 なりますね! ちゃんと読んでくれている人がいるんだ、と実感させられましたから。それまでは、どんな人が読んでくれているんだろう? 熱心なファンの人だけなんじゃないか......と自分では考えていたので、色んな人に読んでいただけていることがわかってうれしかったです。

――本編が完結して、これからは『外伝』をお描きになるとか?

 描きたかったけれど、本編に入れると間延びしちゃうかも...と思って入れなかったエピソードがあるんです。もしかしたら、ずっと『僕街』を読んでくれた人なら、それは読みたいんじゃないか、と思いまして。あと、自分の精神衛生上描きたい、という理由もあります(笑)。

――"座右の銘"と言いますか、ご自身がいつも心がけていることはありますか?

 あるアイディアが浮かんできて、後に取っておきたくても、「今ここで使った方がこの話に活きるな」と思ったら使ってしまうことですね。出し惜しみはしない、つねに全力でやる、ということです。自分のスキルは上がっていくと信じているので、先のことはもっと成長した自分に考えてもらおうと......。
 そして、諦めないということ。「マンガ家になりたい」なんて子供じみた夢を抱いて、でもわがままを通して東京に出てきて、ずっとアシスタント生活をしてきた中でも夢を捨てなかった。俺なんかよりも絵がうまい人は何人もいましたが、諦めなかった自分だけが残ったんです。自分の知っているマンガ家さんは、みんなそうやって諦めなかった人たち。そんな生き方を他人になぞれ、とはとても言えませんが、夢を追いかけ続け、一つずつ欠点をクリアしていけば、どこかにたどりつけるんじゃないか、そう思いますね。


『僕だけがいない街』は三部けい原作の人気コミックスの映画化。事件や事故に遭遇する度に過去に戻され、それを未然に解決しない限り何度でも時間が巻き戻される"リバイバル"という現象に巻き込まれたマンガ家志望の青年・藤沼悟(藤原竜也)。母の佐知子(石田ゆり子)が殺害されるという事件をきっかけに、なんと10歳の小学生時代に戻されてしまう。この時代に発生していた連続児童誘拐殺人事件を防ぐことが、現代で起きた悲劇を防ぐことにつながるのか......? 共演は有村架純、杉本哲太、及川光博。子役の鈴木梨央と中川翼も見事な演技を見せている。監督は『ツナグ』の平川雄一朗。3月19日から公開。

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三部けい(さんべ・けい)


(プロフィール)
三部けい(さんべ・けい)
北海道苫小牧市出身。90年第40回手塚賞佳作、第41回同賞準入選。95年「アフタヌーン四季賞 春のコンテスト」準入選。代表作は『カミヤドリ』『鬼燈の島』『魍魎の揺りかご』など。2012年7月号より「ヤングエース」(KADOKAWA)に連載を開始した『僕だけがいない街』は大人気を博し、「マンガ大賞」3年連続ノミネート、「このマンガがすごい!」3年連続ランクイン、「コレ読んで漫画RANKING」1位を獲得している。

(取材・文/紀平照幸)

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